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アートという手段で環境を変える -アグネス・デネス [私たちのエコロジー展]@森美術館

 六本木ヒルズ。

 森美術館。

 本展覧会には、すでに何度も足を運んだ。

 開催は今月末まで。これから、特に印象に残った作品とその理由を、手短に紹介していこうと思う。


アグネス・デネス

 本展には、アートを以て抗議を示す作品も数多く展示されている。ダイナミックで、そして洗練を感じたのが、アグネス・デネスの作品だ。


「小麦畑―対立:バッテリー・パーク埋立地、ダウンタウン・マンハッタン」(1982)

 タイトルをヒントとすると、この1枚の集合写真のパネルからは、「もしマンハッタンに小麦畑があったら?」という意味あいの、合成写真?と一瞬思える。

 広大な小麦畑の向こうには、2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件(9.11テロ事件)で倒壊した、ワールドトレードセンターのツインタワーが写ってもいる。

 これは、合成でもなんでもなく、実際の写真だ。

 写真中央が、アグネス。

 ゴミを取り除き、広大な麦畑を造り上げた。

 ここは、埋め立て地であった、ウオール街の金融街の反対側の土地。

 ちなみに、映画『ウォール街』は、5年後の1987年公開。

 プラカードを持って叫ぶ、直接的な抗議はもちろん重要だと思う。

 しかし「えっ」と驚かせて、自然の美を目の前に再現し、そこに静かな抗議の姿勢を示す。自分の解釈が自由に入れられるアートは、かくも自由なのかと思える。

 ちなみに、資金は「パブリックアート基金」で賄ったという。パブリックアートという解釈……基金もすごい。


「生きているピラミッド」(2015年)

 2015年にニューヨークで発表され、その後、世界各地で再現展示されているというパブリックアート。

 内容はパネルを見ての通り。

 木材でピラミッドを造り、

 そこに植物を植えたり種を撒いたりして、

 花を咲かせる。

 古代のピラミッドが、王の権力を示すものであったことは広く知られている。エジプトのピラミッドは、公共事業であったという説もあるが、王のために臣民が造った、という構造は変わらないと思う。

 そんな歴史をおそらくふまえつつ、みんなで作って植物まで植えてしまう。植物たちは、やがて成長して花を咲かせ……。

 自然のなかで成長する、タイトル通りの「生きているピラミッド」。




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