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企画&常設展の静かなコラボ@丸亀市 猪熊弦一郎現代美術館

 丸亀市 猪熊弦一郎現代美術館。エントランスにはこんな変化が。

 何が起きているのかは、企画展にヒントがある。


作家の人柄があふれる美術館

 わたしが、強く想いを感じる美術館がある(数少ない、行ったことのあるなかで、ということだけど)。

 例えば、アーティゾン美術館であれば、コレクションの絵を、自分のところだけに留めておくのでなく、広くみんなに観てほしいという使命感、

 地中美術館であれば、現代アートの島・直島において、印象派のモネの絵を、いかに美術史の流れに沿いつつ、オリジナリティを出して、完璧なまでの方法で展示するか、

 草間彌生美術館は、作家が世界のクサマに至るまでの苦しみ、葛藤も交えた成長の過程を、白い小さな空間の中から発信すること、

 そしてここ、丸亀市 猪熊弦一郎現代美術館の場合、作家の人柄、作家そのもの、を感じる。

 作家の人柄、といえば、たとえば展示室の前の、このボード。

 作家の想いを第一に、しかし美術館として注意すべきことはしたい、その伝え方の上手さ。このボードを読むだけで、心がやわらかくなってくる。


生活になじむ「猪熊さん」の作品

 前回の常設展は、画家としての黎明期を辿るものだった。

 今回は、年齢とともにスタイルを変え、多作な作品を遺した作家ならではの、「生活」まわりの作品の展示だ。企画展とコラボもしている。

 奥の展示室Aには、生活周りの作品が展示。

 家具も。

三越の包装紙、上野駅コンコース壁画

 猪熊さんといえば、三越の包装紙のデザインだ。

 東京・上野駅コンコースのデザイン画。

 香川県庁の壁画も猪熊作品。

戦中~晩年の人物画が展示

 美術館正面側の展示室、Bのほうには、絵画が展示。

 猪熊さんは1938年に渡仏し、マティスに師事している。それをふまえると、作品鑑賞もより興味深くなる。

S君の像 1939年


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魚と女 1939年


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題名不明 1940年頃


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黄色いスカートの婦人 1946年頃


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題名不明 1946-50年頃


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壺と婦人座像 1950年


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 時代は30年ほど飛んで、雑誌の表紙を飾り続けた、晩年の「顔」シリーズへと続く。要素だけを残してシンプルに表現された、さまざまな人の顔。

顔25 1988年


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題名不明 1992年


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題名不明 1992年


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顔20D 1982年


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「顔12」 1988年


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「顔20C」1989年


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「緑の中の美しき顔」1992年


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「顔80」1989年

企画展コラボ「顔80」のタペストリー

 ところで、1階~2階の吹き抜けには、「顔80」のタペストリーが展示されていた。

 これは、企画展「須藤玲子:NUNOの布づくり」の新作だ。

 先に紹介した、猪熊弦一郎の「顔80」から起こして、

 タペストリーとして完成させた。

  常設展は2階、企画展は3階で行われている。3階から階下の眺めはこんな感じだ。

 長く長く制作されたタペストリーは、

 3階の展示室の高さから、エントランス、ショップのある1階に届くように展示されている。

 ここにも、エントランスの巨大な布のインスタレーションのように、企画展+常設展のつながりを演出しているのかもしれない。





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