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DAY 97:「日記」"BLUE LIGHTS" KENNY BURRELL Blue Note 1597 Volume 2

こないだの休みは、
ここちよい疲れが残る1日だった。

ベッドで普段よりも長く寝て、
いつもより、だいぶ遅めの朝食を摂る。
すでに他の家族は起きていて、
妻は家事を、息子はテレビを、
娘は本にシールを貼るという、
思いおもいの時間を、それぞれ過ごしている。

私といえば、
昨晩にした筋トレの疲労感が抜けずに、
ぼうっとした目で、それら人々の動きを見つめ、
すでに熱を失って、少し冷たくなった、
コーヒーをすすった。

外はいい天気。
優しく差し込む陽の光。
時間が進むのも、
なんだかゆっくりな気がする。

私もゆっくりと朝食を済ませた。
妻が買い物に出るというので、
息子と娘と、一緒に過ごすことに。

息子は最近、やたらテレビを見たいとか、
テレビゲームをしたいとせがむ。
自分も小さい頃はそうだったな、と思いながら、
その気持ちをわかっているはずなのに、
自分の親のように、それを制する。
可笑しなもんだな。

7歳の息子と、1歳の娘が、
ほぼ40歳の私と、
いっしょに遊べるものを探す。
刀で切られてみたり、ボールを投げてみたり。
最終的には、積み木に落ち着いた。
息子はできるだけ高く、
それを積み上げようとする。
四角くて大きな積み木を選び、
慎重にそれを重ねていく。
もっと、大きくするためには。
ああでもない、こうでもない、
この木をこう置いたほうがいいんじゃないかと、
まるで建築家か、大工にでもなったつもりで、
それを積んでいく。

たいして娘は、ゆったりと座ったまま、
そしてゆっくりと、手を伸ばして、
丸く切り取られた、円柱を掴む。
そしてさほど、大きく積み上げない。
まばらに積み上げた円柱を見て、
にこにこしている。

そして「みて〜」と、
覚えたてのことばを私と息子に投げかけてくる。
私と息子は、それを見て、というよりは、
その言葉を笑顔で投げかけてきた
娘を見て、笑顔になった。

私はスマホを息子と娘、
両方に向けて、写真を撮った。

そのうちに娘が眠たくなり、
床に転がり始めたので
息子には学習ドリルをしてもらい、
娘を昼寝に寝かしつけることにした。
小学1年生とはいえ、
最近の学習ドリルはなかなかに難しい。
算数なんて、ちょっとした
連立方程式みたいな問題が並んでいる。
息子はそれを一瞥して
「絶対にできない、無理」
と半ばベソをかいている。

娘が寝たら、
おとうさんといっしょに考えような、
そう言って、息子の嘆きが響く中、
その場を一旦離れた。

娘はぐずることもなく、
ゆるやかにまぶたを閉じていき、
眠れるベッドのおひめさまになった。
寝顔を見つめながら、
可愛いなとおもいながら、
起こさないように、
そうっと足を運んで、息子のもとへ戻る。

息子は椅子の上で背中を丸め、
学習ドリルと正対していて動かない。
私の顔を見るや否や、涙をこぼした。
「ひとつはがんばって答えたけど、
 ここからもうわからないんだ」
ここまでよくがんばった、
いっしょに考えよう、と言って
残り2問、問題にチャレンジ。

考え方のヒントを与えるだけで、
少し時間はかかったが、
見事に解くことができた。
息子も満足気な顔。
そばにいてやれてよかった。
と同時に、
はじめから付き添ってやりたかったなとも思う。

私の体が2つあればいいのにな。そう思った。
息子は、他の教科の問題やテストも、
算数を解いた勢いそのままに、
自分なりにチャレンジして、
解答を導き出していた。
できるだけ、自信をつけさせてあげたいな。

娘はまだ寝ていたので、息子は勉強もしたし、
いっしょにテレビゲームをやることにした。
ポケモンをひたすら捕まえる息子を、
そばで応援する私。
思えば私も、
昔はひたすらモンスターを倒していたな。
あの頃は、スイッチを押せば、
いつでも勇者になれた。

