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【詩】 ため息 

目が覚める

澄んだ朝の微笑

深く深呼吸したその姿に

見慣れたはずの顔を思い出す。

その記憶は何処からくるものなのか

微睡み続ける頭では

分からない

到底行き着く事は不可能だ

その微笑のみが刻まれた

浅い花の香りがする

ツツジの花が慈悲深く

昨日の残光に包まれる

花達の色はキレイだ

そのように

昨日の欠片が記憶に訴えかける

何もないわけではない

有り過ぎた日常にとらわれている

自我に目覚めた気配が訴える

この朝靄はどこからくるのか

眩しい笑顔は何をもたらすのか

木々や花々は気配に気付いているのか…

ひたすら一人で佇む

春のよく晴れた朝のまどろみの中

食卓に供された焼きたてのパンは芳醇で

燻した濃い薫りの珈琲は冷たい

すべてはいつもの日常

違うのは春というだけだ

その事実に気付くのが遅すぎた


春の陽気に隠れた霧が記憶をたむろする

深く柔らかい霧が胸に入り込む

ある春の日の午後

心地の良い陽気に目覚めた気配

全ては春の中のまどろみ…

何もかも変わったのだ

春のため息に一人立ちすくむしかなかった

そして

春のため息は長いようでいて短く

驚くほどに深い

深さが街を変えていく

木々や山々はため息に敏感なのだ

その様をみて

やはり

一人佇むしかないそうだ。






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