眠れない夜
私が初めて人の死について考えたのは
4歳のときの、ある夏の夜。
今思えば、
あの夜が初めての「眠れない夜」だった。
絵本の世界にだけ存在すると思っていた「死」が
初めて私の世界に影を落とした日。
高い天井に大切な人の顔が、
浮かんでは消え、浮かんでは消えた。
おとうさん
おかあさん
おじいちゃん
おばあちゃん
いつか必ずやってくるであろう別れの日。
ずっと一緒には居られないのだと、
そのとき、なぜか私は一瞬で理解をした。
その日は、お泊り保育の日だった。
みんなが眠っている中で、
1人だけ目を開いている私。
天井を凝視しながら
初めて湧き上がってくる感情に耳を澄ませる。
暗闇の向こうから
お母さん、お母さん、と泣く声が聞こえた。
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