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物として扱う、その背景にあるもの

皆さんは人を物のように扱ってしまう時ってありますか?

いやいや、しないでしょ

異常な冒頭でとうとうあいかもはおかしくなったんじゃないかと思いました?

真面目に質問をしています。人として絶対アウトな”物のように人を扱う行為”私はしそうになったことが何度もあります、看護師として働いていた時に。看護学校で何度も勉強する倫理的配慮。患者の自尊心を尊重するとか、配慮を持ったケアをするだとか。分かってる、分かってるんですよ大事なことだって。それでも心をなくしている瞬間がたくさんあります。人間とは慣れていくと油断が生まれてしまうもので知らず知らずのうちに自分のペースでルールを無視したことをしてしまいます。ちょっとくらいは良いかなと思ってしまい心のスキマがどんどん大きくなっていく。そんな自分を幾度となく戒めてきました。これはきっと私だけの問題ではなく多くの医療現場・介護施設で問題となっていることでちょっとやそっとではどうにもならないんでしょうけどNOTEの中で投げかけていきたいと思います。




看護師の免許を取得して新卒で就職したのは地元の総合病院だった。私の地元は熊本でも田舎の方で大きい病院は就職した病院と労災病院の二つしかない。大きな治療や手術をするときにはそのどちらかに入院する事が多かった。地域に根差した社風がとても合っていて総合病院では7年ほど働いていた。そこでは糖尿病・腎臓内科と整形外科の病棟で勤務した。今回は整形病棟で起こったある患者山田さん(仮名)の話。

整形病棟に入院してくる人はほとんど骨折して来る人が多い。病気の後遺症で寝たきりになった山田さんは介護施設で療養生活を送っていた。ある日に車いすから転落して骨折をする。病名は右大腿骨顆上骨折(右の膝の上あたりの骨折)。この手の骨折は手術などで固定してしまうと関節の近くなので膝の動きが悪くなってしまう。受傷前に歩行していた人に対してはできるだけ手術をしない方向で治療を考える。山田さんはすでに寝たきりで介助なしには車いすに移動できない状態だったので家族の同意のうえで手術をすることになった。術後、バイタル(体温や血圧のこと)の異常がないかを慎重に観察し、しばらくしてバイタルが安定してくると日常生活に近づけるように傷の治療をしつつリハビリをしていく。傷の痛みは薬で押さえて残存機能を維持する運動をしないとその後の生活に支障が出てくるから。寝たきりだったとしても動かないとどんどん身体は固くなって拘縮していって、床ずれや介護する側の困難が発生する可能性が出てくるので予防するために強制的に運動をしないといけない。山田さんは順調に日常生活に支障のないレベルまで回復していき元の施設に戻ることになった。小柄の可愛いおばあちゃんで癒し系のような存在だったので退院するのは寂しかったけど元気になったんだからと笑顔で見送った。

退院して3日後山田さんは再入院してきた、前回とは反対の左大腿顆上骨折をして。今度はおむつ交換時に誤ってベッドから転落したとのこと。自分からは動かない人が数日でまた骨折するなんて、どんな風に過ごしたらそうなるのか想像がつかなかった。それは私たち看護師だけでなく先生も同意見で

「大体、顆上骨折は相当な衝撃がない限り骨折することはないんだよね。前回の車いすからの転落もそうだけど、寝たきりの山田さんにとってはありえないなぁ、もしかしたら介助の仕方に問題があるんじゃないかな」と。

私「それって施設側に問題があるってことですか?」

先生「その可能性のほうが大きい気がする。」

家族からの話では、介助の仕方が荒い職員もいたとのこと。実際に介護施設へ問いただして追求するまではしないけど、勤務する整形病棟では珍しくない。認知症の患者さんは程度によって違うけど説明しても理解できない、何度説明しても止まらない危険行為、ケアをしようと触った途端に暴力行為があったりする人も少なくない。暴力行為がある患者さんは以前に触られて怖い思いをしたことが記憶に残っていて叩いたり、引っ掻いたりしてしまうんだと先輩は言っていた。忙しい中、意に反する事をされるとイライラするし、声を荒げてしまうこともある。それは人間の気質で無意識に荒い介助になってしまうのは分かる気もする。

でも、そのラインは超えてはいけない!!


人として踏み外してはいけないライン、一旦冷静になって落ち着かなければ・・・。

忘れたころにやってくる医療現場・介護施設の問題を報じるニュース。

高齢者の虐待、必要なケアをせず放置する、自尊心を無視した言動等々、その根底には職員の人員不足と教育不足があると感じる。

常に人不足で1人が2人分の仕事をこなしている毎日。患者の命綱でもあるナースコールでの訴えを軽視し「些細なことで押さないで」と思ったり、「また押してる」とすぐに対応しなかったり、1つ1つのケアを丁寧よりも早さを一番に考えたり、どんどんすり減ってしまいそして心をなくしていく。

職種経験がない職員が作業だけを教わり、こなすだけの仕事をしてしまう。

全てが同時進行の煩雑な毎日で感情のコントロールが制御不能になる。

そんなことが当たり前になっている現状。しかも体力勝負の仕事で夜勤もあるためきついということだけでリタイアする人も少なくない。どこまでも人のことを考え自己犠牲が強いられる業種だから人としてどうあるべきかということをいつも試されているみたい。

ストレスフルな状況での矛先は一番弱い患者さんに向けられてしまう。その先は恐怖でしかない。



きっとみんな思っている。

人のために働いているのは正しいのだと

優しい人ができる仕事なのだと

でもそんなのは紙一重だ。踏み外すきっかけはいつもとなりに潜んでいる。


皆さんは人を物のように扱ってしまうことはありますか?

その背景を知ってやっぱり駄目と思いますか?


正しさって何かを犠牲にしないと成立しないのでしょうか?









最後まで記事を読んでくれてありがとうございました!