ある程度やったところで、
息子が私にもコントローラーを持たせる。
今度はマリオカートを、
おとうさんとやりたいのだそうだ。
「てかげんしてね」
と息子は言うが、こちらはそんな気は全くない。
ライオンはウサギを狩る時も全力なのである。

獅子搏兎。

そして、
獅子は千尋の谷に我が子を落とすのである。

這い上がってこい。

というわけで、全てのレースで私が勝った。
我ながら大人気ない。
そうしたら息子はとても悔しかったようで、
また泣き叫び始めた。

「おとうさんが勝たせてくれなかった」
「一位になれなかった」

このくらい悔しがるのが
ちょうどいいとは思うものの、
ややめんどくさいなと思いながら、
少し大人気なかった自分を反省した。

息子が泣き叫んで欲しくない理由は他にもある。
その声で、娘が起きてしまうのだ。
それで、つられて泣いてしまう。
こどもたちふたりに泣かれてしまうと、
おとうさんとしてはもうお手上げである。

そこに妻がちょうどよく電話をくれ、
帰ってくることになった。
何か勘でも働いたのだろうか。
本当に間のいいことで、ありがたい。

泣きべそをかいている
ふたりの子どもたちを尻目に、
昼食のそばを茹でる。
乾麺っていうのはどの種類でも、
家庭料理人の味方である。
早くて安くて美味い。
これ以上のものがあるだろうか。

妻が帰ってきた。娘が泣き止む。
息子はまだウニャウニャ言っている。
妻が優しく息子をなだめて、
皆で昼食を囲むことができた。

昼食後は公園に行こうと、
家族で話し合って決めていた。

実は前の日にも、公園に行っている。
だけど、家の中にこもってばかりいると、
私はともかく
(私はレコードを聴いたり、
本を読んだりするのがとても好きなので、
できれば静かにひとりでいたい)、
息子のフラストレーションが
溜まってしまうようだ。
家の中で走ったり、
訳のわからないムーブを繰り出してしまう。
あげく言葉遣いも荒くなったり、
私に戦いを挑んできたりといいことがない。

息子にとっては、
しっかりと外で遊んで、
しっかりと疲れて、
しっかりと食べて、
しっかりと寝るのがいいみたいだ。
付き合う大人もしっかりと疲れるのだけれど。

前日の公園では野球をしたり、
遊具でたくさん遊んだ。

今日の公園遊びでも彼のリクエストは野球。
親父が投げた球を息子が打つ。たまに交代する。
守備は親父か息子ただひとり。
ピッチャー兼、内野兼、外野。
バットに当たった瞬間から、
相当距離を走ることを覚悟しなければならない。
が、息子がそれを望んでいるのだから仕方ない。
親父も息子もバットに当たった球を今日も、
思いっきり追いかけるのであった。

そうするとすぐに疲れる。
ので、今度は親父の夢のテンプレのひとつ、
キャッチボールを息子に提案する。
息子は打つのは上手いが、捕るのはからっきし。
嫌がる息子をなんとか説得して、
キャッチボールをする。
最初のうち、息子はうまく捕ることができない。
だけど、次第にそのうち、
コツをつかんできて、
グローブにボールを
納めることができるようになってくる。
私が投げた球を息子が捕り、また投げ返す。
ある時はぼやきながら、
またある時は歓声を上げながら。
シンプルだけれど、とても楽しい。
キャッチボールは、やっぱり、
おとうさんの夢です。
これからもやろうね。

キャッチボールを済ませて、
妻と娘の様子を見にいく。
娘はなんと、
滑り台の階段をひとりで登り、
ひとりで滑り台を滑ることが
できるようになっていた。
恐怖心を克服して。
まだ2歳にも満たないのに、大きな成長。
娘は最近自己主張が激しい。
いわゆるイヤイヤ期。
滑り台も自分から登りたい、
滑りたいと主張したらしい。
安全のために添えられる、
親の手を払おうとする。
それも成長と捉えて
微笑ましく見ていられるのは、
先に息子を育てたからなんだろうな。

