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絵本 de 昔話『猿と蟇との餅競走』

作画:茜町春彦
原作:柳田国男


昔、ある所の山の中で猿とヒキガエルが出逢ったそうであります.

丁度お正月も近くなって里では、そちこちに餅をつく威勢のよい杵の音がしていました.


なんと蟇どん、あの餅をひと臼取ってきて食べる工夫はあるまいかと猿が言いました.

そこで山の中で相談をきめて・・・


・・・2人はそろそろと里に下りて行きました.


最初には先ず猿が庄屋様の背戸に来て隠れていると・・・


・・・後から蟇が忍んで来て、庭の泉の中へドブンと大きな音をさせて飛び込みました.


餅を搗いている若い人たちは、その音を聞いて、これは大変だ.うちの坊ちゃんが池へ落ちたようだと言って、臼も餅もほったらかして置いて、残らず水のそばへ駆けて行きました.


その隙に・・・


・・・猿はウマウマと餅の臼を抱えて山の上まで運んで来ました.


蟇も、その後からノソノソと戻って来ました.


なんと蟇どん、お前と2人で、この餅を分けて食うよりも、いっその事、臼のままで、ここから転がして早く追いついた方が、まるごと食う事にしてはどうかと猿が言いました.

蟇蛙は足がノロイから損だとは思いましたが、それでも承知をして・・・


・・・1,2,3の掛け声と共にゴロゴロと餅の臼を谷底に突き落としました.


足の達者な猿は直ぐに、その後から飛んで下ります.


蟇は足が遅いので仕方なしにノタリノタリと山を下って行きますと・・・


・・・運の好いこともあったもので、餅はいつの間にか臼の中から抜け出して道のはたの萩の枝にダラリと引懸っていました.


これは有り難しと早速その餅の傍に坐り込んで蟇は1人でユルユルと食べていました.


そうすると空臼を追っかけて無駄足をした猿が・・・


・・・ガッカリして又登ってきました.


蟇どん蟇どん、こっちの方から先に食ってはどうかねと、見物をしていた猿が言いました.


なあにコリャ俺の餅だ.俺が好きな方から食おうよと、蟇蛙は答えました.
(越後)


参考文献:日本の昔話(2006年10月25日36刷 柳田国男著 新潮文庫)
使用画材:ArtRage 3 Studio Pro(アンビエント社)Photoshop Elements 10(アドビシステムズ株式会社)
初出:パブー(2014年1月28日)
パブー投稿作品を修正して移植しました.

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