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すいませ~ん、akimaですけど、(ファクトシート作成)ま~だ時間かかりそうですかね~?←約1年半かかりました

●はじめに

2023年7月上旬現在、男性のHPVワクチン定期接種化の議論が進行中です。

次のステップに進むためには、厚労省が国立感染症研究所に作成を依頼したファクトシートが必要です。

しかし、今のところ男性のHPVワクチン定期接種化に必要な「国立感染症研究所の名義で作成した」ファクトシートが確認できていません。(もしあったら教えてください)

そんなわけで、厚労省での検討状況などを追いかけながら、男性のHPVワクチン定期接種化あくしろよ、という記事になります。

●2022年8月の状況

令和4(2022)年8月4日開催
第19回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会 資料

議事録

○井本評価分析専門官
なお、HPVワクチンにつきましては、ほかのワクチンと異なりまして、がん予防という観点が大きいものでございます。その点を考慮し、可能であれば、国立がん研究センターなどの御協力も得つつファクトシートを作成いただくことを御提案申し上げたいと存じます。厚労省としては、国立感染症研究所は、現在、コロナウイルス感染症対策の対応等で、過去にファクトシートの御作成を依頼したときよりも業務負荷が大きいと考えております。その負担軽減を図る意味で、通常は6か月程度としておりますファクトシート作成期間の目安につきましては、厳密にその期限を設定することとせず、おおむね今年度中をめどにという形で御作成いただくこととしてはどうかということも、御了承いただければ幸いでございます。

○神谷委員 ファクトシートをつくるということで、コメントがしづらいなと思って伺っていたのですけれども、いろいろ時期についても御考慮いただいたのですけれども、年度末でも、6か月から7か月に延びるだけであまり変わらないのです。

○氏家委員
今後のことを見据えれば、国際的なトレンドにキャッチアップをしていくという観点では、9価を使った評価も当然必要になってこようかと思います。また、作成するのはファクトシートですので客観的なデータであれば国内承認の有無に関わらず男性への評価に9価が入っていても問題はないとは思うのですけれども、評価の中心としては、日本の現状の制度の位置づけがメインになってくるかと、個人的には、考えました。

○鈴木委員長
感染研でのファクトシートの作成をお願いしますといいますか、私も感染研の立場ですけれども、進めていくということでいきたいと思います。
 ただ、事務局からも御説明いただきましたように、通常は6か月程度となっておりますが、作成の期間については御配慮いただきたいということで、よろしくお願いいたします。

去年の8月時点で、審議会でファクトシート作成の依頼を了承しているので、依頼をしているものと考えます。

議事録から読み取れる雰囲気を筆者なりに解釈すると、
「ファクトシートの作成期間は通常は6ヶ月程度であるが、感染症研究所が忙しいことと、男性の薬事承認がある4価ワクチンと薬事承認のない9価ワクチンそれぞれの内容を盛り込むとなると結構大変かもしれないので、時間がかかりそう」
だと思いました。

●2023年6月の状況

時は流れて、2023年6月2日に国立がん研究センターが「子宮頸がんとその他のヒトパピローマウイルス (HPV)関連がんの予防ファクトシート 2023」を公開しました。

この資料の「7章 日本で今後必要な方策」の中に「HPVワクチンの対象(男性接種、対象年齢)についての検討」が盛り込まれており、やはり男性への定期接種化が期待されます。

世界保健機関(World Health Organization:WHO)は子宮頸がん対策として9歳~14歳女性をHPVワクチンの接種対象とすることを推奨しているが、アメリカ、オーストラリア、カナダ、ノルウェーなどは、男性も対象に含めHPVワクチンの定期接種を実施している(3.5参照)。男性においてHPV感染を予防することで、集団免疫による女性のHPV感染の予防だけではなく、男性におけるHPV感染および、HPV感染に起因する中咽頭がんなど(1.2参照)の予防にもつながると考えられている18-20)(3.2参照)。日本でも男性の定期接種化については、2022年8月4日のワクチン評価に関する小委員会において今後検討していくことが提案されている21)。こうした議論に資する科学的証拠のまとめ、日本における導入の効果や費用の推計に関するデータを海外のデータと併せて蓄積していく必要がある。

●2023年8月の状況(8/24追記)

厚生科学審議会 (予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会)

(1)5種混合ワクチンについて
(2)小児に対する肺炎球菌ワクチンについて
(3)その他

2023月8月29日開催の審議会では、HPVワクチンの男子接種については含まれていないようでした。

前回の審議会から1年以上経過していても前進する様子が見えてこないので、進捗が気になります。

2024年3月14日にファクトシート追補版公表(20240417追記)

資料

ファクトシート追補版

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001224778.pdf

議事録

●おわりに

なるべく早期にファクトシートが完成し、審議会で今年度の秋くらいまでに議論の結論を得て自治体の準備開始、来年度にはスタートするくらいの流れであれば理想だと思いますが、果たしてどうなるか。

さらに理想を言うと、4価ワクチンの接種回数も同時に議論されて4価9価で2回接種運用が認められ、ついでに9価ワクチンの男性適応も認められて欲しい。
この場合、4価ワクチンの接種回数変更と9価ワクチンの男性適応追加の薬事承認がまず必要になります。

さらにさらに理想を言うと、現在定期接種の対象年齢が12~16歳相当となっているところを、4価ワクチンと9価ワクチンは9~14歳相当に引き下げて、男女ともに同じ条件で使えるようにして欲しい。
2価ワクチンは10歳からなので、10~14歳相当を定期接種の対象にするか、いっそのこと定期接種をやめて任意接種のみにしても良い。
この場合も、9価ワクチンの男性適応追加の薬事承認が必要になりますが、対象年齢の部分については、予防接種法の関連法令を整備するだけでいけると思います。
ただし、15歳16歳相当の2学年分のキャッチアップ接種を行いながら、9~11歳相当の3学年分を新規に行うことになるため、ワクチン供給体制や接種体制の確保などが課題となるでしょう。

ちなみに、2価ワクチンの男性適応については、尖圭コンジローマを予防できないことや、すでに2価の接種実績が少なく4価から9価へ移行しつつある状況を踏まえると、必要ないと考えます。

理想を図にするとこんな感じ。

図1
図2

諸外国では2回接種が主流となり1回接種も検討されている状況であり、当然この「理想図」が完成形ではありません。
その時に参照可能なエビデンスに基づいて、現実に採用できる範囲内で最も合理的な政策を目指して検討を進めてほしいと思います。

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