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「オウンドメディアですか?」と聞かれたときに答える"ことわざ"があるのだけれど

2022年8月10日にウェブメディアOTEMOTO[オ・テモト]を創刊して、早いもので半年が経ちました。日々、取材して記事を書くことに精いっぱいで、半年ぶりのnoteになります。

このたびOTEMOTOの記事、「出生数80万人割れの衝撃。地方の少子化対策はここがズレている」が、Internet Media AWARDS 2023のテキスト・コンテンツ部門を受賞いたしました。

Internet Media AWARDSとは、信頼性のある情報をわかりやすく世の中に伝え、社会をよりよい方向に導いたコンテンツやメディアを讃えるため、一般社団法人インターネットメディア協会が2021年から開催しています。

インターネット上に数多あるコンテンツの中から選んでいただいたことに感謝するとともに、この記事が多くの方に読まれ、議論を呼び、拡散され、OTEMOTOを知っていただいたことをうれしく思います。

ランドセルをつくる会社だから

新聞記者だった頃からずっと追いかけてきたジェンダーのテーマに加え、少子化に焦点をあてた理由は、2022年の出生数が80万人を下回る見通しだという報道があったこと。それともう一つあります。

OTEMOTOの運営会社である株式会社ハリズリーは、老舗革製品ブランドである土屋鞄製造所の親会社です。今まさに「ラン活」で話題の土屋鞄のランドセルは、職人がひとつひとつ丁寧につくっています。細部にこだわった丈夫なつくりと洗練されたデザインが特長で、創業者の土屋國男は2022年度の「現代の名工」に「革ランドセル製造工」として選ばれました。

最近はランドセル以外にもさまざまな鞄が出てきていますが、そもそも子どもの数が減っているのです。子どもの健やかな成長を願って真剣にランドセルをつくっている人の近くで働いているがゆえに、少子化について俯瞰した問題提起の必要性を感じていました。

風が吹けば桶屋がもうかる

OTEMOTOは、「人もモノも大切にされる社会」「自分らしさを自由に表現できる社会」をめざし、ものづくりや社会課題に関する取材を続けています。

例えば、親が子どもの頃からあった学校のルールは、子どもたちの負担になっていないか。働き方は時代に変化に合っているか。不要になっても捨てずに済む、モノとの付き合い方はないか。好きなことを好きだと言えずに苦しんでいる人はいないか。

OTEMOTOが発信するテーマはほとんど、ハリズリーグループの課題感、そして各ブランドの取り組みとリンクしています。

ジェンダーフリーのシリーズを届け、東京レインボープライドにも協賛している「BIZOUX」、環境負荷と労働環境に考慮した海底ダイヤモンドを日本のブランドで初めて取り扱う「BRILLIANCE+」、キノコ菌糸体由来のレザー代替素材「Mylo™(マイロ)」で商品を開発した土屋鞄とobjects.io、子ども自身の選択を尊重して約40色のランドセルを展開する土屋鞄……。

新しい商品を出すだけでなく、職人の修理の技術によって愛着のあるモノをよみがえらせるなど、ものづくりを通してサステナビリティや多様性を追求しています。

OTEMOTOでもグループブランドのこうした取り組み自体を発信していると思われていたり、「オウンドメディアなんですか?」と聞かれたりすることがよくあります。

創刊時のnoteにも書きましたが、土屋成範社長はじめ経営陣からは編集権を一任してもらっています。各種プラットフォームに記事を配信し、他社クライアントのタイアップ広告もつくっています。グループブランドの紹介記事は、広告扱いにさせてもらっています。

このように読者にわかりやすく整理できていれば、正直なところ定義や呼び方はどうでもいいかな…と、聞かれても曖昧に流しています。オウンドメディアであってもそうでないメディアであっても、取材先や読者と真摯に向き合って、丁寧に記事をつくり届ける姿勢に変わりはないからです。

採用面接や企業との打ち合わせでより詳しく聞かれたときには、

「『風が吹けば桶屋がもうかる』って感じの関わり方です。風を吹かせるために記事を発信しています」

とお伝えしています(厳密にはことわざの由来とは異なるポジティブな意味ですが)。

ですが、実際はどうでしょう。ブランドから学ぶことのほうが多いのです。

例えば、記事で「多様な選択を」と書くことがよくありますが、実際に人々が多様な選択をするためには、それだけさまざまな商品やサービスが揃っていなければなりません。多く売れるわけではないけれど誰かにとっては大切なものになるだろうと思われる商品も、つくっておく必要があるのです。企業が「多様な選択」という言葉を使うときにいかに努力や覚悟が必要かというのは、ものづくりの現場を見て初めて実感できたことです。

先日グループ内のあるブランドの担当者たちと話していたとき、こんな想いを聞きました。「多様な選択」をしてもらうための商品づくりについてです。

最初は売上が上がらなかったとしても、きっと、何かの続きになる。
社会がこうなったらいいな、と思いながらつくっているので、基本的には揺るがない。
それに、社会に求められている「気配」がするから。

めちゃくちゃカッコよくないですか。

桶屋がもうかれば、風が吹く

もしかしたらこっちなのかもしれない、と感じました。

私は、社会課題とビジネスの接点に関心をもち、さまさまな矛盾に向き合いつつも情報を生み出すことに挑戦したい、とOTEMOTOを創刊しました。

これまで経験してきたのは4社と4媒体。毎日新聞では「取材力」を、週刊誌AERAでは「企画力」を、BuzzFeed Japanでは「届ける力」を、そして今は「実行力」、つまり社会を変える力のあるものづくりを学ばせてもらっています。

Internet Media AWARDS 2023では、選考委員の干場弓子さんから、とてもうれしい講評をいただきました。

「社会派インターネットメディアとしてのオウンドメディアの可能性を拓いてくれた」

改めて、「いつも視点は、手もとから」をモットーに、スマホから読みやすくわかりやすい記事を通して、30年後、50年後により暮らしやすい社会にするための情報をお届けしていきたいと思います。


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