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【半自伝】物語という名のライフストーリー

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過去と現在と未来も、物語も人生もライフストーリーも、実は一緒なのでは、というところから書き始めたシリーズ。【side A】わたしの話、【side B】彼、或いは彼女の話、【sid… もっと読む
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2016年6月の記事一覧

【side C】許すことも、許されることも、私たちに最初から与えられたものなんだろう

【side C】許すことも、許されることも、私たちに最初から与えられたものなんだろう

死ぬまで墓場に持っていく話を、これ以上、もう持てないというところまで持ったら、本当に死ぬしかない。

私が親に言ったのはそういうことだった。

加計呂麻島に住んで四年目になる。ちょくちょく、東京に行く。この数年間、毎回、東京に行く度に気が重かった。

虫の知らせとはよく言ったもので、この時期に東京に行かなければ行けない気がする、と思い、チケットを取ったはいいが、自分でチケットを取りながらもどうして

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【side B】わかり過ぎて読めない言葉の代わりに

【side B】わかり過ぎて読めない言葉の代わりに

「19年ぶりに日本語を読みました」

Facebookのメッセンジャーに、メッセージが届いた。

メッセージの送り主は、私のWebでの文章を読んでくれたイギリス在住の人だった。

丁寧な感想を頂き、出版している2冊の本が電子書籍化していないかどうかを聞かれた。私の本は残念ながら電子書籍化していない。その旨と、現在もweb上で読める過去の連載や単発コラムのURLを伝えた。もっとあなたの文章を読みたい

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【side A】子どもたちに内包された完璧なもの

【side A】子どもたちに内包された完璧なもの

幼い頃から完璧な世界があると私は信じていた。

絵を描いている友人が言った。

「幼い頃からおままごとやお人形遊びで友達とみんなで遊ぶより、絵を描いている方が好きだった。そっちの方が完璧に、好きに、自分の世界の中で遊べるから」

私も、その気持ちはよくわかる。

小学校低学年の頃。放課後、近所に住む子ども達と公園にいた時のことだ。私は、砂場の縁に腰をかけて本を読んでいた。一緒にいる子どもが「あきこ

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【side C】私達は、水の星にいる

【side C】私達は、水の星にいる

「あの子は、小説家になるのかもしれないわね」

小学校六年生の時に、私は父親の再婚相手の母親にそう言われていたそうだ。

「あんた、全部わかっているのに、なんでここに来るの?」

小説のデビューの話が一度流れて悩んでいた時に相談しにいった占星術師は、開口一番、お客さんである私にそう言った。

「実は、本当は小説家になりたかった」

私が生まれる前に他界した祖父が残した講演集やインタビュー集には、そ

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【side B】人は馬鹿をやるために生まれてきたのかもしれない。或いは、それもノブレス・オブリージュ

【side B】人は馬鹿をやるために生まれてきたのかもしれない。或いは、それもノブレス・オブリージュ

頭が良く、人当たりが良く、ある種、人をコントロールできることを自覚していて、そのくせコントロールできる自分を憎んでいる。そんな男は、時にすさんでいる方が魅力を発揮する。持て余した自分に対して、冷酷になれるからかもしれない。彼は当時22歳。かわいらしい顔立ちで、けして老けて見えるタイプではないというのに、私は彼を老獪だと思った。きっと、見たくもないものをたくさん見てきたんだろう、と。

出会ってすぐ

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【side A】天使も馬もマリアさまも嫌だった、あの子がしてきた大冒険

【side A】天使も馬もマリアさまも嫌だった、あの子がしてきた大冒険

幼い頃から、幼稚園も学校も、嫌いでしょうがなかった。母に聞くと、幼稚園に入園する際から、「この子は普通の子じゃないから、公立じゃなく私立じゃなきゃ駄目だと思った」という。母の予感通り、私は幼稚園の入園式の日、何度も「トイレ」と言っては母を呼び、離れようとしなかったそうだ。

私が通っていた幼稚園はキリスト教系のところで、図書室が礼拝堂と離れにあった。私の一番最初の明確な記憶は、その離れにあった図書

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【半自伝・まえがき】運転ができない、あの子のドライブ

【半自伝・まえがき】運転ができない、あの子のドライブ

数年前に書いた原稿は、今はもうあっという間に色褪せて、何かしら公開するなら、すべて読み直して書き直すだろうと思っていた。完成している小説もあれば、断片的なストーリーもあり、それらのすべては物語であり、ライフストーリーだ。

2冊の本を出版して、よく聞かれることがある。

「これはフィクションですか? ノンフィクションですか?」

「実際に経験したことをモデルにしたところもあるけれど、物語として整理

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