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日中共同世論調査-- ん?日中で発表結果が全然違う?


日本人の中国に対するネガティブな見方を示しているという調査結果

日本と中国が共同で、両国民の意識調査を行なったという。

福島第一原発の処理水放出後の、中国側の日本の水産物禁輸などの影響を受けて、日本側では、中国に対するネガティブな見方が増えている、と各メディアが伝えていた。

毎日新聞:日本側、中国に「良くない」印象が9割 処理水放出後
読売新聞:中国の印象「良くない」92・2% 過去2番目
産経新聞:中国の印象「良くない」92・2% 日本で4・9ポイント上昇
日本経済新聞: 処理水放出 中国「心配」47.6% 日本は対中感情が悪化
NHK:日中関係「悪い」日本で10ポイント以上増

各社のヘッドライン

この調査は、日本の民間団体「言論NPO」と、中国の「中国国際伝播集団」が毎年行なっているものだという。

中国側の発表内容にびっくり!

では、中国語の勉強も兼ねて、中国側の発表を見てみようと、新華社のサイトを訪れると・・・

えっ!?何、これ? 同じ調査だよね。

ちなみに「民調」とは、「民意調査」の略で、世論調査のことだ。
その日本語版もあったので、こちらを見てもらうと、わかりやすいかも。

そう、全然発表内容が違うのだ!でも、確かに全く同じ調査に関するニュースだ。

「関係改善ムード」満載の中国側発表

中国側の発表を要約すると、こんな感じ。
まずタイトルは、

调显示:中日民众认同中日关系重要性,期待改善关系、促地区和平繁荣
(意味)
世論調査: 中日国民は両国関係の重要性を認識 関係改善、地域の平和的繁栄の促進を期待

細かく見ると・・・

⭐️中国側の60.1% 日本側の65.1%が、両国関係の重要性を認識している
(日本側の発表でも”相手をよく思う人は、日本より中国の方が多いみたいよ”という数字だったが、この中国側の発表でも、”日本の方が関係改善を望んでる人が多いみたいよ”という数字になっているのが、何か自分たちの方が上に立っているような感覚を抱かせる数字で面白いと思ったが、気のせいか?)

🌟今年は日中平和友好条約締結45周年の年だ

🌟あと、面白いと思ったのが・・・

于其他国家中日关系的影响,58%的日本受访者希望“日本不选边站,努力世界的合作展作献”,示出其本国外交政策保持平衡中立的高呼声。
(概要)
他の国が中日関係に及ぼす影響については、日本側の58%が「日本は特定の国の側に立たず、国際的な協力と発展に貢献するよう努める」ことを望み、自国の外交政策におけるバランスと中立性の維持を求める声が高まっていることを示した。

な、何?この数字本当?というか、この設問、何?「どこの側にも立たず」とは。つまり「米国、ひいては”西側”の方にべったりになるべきじゃないと日本人の多くが思ってるみたいよ」ということか。政治的な匂いがする気がする。

そう。日本側では、処理水の関連で、中国をネガティブに見る日本人が増えているという結果に対して、中国側では「日中平和条約45年の今年は、日中関係改善を望む人が増えてますよ。そして日本人は、あんまり西側にべったりにならないほうがよいと思っている人が多いみたいね」という発表なのだ。

同じひとつの調査で、こうも発表内容が違うとは、本当に驚いた!

ちょっと前には処理水非難の大キャンペーンだったのに・・

8月末には、私は次のような投稿をしていたのに。
新華社が、「福島第一の処理水で世界の海が汚染されて、世界中が反対の声をあげている」とする、AI生成のおどろおどろしい動画を拡散させていた話だ。

あれから一ヶ月半しか経っていないのに、中国は、今度は、こんな世論調査結果を発表するとは。

きわめて政治的な匂いがするし、そういう意味では日本もそうなのかもしれない?私には分からない。謎だ。

それぞれが独自の分析?

まさか中国側が嘘の数字を言っていることは、あるまい。あったら大変なことで、すぐに共同で調査した日本側から抗議の声があがるだろう。

では、本当の数字だとしたら、この世論調査は、そもそも質問項目がたくさんあり、日中は、それぞれ項目を恣意的に選んで分析して、伝えるべきメッセージを決めて発表しているのだろうか?

確かに中国では、これまでも、「今年は関係改善の年」「今は、反日を叫ぶべき時」などと、お上が方針を実質的に決めて、それを民が汲み取る、というのをいつも感じてきたけれど・・・

メディアで「切り口」が違う?

でも、日本でも、よく見ると、
FNNは、「処理水問題”日中関係の障害” 中国では5.8%」とタイトルを打っている。「実は中国人は、処理水問題は全然気にしてないみたいですよ」というメッセージを伝えたいように感じる。このトーンは、冒頭で書いた各新聞社などの切り口と異なる。

ううむ。ますます分からなくなってきた。

どういう切り口で取り上げるかは各メディアに任されているのか。日本側主催者のNPOの分析なども伝えられてはいるが、一体どういう形式で発表されているのだろう。そして日本側と中国側とのすり合わせは、どうなっているのだろう。

事情を知らない私には「?」ばかりが並んでしまう。今度このNPOに聞いてみようと思う。

これから世論調査を見る時は

ただ、一つだけ、今でも言えると思ったこと。
「今後、世論調査の数字を見たら、すぐに飛びついて何かを決めつける前に、どういう”切り口”のメッセージなのかを考えねば。他のメディアや他の国はどう伝えているのかを見比べてから、消化しないと」ということだ。

「やっぱり○○国は、○○だ」「やっぱりメディアは○○だ」などと、十把一絡にしたステレオタイプで、単純に溜飲を下げたり、「いや、数字自体がインチキのはず」などと、自分の考えとの整合性を取るために、わかりやすい言説で全部拒否したりするのではなく、色々じっくり見比べてみると、これまで気が付かなかった、何か面白いものが見えてくるような気がする。

世論調査は、自分の考え方の正しさの確認のために使うのではなくて、意外な数字から、問題解決の切り口がないかという視点で見つめたほうが、よっぽど意味がある。

最初に紹介したニュースでも、私が気になったのは、日本人の多くが中国をネガティブに見ていることよりも、日本をネガティブに見る中国人の割合が、日本に比べてかなり少なかったことだ。

この数字が正しく実態を反映していると信じるならば、例えば、ここから、問題解決のカギが見つかる気がするのだ。現に私の知る中国人は、政権の言うことをそのまま唱える人なんていないし。

色々ある材料から自分の考えを組み立てるのではなく、逆に、凝り固まった自分の考えに合う材料を探して溜飲を下げるのが好きな人が少しでも減ってほしいと思う。

それこそが、今の乱れた世界を少しでも平和にすることにつながる気がする、、のは、私だけだろうか。

また調べて分かったことがあれば、この続編を書いてみようと思う。

調査対象の選び方は、それぞれどうしているのか、なるべく平均値を反映させるためにどういうやり方をしているのか、など、調査手法も知ってみたいし。


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今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
AJ😀

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