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カトルとタタン

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いつか、どこかの「   」の子どもたちの話。毎月第2、第4日曜日更新。(全9話完結済み)番外編、たまに更新します。
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#子ども

新しい日、

新しい日、

タタンは、きっと覚えていない。
でも、私は覚えている。

カトルは、きっと忘れてる。
でも、僕は思い出せるよ。
これから先も、ずっと。



「カトルカトル、
 ぼく、行ってみたいところがあるんだ」

ぼくがそういうと、
カトルに、もくもくと雲がかかった。
ぼくは、あわてて手ではらったけど、
カトルにさわってみたら、すごく冷たくなっていた。

「タタン、」
「今日だけだよ」
ぼくは、
ぼくの手よ

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タシルとタタン(あるいは、ずいぶん昔の話)

タシルとタタン(あるいは、ずいぶん昔の話)

さらさらゆれる、小麦畑。
ずっと、ずーっと遠くの方まで、つづいてる。
小麦の方が、ちょっとだけ、ぼくより大きい。
だから、ぼくがそのなかを進んでいくと、
小麦の穂が、さらさら、さらさら、顔にあたる。

「タシル、タシル」
「ああ、タタンか」

まっ赤に日焼けしたタシルが、
小麦の海から、ひょっこり顔を出した。
タシルは、ぼくよりずっと大きいから、
すぐに、ぼくを見つけてくれた。

いつものように、

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「なんでもないよ、」

「なんでもないよ、」

「カトル、カトル」
「なあに?」
「ぼく、すごいことを発見したよ」
「すごいこと?」
「こうして、こうやってね」
「うんうん」
「こうして、カトルをぎゅっとしてね、」
「あら、あなたがこうしない日なんてあったかしら」
「そうじゃないよ、カトル。目をつぶってみて」

「……」
「……」
「……あら、花の匂いがする。カモミールかしら」
「その匂い、カモミールなんだ!やっとわかったよ」
「カモミール……

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me

me

タタン。
ぼくの名前。
大好きな名前。
口ずさむと、すごく楽しい。
大好きなカトルが付けてくれた名前だから、大好きにきまってる。

カトル?
カトルはね、ぼくのお姉さんだよ。
ぼくが、世界で一番大好きなひと。

それから、父さんもいる。
ぼくはちがうけど、
カトルは父さんがこわいみたい。
だから、父さんのことはあんまり好きじゃないときもある。
そういうときも、生きているときっとあるんだよって、

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カトルとタタン

カトルとタタン

「タタン、それは後回しにして」

 今からやろうとしていたことを遮るのは、人をがっかりさせるのだから、やめておきましょうね。
 カトルは前に(本当にずいぶんと前のことだけど)そう言っていたから、僕はがっかりした。
 カトルの言っていることにそっぽを向いてもよかったけど、さっきまでしていたことは、もうあんまりおもしろそうに見えなかった。これはもしかしたら、とんでもなくすてきなものだったかもしれないの

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