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切り取られた記憶

思い出せない空白の時間がある。

編集でカットされたかのように切り取られて

私の頭の中からいなくなった風景は今となっては良かったのか悪かったのかさえ分からい。

覚えているのは怒りと絶望に震え荒くなっていく息遣い。

あてもなく彷徨い続けて歩いている自分

どこまで行っても消えない苦しみを

拭い去ろうと必死に抗っていた

振り返らず、前に前に歩き続ける

そんな私を見つけるかのように

月がスポットライトを当てる

そして暗い闇の中にのまれていった


数時間後、知らない土地に辿り着いていた
見覚えのない風景

知らない人々、戸惑う私をよそに日常を進んでいる

仕事をしている人
仲間と騒いでいる人
恋人と寄り添っている人

誰もが笑顔で輝きに満ち溢れている

穏やかな時間が流れているこの土地に温かさを感じた


私はここで生き続けている

あの頃の記憶は切り取られてしまったけど

新しい人生を歩んでいる

何もないわたしを優しく包んでくれる

その中で自分らしさを取り戻した


きっと消し去りたかった
その先は絶望の世界でしかなかったから
きっと忘れたかった
これからも生きていくために
記憶はなくなってしまったけれども
超えるほどの思い出で埋め尽くされた

人は大きなストレスを抱えると

自分を守るためにその出来事自体を消し去ってしまう

私にもその作用が働いたのかもしれない


これから先たくさんの思い出が頭の中に収められていく

どんなことでも私の形となるもの

いい事も悪い事も

一部になっていくこれからの記憶は消し去りたくない




最後まで記事を読んでくれてありがとうございました!