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『暁に薮を睨む』

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刀篤(かたなあつし)の厳選した詩集です。
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【詩】暁に薮を睨む

【詩】暁に薮を睨む

もう夜になる/埋め込まれている
そうやって薮の中に踏み込んでゆく

君が帳に差し出した手を
色めく街を俯瞰して伸ばした手を
僕の本心は【掴む】だったけれど
愚かにも僕は躊躇した

君が全霊で救おうとした君の手は
誰の【掴む】でも良いものなのだと
賢明にも僕は正確に分析した

今睨みつけたい道理があって
今睨みつけるべき論理があって
今睨みつけるはずの倫理があって

最も憎むべきものは良識であり

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【小休詩】リバイアサン

【小休詩】リバイアサン

早朝/
/リバイアさんは悩んでいた
今日はバハ武藤くんと
初めてのデートなのだが
何を着て行ったら良いか
わかんなかったのだ

朝/
/リバイアさんは焦っていた
やはり着て行く服は決まんないし
髪型も思い通りに決まんないし
挙句トイレにスマホを落とし
対処法もわかんなかったのだ

昼/
/リバイアさんは困っていた
バハ武藤くんはやさしく
ゆっくり選んでねと言ったが
ドリアって何?ペペロンチーノ?

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【詩】練磨(New Ver.)

【詩】練磨(New Ver.)

腿肉の緊張と弛緩
楽曲と協調破調し

しなやかに烈しく
美の概念を拡張し

ああ、なんという
終わりのない練磨

バレエダンサーの
肉体の誇り高さよ

静的動的な連続性
瞬間瞬間の格調に

質量としての個の
リミットを超越す

【詩】ヘッドホン

【詩】ヘッドホン

新しい服を買ったら
それは鏡の前で
飛び跳ねるし

好きな音楽を
見つけたら
やっぱり鏡の前

夜はアスファルト
寝転がって音楽
服と冷たい風

月にわたしが映る

【詩】中庭

【詩】中庭

嘗てICUの羊水の中に居たぼく
妖精たちの祝福を受けたタトゥーの
シールの様な中庭には光が射しており
其処は同じ境遇の別のタトゥーを有した
美しい無垢なネコ科の縄張りだった

最も美しい雌猫は最も無垢なシールを
ぼくの心臓に貼りつけ最も速やかに
去っていった 温もりを残して行った
ゴロゴロと喉を鳴らしたものだ
何しろぼくは陽向に居たのだもの

嘗てICUの羊水の中に居たきみ
深い眼差しでぼくを畏れ

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【小休詩】ごちゃ混ぜ

【小休詩】ごちゃ混ぜ

でんぐり返しをして

「おれも地球と同じになったなぁ」

そう言って笑う

【詩】Re:天国(New Ver.)

【詩】Re:天国(New Ver.)

正道を行き脇道を選び
けもの道を開拓する

死線を乗り越えられたとしても
次の死線が待っているだけだ

だが今度こそ私は死神の
匂いを確実に覚えたぞ

注意深く
思慮深く

ときに群れて
ときに一匹で

白夜にまた奴を見れば
回り込んで喉笛に噛み付く

そうやって肉を喰らってゆけば
天使の声を聴くこともあるだろう

正道を越え脇道で休み
けもの道で罠をかけて

折り重なる死線に挑む
君の愛憎の腕へ

【詩】絵本

【詩】絵本

わたしを差し出した
わたしは絵本だった
わたしを覚えていてね

【詩】内緒

【詩】内緒

誰かが聞き耳を立てていないか
アチコチ確かめる様に二人きり
警戒する波打ち際そんな休息が
今の僕たちを支え救っている
いつか誰かの刃先で誓った
約束を君との約束に更新し
内緒話の様に心臓に刻み付け
スクリューに倍の加速をかける

【詩】約束

【詩】約束

大洋の野心が何を生んだと
云うのだろうおまえが求める
その船旅で捨てたものの中に
あの娘との海があったことを
一瞬でも今思い出せるか?
約束の港を覚えているか?
舷梯に沖を見てあの娘は
未来を救ってくれるようにと
今おまえが唯一携えている
刃先に託したのだ光るナイフに
あの娘の夢を覚えているか?
たった今野心の存続を救った
その刃先をくれた人の名前を

約束というものは必ず
守らなければならないも

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【詩】白紙

【詩】白紙

生きている意味を
真剣に考えてみたんだ
他の人のことは知らない
好きな人に伝えたいことがある
それをどう云う風に伝えるか
それを考えていることだ

【詩】虹彩は無限

【詩】虹彩は無限


君の眼を一瞬でも
近くに覗き込めたら
其れは世界の願い

其処は深い深い透明の
太陽光のゆらぎより透明の
秘められた有限の水源

無限なものは君の嗜む紅茶


君の虹彩を一頁でも
隣合わせに解読出来たら
其れは宇宙の想い

此処に透き通る深淵の
午前0時の夏の始まりの
閉じ込められた有限の知覚

無限なものは君の知る書物


君の瞳孔を1mmでも
正確さを以て描写出来たら
其れは時空の期待

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【小休詩】チェンソーマン

【小休詩】チェンソーマン

「一番好き」って言うより
「一等好き」って言うほうが近い
チェンソーマンのパワーちゃんが
一人称を儂って言うのを決めたのと
たぶん一等同じ理由で僕は君が好き

【詩】天回

【詩】天回

大宇宙はエーテルに満ち光は振動し
あなたの深層心理に影響を与えている
波に乗った宇宙船が遥か頭上を回頭し
地球から見える景色を限定している
デッドリンク大橋越しに日没を臨む
マフチス休火山麓の中国料理店では
とても可愛いホールスタッフが居て
チャイナ服でテーブルからテーブルへ
料理店は休火山麓の夜の光の象徴である
上海蟹には赤ワインか白ワインか
科学理論はしばしばアルコールであり
泥酔した常連客た

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