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一度あったことは忘れないものさ。思い出せないだけで

千と千尋の神隠しの劇中に出てくるこのセリフがとても印象的だ。「忘れていない、ただ思い出せないだけ」

27年間の人生、忘れている記憶ばかりだと思っていた。しかし、ただ、「思い出せない」それだけだった。

人と久しぶりに会話をする中で、相手が覚えていることを私は忘れていて、会話の中で思い出すことができる時がある。

つまり、誰かの記憶の中に、私が思い出せないことがたくさんあって、
私の記憶の中には、誰かが思い出したいこと、思い出せないことがたくさんある。

でもそれは、誰も忘却しているわけではない。
きっとその記憶はすぐ側にある。

どの記憶か、どんなことがあったのか、 
鮮明にはわからないけれど、
なんとなく心地よい感覚がある物事には、
きっと誰かの愛情があったのだと思う。

例えば、私が口ずさむ音楽、思わずリズムを奏でる音楽は、昔きっと誰かが私に歌ってくれた歌。

シーブリーズの香りがすると、
懐かしさに胸が熱くなるこの感覚は
私が身につけていた当時、誰かとの思い出に残る
エピソードがあったから。

海を泳いでいて、なんとなく心地がいい、
自分を取り戻せるのは、
昔、母のお腹にいた時の心地よさが
あったからなのかもしれない。

地元にある桜並木を歩いていると、
昔祖父がこの道を歩きながら
「車が走る音は、波の音に聞こえて気持ちがいいんだ」と話していたことを思い出し、
記憶の中、祖父とまた出会える。

私の五感の端々は、そうやって、時々誰かからの言葉、香り、リズムによって、昔の記憶を繋ぎ止めてくれる。

この世界を去るまでに、全部、思い出すことはできないけれど、私の一部として、一緒に生きている、生きてきたことに変わりはない。

思い出せなくて、少し寂しいけれど、きっと、ずっと
私の中にあって、その記憶は誰かからの愛情の一部なのだなと思うと私は愛されてきたんだと、少し温かい気持ちになるのだ。


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