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高齢者のための社会保障制度改革案

まず、現在の日本の70代~80代の高齢者の方々の生活ぶりを見れば、到底豊かな暮らしをしているとは、全く言えない状況にあると思います。

また、欧米の各先進国を見てみても、70代~80代の高齢者にまで、働く事を強要し、税金や社会保険料を納めさせている国の話等、聞いた事がありません


その一方で、日本においては、以下の画像の通り、現役世代が支払っている社会保険料を、世界各国と比較しても、かなり高水準となっております。

また、日本の増え続けている借金の支出先も、社会保障費が主であるとされております。

しかし、ここで疑問となるのは、"何故、社会保障費に、ここまでのお金をかけているのに、一向に高齢者の生活は豊かにならないのか?"と言う点です。

そして、そもそも、日本の社会保障制度というのは、原理原則として、"60歳~65歳まで働けば、老後に悠々自適な生活を送れる"というものであったはずです。

ですから、本記事においては、社会保障にいくらお金をかけても、一向に高齢者の生活が豊かにならない理由を先ず述べてから、その後、今の社会保障制度を、"60歳~65歳まで働けば、老後に悠々自適な生活を送れる"という原理原則に近付けるために、どういった改革をすべきなのか?について、述べさせていただこうと思います。


1.スウェーデンと日本の高齢者の比較

まず、"日本の高齢者の生活は、現実的に何処まで豊かに出来るのか?"と言う事を考えた場合、世界でトップクラスに、高齢者福祉が手厚い国の実情を確認するのが、最も正確であると思います。

そして、現状、最も高齢者福祉が充実しているとされている国は、スウェーデンとなります。

ですので、本章では、大阪大学の斉藤弥生教授による、日本とスウェーデンの高齢者を対象に行われたインタビューの結果を参照し、日本とスウェーデンの違いを、改めて確認していきたいと思います。


①医療の利用頻度

高齢者の日常生活―日本とスウェーデンの比較―

まず、医療の利用頻度の違いになりますが、日本においては、月に一度通院している方が最も多く、毎日通院している方も、1%存在しております。

その一方で、スウェーデンにおいては、年に数回程度の通院で済ませている方が最も多く、全体的に、スウェーデンの高齢者は、あまり医療機関に通院していないという事が、言えると思います。


②介護サービスの利用頻度

高齢者の日常生活―日本とスウェーデンの比較―

その一方で、医療制度とは対照的に、介護サービスの利用頻度については、日本の場合は、週2~3回利用している方が最も多く、スウェーデンの場合は、毎日利用している方が最も多いという結果になっております。

スウェーデンは、介護福祉に力を入れている国として有名で、以下の画像の通り、高齢者のみの単身世帯が多い事からも、その事がお解りいただけると思います。

高齢者の日常生活―日本とスウェーデンの比較―


③生活への満足度

高齢者の日常生活―日本とスウェーデンの比較―

最後に、生活への満足度の比較となりますが、日本よりも、スウェーデンの高齢者の方が、現状の生活に満足している方が多いと言う結果になっております。


以上を総括いたしますと、スウェーデンは、日本に比べ、医療よりも、介護の方に重点を置いているという事が、お解りいただけると思います。


2.医療が充実している事は、高齢者にとって本当に重要だと言えるのか?

高齢者に対する福祉と言うのは、主に、年金・医療・介護の三つの分野に分ける事が出来ると思います。

そして、前章で確認した通り、スウェーデンにおいては、年金・介護に、重点を置いているものと考えられます。

その一方で、個人的には、日本においては、医療に、重点を置かれていると考えております。


なので、社会保障にいくらお金をかけても、一向に高齢者の生活が豊かにならない理由としては、"医療にお金を掛けすぎている"と言うのが、主な要因ではないかと、私は思っております。

やはり、毎日病院に通えるからと言って、その分高齢者の生活が豊かになる事はありませんし、その事によって、幸福度が上がるとも思えません

だったら、その分、高齢者に対する年金支給額を、もっと上げた方が良いと言えるのではないでしょうか。


3.具体案

高齢者に対しては、現金給付を重点的に行うべき

結論から申し上げますと、私は、年金・医療・介護の内、年金に重点を置き、年金支給額を、2~3倍にすべきであると考えております。

医療制度と介護制度の具体的な改革案としては、過去に投稿した記事「『医療制度改革案 最終版』医療費の問題は、国が医療機関を完全国有化すれば解決する」でも述べておりますが、現在の医療・介護制度と言うのは、それぞれ、診療報酬や介護報酬というものを用いて、間接的に、医療機関や介護施設をコントロールしているため、非常に無駄な費用が発生してしまっていると思っております。

