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"国外への移動の自由"という観点から国の債務の問題を考える


はじめに.

最近、日銀が、"17年間にも及ぶマイナス金利を解除し、イールドカーブコントロールも金輪際行わない"という、金融政策方針の大転換を行いました。

ですので、これを機に、日本政府は、赤字国債の発行による財源の確保を更に行い辛くなったという事は間違いありません。


加えて、最近、私は、西田亮介氏の"地方政府の赤字は、住民の赤字ではない。何故なら、移動の自由が保障されているからだ。"という発言を耳にし、その理屈は、国家の赤字にも適用されるのではないかと、ハッと気付かされたため、今回は、そういった視点から、"国の債務は拡大させない方が良い"という主張とその根拠について、述べさせていただこうと思います。

また、おまけとして、その内容を踏まえ、"マイナス金利解除後、日本がどういう政策方針で、国家財政運営をすべきか?"という事についても、私見を語らさせていただきます。


1."国外への移動の自由"が保障されているという観点から

まず、直感的に言えば、"国家の債務を拡大させ、富裕層を作ったとしても、移動の自由がある限り、その富裕層は、国外に富を持ったまま逃げ切る事が出来る"という事が言えると思います。

なので、俗に言う、"人への投資"というのは、国民一人一人の所得やスキルを、財政出動によって向上させる政策を言いますが、国の債務が拡大し、財政悪化による円安や増税等の悪影響が拡大してしまえば、国家が投資した資本である"人"は、国外に流失してしまうため、結局、国家には、債務以外何も残らないというオチに至る可能性が大いにあります。

その一方で、インフラは、国外に勝手に流失するという心配が無く、何があっても国内に留まる社会資本であるため、国債発行によって、財源を賄う事と、非常に相性が良いと言えるでしょう。


2.財政赤字が拡大すればする程、日本の寿命は削られていく

今回の視点で言えば、緊縮財政派とは、"日本を存続させたい"という意思を持った集団であると言え、かたや、積極財政派とは、"日本が無くなっても良いから、自分を豊かにして欲しい"という意思を持った集団の集まりであると言う事が出来ます。

やはり、富を持った国民が、次々に海外に流出してしまうという前提で考えれば、国債を刷って、財政出動を行うという事は、国家にとって非常にリスクの高い行為である事は間違いないでしょう。


結局、国家の果たすべき至上命題は何か?という事を考えてみれば、それは、"税収を増やし、国家資産を増やす"と言うものになるでしょう。

つまり、国家というのも、一般的な営利法人と同じように、利益を追求する法人であると考える事が出来るのです。

そして、"国債を発行し、借金をして、財政支出を行う"という事は、完全に、企業が行うような"投資"と同義であるという事です。

ですから、何の計画性も無く、ギャンブル中毒者のように、ただひたすらお金を浪費しまくってしまう企業がやがて破綻してしまうように、国家も同じ事を行えば、やがては破綻し、消滅するという事です。


以上の事から、"人への投資""企業への投資"と言うのは、国家の税収を上げる上で、有効な投資手段である事は間違い無いので、是非行うべきなのですが、大原則として、国債発行を伴わないやり方で行う事が、ベストである事は間違いありません


3.アメリカ憲法草案者ジェームズ・マディソンの理念

本章から、"今後、日本の財政政策はどうあるべきか?"という事について語っていきたいと思います。


アメリカの4代目大統領であるジェームズ・マディソンは、"富裕層こそ、政治の実権を掌握すべきで、民衆が、政治の実権を握る事は脅威である"と、考えておりました。

そして、富裕層の富を、民衆が奪い散らかすような政治を行わせないためには、"民主主義を破壊する"必要があると考えていたそうです。

ですから、当初から合衆国憲法には、個人の財産権を強固に保障する条文が存在し、それと同時に、建国当初は、所謂特権階級のような富裕層のみが、政治の実権を握れるルールが存在いたしました。


では、何故、ジェームズ・マディソンが、上記のような考えに至ったのかというと、彼の想定している富裕層というのは、"富を持ち、教養を持ち、道徳心を持ち合わせた騎士のような存在"であったからです。

つまり、ギリシャ神話で言う、"あらゆる力を兼ね備えたアトラスのような存在が、民衆に代わって政治を行い、民衆に豊かな生活をもたらすべきだ"と考えていた訳です。


ですが、現代人の我々にとって、今の富裕層というのは、ジェームズ・マディソンが主張していたような富裕層とは全く異なると言う事は、誰の目から見ても、明らかであると思います。


