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三谷 晶子
2016年6月30日 20:55
死ぬまで墓場に持っていく話を、これ以上、もう持てないというところまで持ったら、本当に死ぬしかない。私が親に言ったのはそういうことだった。加計呂麻島に住んで四年目になる。ちょくちょく、東京に行く。この数年間、毎回、東京に行く度に気が重かった。虫の知らせとはよく言ったもので、この時期に東京に行かなければ行けない気がする、と思い、チケットを取ったはいいが、自分でチケットを取りながらもどうして
2016年6月22日 00:03
「19年ぶりに日本語を読みました」Facebookのメッセンジャーに、メッセージが届いた。メッセージの送り主は、私のWebでの文章を読んでくれたイギリス在住の人だった。丁寧な感想を頂き、出版している2冊の本が電子書籍化していないかどうかを聞かれた。私の本は残念ながら電子書籍化していない。その旨と、現在もweb上で読める過去の連載や単発コラムのURLを伝えた。もっとあなたの文章を読みたい
2016年6月20日 23:29
幼い頃から完璧な世界があると私は信じていた。絵を描いている友人が言った。「幼い頃からおままごとやお人形遊びで友達とみんなで遊ぶより、絵を描いている方が好きだった。そっちの方が完璧に、好きに、自分の世界の中で遊べるから」私も、その気持ちはよくわかる。小学校低学年の頃。放課後、近所に住む子ども達と公園にいた時のことだ。私は、砂場の縁に腰をかけて本を読んでいた。一緒にいる子どもが「あきこ
2016年6月15日 21:13
「あの子は、小説家になるのかもしれないわね」小学校六年生の時に、私は父親の再婚相手の母親にそう言われていたそうだ。「あんた、全部わかっているのに、なんでここに来るの?」小説のデビューの話が一度流れて悩んでいた時に相談しにいった占星術師は、開口一番、お客さんである私にそう言った。「実は、本当は小説家になりたかった」私が生まれる前に他界した祖父が残した講演集やインタビュー集には、そ
2016年6月14日 23:13
頭が良く、人当たりが良く、ある種、人をコントロールできることを自覚していて、そのくせコントロールできる自分を憎んでいる。そんな男は、時にすさんでいる方が魅力を発揮する。持て余した自分に対して、冷酷になれるからかもしれない。彼は当時22歳。かわいらしい顔立ちで、けして老けて見えるタイプではないというのに、私は彼を老獪だと思った。きっと、見たくもないものをたくさん見てきたんだろう、と。出会ってすぐ
2016年6月13日 17:01
幼い頃から、幼稚園も学校も、嫌いでしょうがなかった。母に聞くと、幼稚園に入園する際から、「この子は普通の子じゃないから、公立じゃなく私立じゃなきゃ駄目だと思った」という。母の予感通り、私は幼稚園の入園式の日、何度も「トイレ」と言っては母を呼び、離れようとしなかったそうだ。私が通っていた幼稚園はキリスト教系のところで、図書室が礼拝堂と離れにあった。私の一番最初の明確な記憶は、その離れにあった図書
2016年6月13日 12:16
数年前に書いた原稿は、今はもうあっという間に色褪せて、何かしら公開するなら、すべて読み直して書き直すだろうと思っていた。完成している小説もあれば、断片的なストーリーもあり、それらのすべては物語であり、ライフストーリーだ。2冊の本を出版して、よく聞かれることがある。「これはフィクションですか? ノンフィクションですか?」「実際に経験したことをモデルにしたところもあるけれど、物語として整理