なので、私の掲げた改革案が実施された場合は、医療機関や介護施設を、国有化ないしは、準国有化する事によって、そういった機関に対し、直接指揮監督する事が可能となりますから、その分、無駄に生じてしまっている費用を節約でき、それを原資として、高齢者の年金を増やす事は、十分に可能なのではないかと思っております。

ただ、その一方で、医療サービスや介護サービスの質は低下してしまう事は避けられないと思っております。

例えば、スウェーデンの医療機関においては、受診の予約をしてから、数ヶ月経たないと、診て貰えないという事は、頻繁に起こっているそうです。


ですが、医療や介護に事前に税金を投資せず、高齢者に対し、その原資を配ってしまうという事は、言わば、バウチャー制度のような性質を持っていると考える事が出来ます。

なので、高齢者から選んで貰えるように、各病院や介護施設は、各々競争する必要がありますから、病院や介護施設の総数自体は減ってしまうとは思いますが、サービスの質については、そこまで低下しないのではないかと思っております。


医療や介護を利用しなければしない程、得をするようになる

更に、これまで、医療や介護に掛けていた分の税金を、年金に回す事によって、不必要な医療や介護の利用も、抑制できると思っております。

何故なら、医療や介護を利用しなければしない程、高齢者が自由に使えるお金が増えるからです。

そうする事で、良い食事を摂れたり、良い生活習慣を維持する事によって、医療や介護を利用しない事が当たり前となり、豊かで健康な生活を、自ずと、高齢者が送れるようになるであろう事は、間違いないと思っております。


あとがき.

前述したように、今の社会保障制度は、医療に重きおいており、高齢者に対し、"毎日病院に通う事が出来ますよ!"と言いたげな制度設計となっております。

しかし、実際には、年金が足りず、自己負担分の医療費すら支払えず、医療にかかれない高齢者が多数存在したり、医療保険料や診療時の自己負担分等が重しとなり、一度大病を患ったら、老後破産になるしかないというような実情です。

更に言えば、今の高齢者が、自民党や政府に対し、"年金や介護を削ってでも、医療に金をかけてくれ!"と頼んだ訳でもないのに、今のような制度となってしまっている事も、かなり問題であると思っております。


しかし、それでも尚、高齢者の福祉に回せるリソースは、常に限られていると思っております。

その理由としては、累積する財政赤字に対する海外からの目によって、年々国債に頼った財政運営が難しくなっている事や、また、グローバル化によって、企業や富裕層に対する課税が上手く行えなくなってしまっている事が先ず挙げられます。

更に、税金や社会保険料を増やすとしても、その事が、現役世代の生活を困窮させる事に繋がってしまったり、企業の成長を阻害してしまう等の弊害が生じてしまう事から、現役世代や企業の反発を招いてしまうという事も挙げられます。


しかし、本記事でご覧いただいた通り、結局の所、今の日本においては、"リソース自体は多いのに、その配分の仕方がおかしいせいで、高齢者の生活が困窮してしまっているだけ"であると思っております。

私の推測ではありますが、今の政権与党を担っている自民党は、医師会という医者の団体から、多額の献金を貰っている事から、医療費に、多額の税金を使う事を辞めたくないのだと思っております。


そして、仮に、自民党が、今後も選挙で勝ち続けた場合は、今の社会保障制度が維持される事になると思います。

そうなってしまった場合、今後、高齢者の数が増え続けるとされておりますから、今ですら、悠々自適な生活が送れていないのに、増々、困窮する暮らしを強いられるようになることは、明白です。

ですから、70代~80代の高齢者が、朝から晩まで働かされ、高額の税金や社会保険料を払わされ続ける地獄のような状況を避けるためには、自民党以外の政党に投票し、社会保障制度を改革する必要がある事は間違いありません。

なので、選挙の際は、貴族のような振る舞いを続け、民意に一切応えない自民党ではなく、民意をきちんと汲み取ってくれる政党にこそ、一票を投じていただきたいと思っております。


参考文献.

・老後破産―長寿という悪夢―(新潮文庫)


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