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『宮本常一』を読みました。

全く知らない人物だったが、『今を生きる思想』シリーズになっていたので読んでみた。

民俗学をやっていた人物で、庶民の歴史は大きな権力の下に従うものではなく、庶民の歴史こそが大きな歴史を作っていると解釈した。

民俗学の中でも「もの」に焦点を当てた人と知られている。個人的にもなるほど!と思ったのは民具の種類や数を見て、自家製が多ければ自給自足率が高く、購買品が多ければ他の村社会との繋がりを示す証拠になる点だ。それに加え、民具を年代ごとに追っていくことで無字社会(文字による伝聞がない社会)における技術伝達を知ることができるという。

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調査するというのは一見何かを解明するように見えるが、中央が管轄するためのものと捉えることもできるそうだ。何かを明らかにするのは物事に対する解像度が上がったように見えるが、民俗どうしの文化を丸裸にし、無機質な捉え方に繋がるかもしれないと思った。

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観光ブームは地方の植民地化。観光客が観光地の住民の生活を破壊する側に回っても、助ける側になることは少ないという。観光地に入った資本を元にその地域が自ら経済を自立する道筋を立てられなければ観光客によって経済を左右される立場にあり続けてしまう。
そもそも旅・観光の始まりは高度経済成長にあるという。多くの人がサラリーマン化し、時間・仕事・考えに縛られるようになった。つまり枠に囚われるようになった。そんな中で鬱憤が溜まり自由になりたいという欲望が旅・観光の礎になったという。
哲学的な問いとして「旅とは何か?」があるが、分かりやすい答えの1つではないかと思った。自分の日常から離れることで、自分の考えになってること、ものの見方を再認識することで自分を振り返る。私はそんなに旅には行かないが、旅から帰ってくると漠然と「成長した」と感じることがある。感覚としては自分に自信が持てる時、自分が頑張った時に近い。
美談かもしれないが、インタビュー記事などの自分ターニングポイントとして「○○に行って変わりました」というのよく見る。旅をすると何かを決断したり、自分に自信を持つきっかけになるのかもしれない。

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何か気になったものを旅先で撮っておくと、その場では役にたたなくとも、視野を広げる役割を果たすことになる。
日常的に写真スポットを探している訳ではないが、「写真撮りたい」と思った時には見慣れた光景でも写真を撮るようにしている。視野を広げるという面では日常的な光景でも「写真を撮りたい」と思うこと自体が視野が広がっているかもしれない。


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