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読書感想文001 ブラヴォーツーゼロ

ブラヴォーツーゼロ アンディ・マクナブ
1995年5月31日 ハヤカワ書房

20年以上前に出会ったイギリスのノンフィクション?たぶんノンフィクション戦争小説。
ハヤカワ文庫から出版されていた。
学生時代に何かの待ち合わせで訪れた駅ビルの本屋さんで文庫版を買った。選んだ詳しい理由は覚えていないが、当時すでにミリタリーオタクへの道を歩み始めていたはずなので、多分発作とかそういう事だろう。

しかし当時は全くの駆け出しで、オタクどころかミリタリーファンを名乗るのも無理がある程に無知。
UKミリタリーファンなら必ず読むであろうバイブル的な一冊だという事は全く知らなかった。
学生時代にイギリス軍に盧めり込むきっかけになった本であり今でも旅行などに行く時に持ち歩く事がある。冒険活劇として何度読んでも面白いと思うからだ。

著者であり主人公であるアンディ・マクナブ氏は元イギリス陸軍特殊部隊SASの隊員。※1
1990年勃発の湾岸戦争で彼がチームリーダーとして行った作戦行動の一部始終を描いている。※2
話はイラク軍のクウェート進行を受け、SASが招集されるところから始まり、途中彼の子供時代から軍に入隊しSAS隊員になるまでの回想録が綴られる。
そして入念な準備の末、闇夜に紛れイラクに潜入し砂漠に展開するイラク軍のスカッドミサイルを破壊する作戦を開始するが、、、。※3
ハリウッドのある国ではノンフィクションと名乗っても多少の脚色が入りリアル100%とはいかない作品も多いが、その辺りグレートブリテン及びアイルランド連合国ではどうなんだろう???
まあ、多少の脚色があったとしても本物のSASを十分に味わえる作品だと思う。

SASが登場するリアルなフィクション作品には無い、体験談だからこその描写がそこかしこに描かれているし、主人公本人が描いているので様々な事が細部まで詳細に解説されている。(それこそ武器とか装備とか、詳細な解説が‥!!)
この辺りがミリタリーオタクが学術書として読んでも嬉しくなっちゃ、、、えぇと、非常に有り難いのだ。
そして体験談だからこそのリアルでドラマチックな展開がこの本の最大の魅力である。
事実ならではのやや退屈で泥臭い部分も見せつつも、
著者含む登場人物たちの会話や愉快なこぼれ話が楽しく綴られており、「事実は小説より奇なり」という言葉がすとんとはまる様なそんな展開もあり、魅力溢れる冒険譚にまとまっている。

一般的には馴染みの無い専門用語が多く出てくるが、
文体も読みやすく、著者本人がわかりやすく解説してくれるので、ミリタリーやら戦争やらに無縁な方でも心配無用。
まだ読んだことの無いよ。というミリタリーファン、サバイバルゲームファン及びFPSファンの皆様には是非読んでいただきたい一冊。


注釈

※1 イギリス陸軍の特殊部隊。
英国陸軍第22SAS(特殊空挺)連隊。
空挺部隊とはパラシュート降下技能を持つ歩兵部隊の事で、SASはスペシャル・エア・サービスの略。
世界で最も有名な特殊部隊であり、世界最古の特殊部隊とも言われている。
アクション映画やドラマ、アニメなどにも度々登場する。
設立は第二次世界大戦下の北アフリカ戦線で、1941年に英国陸軍のデイヴィット・スターリング少佐が発案し、1942年にSAS連隊として設立。
砂漠にあるドイツ軍、イタリア軍の飛行場に夜な夜な出向いては飛行機の破壊活動に勤しんでいた。
戦後はインドネシア独立のボルネオ紛争やらアイルランド紛争で活躍した。
イラン革命でイスラム過激派のテロとかハイジャックが流行すると欧州各国でテロ対策部隊の編成が始まり、SASはドイツのGSG9をはじめ西側各国の対テロ対策部隊を支援した。米国のいわゆるデルタフォースもSASの対テロ対策チームを模範としている。
1980年、自国のイラン大使館占拠事件ではテレビ中継される中これを解決し一躍脚光を浴びる。
その後フォークランド紛争、湾岸戦争、アフガニスタン、イラク戦争などに参加。
現在も対テロと海外派遣を主に特殊作戦に従事している。

※2 湾岸戦争は1990年にサダムフセイン率いるイラク軍が隣国クウェートに侵攻した事で勃発した戦争。
戦闘地域が海に面した砂漠だったため湾岸戦争と言われる。
原油価格下落によって生じた両国の摩擦が原因だったが、米国とイスラエルによる陰謀説なども背景にあり、独裁者サダムフセインによる行き過ぎた政治判断だった可能性も伺える。
侵攻したイラク軍に対し、侵攻されたクウェート開放のため米国を中心に実に40以上の国と地域(武装組織)が戦力を展開。
1991年1月から多国籍軍による空爆が開始され、2月には機甲師団中心の地上戦を開始。その後約1ヶ月の戦闘でイラク軍は敗走した。
4月6日に国連安保理決議を受諾し終結した。
なおこの戦争には欧米(主に米国)が当時最新のハイテク兵器を数多く投入したためハイテク兵器実験場と呼ばれる事もある。
湾岸戦争がベトナム戦争同様のブラックマーケットだったかどうかについてはコメントを差し控える。

※3 スカッドミサイルは旧ソビエトユニオンで開発されたR11ミサイルとその派生型の総称。
地対地ミサイル、つまり地上で発射して地上を攻撃する短距離弾道ミサイル。
悪名高いナチスドイツのV2ロケットのコピー改良品でもある。
弾頭に核及びBC兵器(生物化学兵器)を搭載可能で、最大の特徴はトラック運転してぶーんと行けば好きなところから発射出来る手軽さ。
恐ろし過ぎる。SASなどの特殊部隊を使ってスカッド狩りをしたのも納得。












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