4.ジェームズ・マディソンの理念は現代にも当てはまる

今の日本の大企業も、日本医師会のような利益団体も、ジェームズ・マディソンの言うように、"民衆達から自分達の富が奪われる事を恐れている"と考える事が出来ます。

ですから、民主主義を破壊するために、自民党議員達のような既得権益層を使い、政治が、民衆の手に渡らないよう、献金を使って、コントロールしているのです。


しかし、1787年のアメリカ合衆国憲法制定から、現代に至るまでの間に、日本においては、マディソンの主張するようなアトラスが出現する事になります。

そのアトラスとは、官僚達の事を指します。

日本の官僚の採用制度は、完全メリットシステム(試験採用方式)で成り立っており、正に、"富を持ち、教養を持ち、道徳心を持ち合わせた人材"を集めるのに適しております。

ですから、今の日本は、ジェームズ・マディソンの理想と呼べるような政治を、正に体現していたと言える訳です。


日本には二人のアトラスが存在する

ですが、日本には、もう一人、アトラスが存在いたします。

それが、日本企業です。

日本企業は、確かに、利己的に利益を追求する姿勢はあるものの、"日本人の雇用を守る"というアトラスとしての側面を持っている事も、事実と言えるでしょう。


アトラスが責務を放棄し、横暴な態度を取り始めた時には、しっかり懲らしめる必要がある

今、日本に存在するアトラス達は、"富を持ち、教養を持ち、道徳心を持ち合わせた超人"であるからこそ、政治を任されているに過ぎません。

ですから、そのアトラス達が、自分達の責務を忘れ、利己的に行動し始めた時、民衆が異議を唱え、官僚や大企業のようなアトラス達をしっかり懲らしめる必要があります

そうでなければ、そういったアトラス達だけがを富を蓄え、民衆が飢え続けるような、未来が到来する事は間違いないでしょう。


5.今後、日本はどういう方針をとるべきか?

大原則として、大企業や富裕層への課税を強化すべき

3~4章においては、アメリカ合衆国憲法の草案者達が想定した政治が、どんなものであったかについて、説明いたしました。

しかし、現在のアメリカに目を向けてみれば、アメリカの大企業達は、利己的な欲によってのみ突き動かされており、完全に、アトラスとしての責務を放棄しております

言わば、合衆国憲法が想定するようなアトラスが不在の状況となっているため、今のアメリカ社会は、非常に混沌とした状況となっていると言えます。


前置きが長くなりましたが、結局、何が言いたいかと言うと、"アメリカの真似をする必要は無い"という事です。

今のアメリカというのは、大企業達が社会を支配し、大企業にとって都合の良い法律ばかりを作っているような異常な状態であるため、真似する価値は全くないと言えるでしょう。

ですから、日本が今後取るべき方針としては、利上げによって、不況に傾くと思われますので、海外諸国とは歩調を無理に合わせず、法人税の増税や、株式配当金への課税等、大企業や富裕層への課税をしっかり行っていく方が良いと考えております。

そして、それを原資として、社会保険料の減税を行い、労働者の所得を増やし中小零細企業への支援を行うという事が、必要となると思います。


ただし、いくら、企業や富裕層のお金と言えども、"人様のお金"である事には、違いがありません

ですから、大企業や富裕層への課税を強化する前に、社会保障改革をしっかり行い、歳出を減らしたり、身を切る改革によって、富裕層や企業のお金で、政治家が良い思いをする事を一切辞めるという事は、絶対に行うべき事であり、それが出来ないのであれば、大企業や富裕層への課税を強化など、到底許される訳がありません。


まとめ.

まず、何故、今回アメリカ史の話を取り上げたのかと申しますと、憲法というのは、社会を作る上での根幹ルールとなりますので、アメリカ合衆国憲法の派生版とも言える新日本国憲法は、各条文に込められた理念や思想等は当然に共通し、"どのような社会が作られるのか"というのも、ある程度共通すると考えているからです。

ですから、今アメリカで起こっている事は、日本においても十分に起こり得ると、考える事が出来ます。


最後になりますが、今の日本は、今後の国家の運命を左右するようなあらゆる問題に直面していると言う事は間違いないと思います。

具体的には、官僚達の力の衰退し続け、大企業や利益団体の影響力が日に日に増している事や、2025年問題と呼ばれるような、社会保障費の急増による財政破綻の危機、あるいは、金利上昇による中小零細企業の連鎖倒産や、国家財政のさらなる悪化等、枚挙に暇がございません。

そして、おそらく、その問題の決着は、2024年~2030年までの約5年間の間につき、それが今後の日本の基礎となり、その方針の基に、2030年の国家運営が成されていく事でしょう。

ですから、今の政治が、今後の日本国家の命運を左右するような重大な影響力を持っている事は間違いありませんので、これまでのように、"政治は自分達には関係ない"と考えるのでは無く、国民一人一人が、しっかりと当事者意識を持ち、政治に参加すべき状況にあると結論付けさせていただきます。


参考文献.

・アメリカンドリームの終わり あるいは、富と権力を集中させる10の原理


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