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令和のはじまりに兜の緒を締めなおす一冊【えいやっ!と飛び出すあの一瞬を愛してる】

ぽんずさんが去年この本を紹介してくださっていたおかげで、手に取ることができました。

『えいやっ!と飛び出すあの一瞬を愛してる』という本です。

小山田咲子さんという方のブログを書籍にしたものです。
特別、何かの方向性があったブログではなく、取り留めの無い『日常』をつづっていたブログを編集し、ひとつの作品にしたもの。

様々な事象に対する意見が書かれている日もあれば、その日の友達との他愛の無いやり取りを書いたり、行った場所の感想を書いたり、統一感はあまりなく、noteで日常系の記事を読んでいる感覚に程近いです。

ただし、その内容はまったく『普通』とは言いがたい。

人間力とでも言いましょうか。行動力や考え方、表現力などが図抜けていて、一人の大学生の日常を見ているはずなのに、それはとても真似できるようなものではない。毎週のように、どこかしらに足を運び時間の限り何かを吸収しようとする「日常」。それが普通であるという特異さ加減。脱帽するしかありません。

表題となった「えいやっ!と飛び出すあの一瞬を愛してる」は、ブログの一節から取ったのでしょう。
旅行に行くために計画を立てたり、持ち物をそろえたり、そういった、ちょっと億劫な段階を経て、「えいやっ!」と旅に踏み出す。その瞬間に対するいとおしさをつづった回に出てくる一節なのです。この一節だけでも、その表現力の巧みさが伝わるというものです。

そして、これは蛇足と言えるかもしれません。
前書きの段階で彼女が亡くなっていることがつづられています。旅行先の事故だそうです。

加えて、小山田咲子という方が、『andymori』というバンドのギターボーカル「小山田壮平」の姉であるという事実も、この本を読んで初めて知りました。
andymoriはこの本を知るずっと前から、アルバムを何枚か持っていますし、懐かしさを感じさせるメロと、畳み掛けるような詩がステキなバンドでした(現在は解散)。

兄弟を並べて考えないほうがいいのではないか、という思いもあります。
でも小山田荘平は、その圧倒的な表現力を持ちながら、後半バンドメンバーの脱退などもあったせいか、精神を病んで橋から飛び降りたり、良くも悪くも圧倒的な存在です。

私は、この段階で兄弟であると初めて知ったくせに、やはり兄弟なのだなぁ、という勝手な納得を感じてしまったのでした。

少しだけですが、andymoriの曲の歌詞に姉が出てくるものもあります。「Peace」という曲です。

そんな、本当に色んな感情を刺激される今作。

「同じ土俵にいる」と考えるにはおこがましさを感じますが、日々の出来事を言葉にしてつづっているものとして、こんなすばらしい作品が世の中にはあることを念頭に置くことは悪いことではないでしょう。

たまたま水曜日なので、この話で「令和」を初めてみました。
令和はもっといいものを、刺さるものを書けるといいな。


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