滑り台をひとしきり滑り終えたところで、
息子が鬼ごっこをしようと言ってきた。
私が娘と遊んでいたので、
妻が最初は付き合っていたが、
すぐに捕まってしまう。

私にバトンタッチする番になった。
正直そんな体力はあまりないな…と
思っていたところに、救世主が現れた。
近所の小学生の、友達兄弟である。
妻が彼らを見つけ、
公園に来ていることを伝えると、
息子はしなびた親父よりも
元気な友達の輪に入って、
早速鬼ごっこを始めた。お友達様々である。

娘はというと、
今度はブランコに興味を示し始めた。
まだ自分の胸ほどもある高さの
ブランコに娘を乗せ、
ブランコの鎖を掴むように手を誘導する。
掴んだのを確かめてから、
ゆっくりと前後に、ブランコを揺すっていく。
「ゆ〜ら、ゆ〜ら」と言いながら。
娘は乗り始め、動き始めこそ
緊張した面持ちだったが、
徐々にそれもほぐれてきて、
笑い声をあげ始めた。
親父と笑顔のブランコは、しばらくの間続いた。
とても幸せな時間だった。

ふと息子に目をやると、
今度は友達同士で野球をやっている。
その姿に、自分も昔やっていたなぁと、
過去の自分を重ね合わさずにはいられなかった。

春が近づいてきているとはいえ、
まだ風は冷たい。
夕焼け小焼けの音楽が街に流れる。

息子に声をかけ、
友達にありがとうを言ってから、
家族みんなで家路についた。

全身砂だらけなので、
玄関で妻以外全員下着姿になって、
風呂場へ直行する。
すでに風呂は沸かしてあったので、
サッとこどもたちふたりを洗い、
自分もサッと洗って、熱い湯船に飛び込む。
声にならない声が漏れる。
息子から「変なの」と言われる。
「大きくなればわかるよ」と返す。

風呂から上がると、
すでに夕飯を妻が作ってくれていた。
人参を豚バラで巻いて、
甘辛くタレをつけたもの。
あとはお味噌汁と、小松菜と油揚げのお浸し。

ふたりのこどもと、
ひとりのこどもみたいな親父が、
優しい妻に見守られながら
貪るようにそれを食べた。

この時間は、
レコードをかけることも許される。
今夜はピンクの中に、
美女が横たわるイラストが描かれた
素敵なジャケットのレコード。
当時、若きアンディ・ウォーホルが、
ギタリストのケニーバレルの
ファンだったことから、描かれたものだ。
もちろん、内容も最高。

音楽が流れる中、ひたすら食べたら、
歯磨きをして、もう寝る準備。

最近は寝る前に、 
UNOをやるのが我が家の習慣になりつつある。
息子の作った新カードにより、
ドロー11とドロー20のカードが加わったため、
緊張感も11倍、いや20倍だ。
親父が無事にそれらをくらって、
大量のカードを持ったところでゲームセット。
寝る時間だ。

布団にさんにん、川の字になる。

妻は資格試験の勉強があるため、
夜はひとりで勉強の時間。

私は右手に娘、左手に息子。
幸せを噛み締めて、寝かしつけをする。
息子も娘もすぐに眠りについた。
私も起きて、何かしようかと思ったけれど、
再び目が覚めた時は、真夜中だった。

今度は胸に娘、腹に息子が乗っていた。

リビングで水を飲み、
PCを開く。
なんとなく、できるだけそのままを、
今日は書き残しておきたいと思った。
このなんでもないような1日を過ごせることが、
家族が笑顔で過ごせた今日といういちにちが、
とてもかけがえのないものだと思ったから。

もう一度、レコードに針を落とす。
この時間も、きっと、
いや、絶対に、当たり前じゃない。
まずはそれをしっかりと再確認して、
いっしょうけんめいに、生きよう。

レコードの溝を針がなぞって、
その震えが空気の振動となって
スピーカーから出てくる。

いっしょうけんめいに、
あきらめずに、
生きよう。

ここまでお読みくださり、
ありがとうございます。


今後も、
あなたのちょっとした読み物に、
私のnoteが加われば、
とても嬉しいです。

きょうもあしたも、あなたにとって
笑顔で、かけがえのない、
一日でありますように。

アイ

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