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HSPの気質が保育士として役立った瞬間②

こんにちは、元保育士ライターのあきです。
先日書いたHSPの気質と保育士という仕事について書いたnote、たくさんの方に読んでいただけて嬉しいです!
同じHSPの方はもちろん、保育士さんや幼稚園の先生、お父さんお母さんが子どもと接する時、「もしかして・・・?」と考えるヒントになっていたら、これほど嬉しいことはありません。

ということで、今回もHSPの気質と保育士という仕事について、書いてみたいと思います。

前回のnoteはこちらです。

服を着たくなくて泣き叫ぶ子とHSP保育士

「これ、やー!!!」と泣く子に困り果てる。
経験がある方、多いのではないでしょうか。
言葉がはっきり出ない、気持ちをうまく伝えられない時期の子どもにとって、泣くことが精一杯の意思表示。
それをなんとか汲んであげたいと思いつつ、「やー!!!」とだけ叫ばれても・・・と、途方に暮れますよね。

理由として考えられるのは

  1. 眠くてとにかく着替えがしたくない

  2. 大好きな服があって、そっちを着たい

  3. この服は色・模様・デザインが気に入らない

  4. この服を着ると痛い・痒い・落ち着かない

このあたりでしょうか。
1~3については、HSPの気質とは直接関係がないので、今回は割愛させていただいて、4について書きたいと思います。

敏感である、ということ

HSP気質の方であれば、「この服を着ると痛い・痒い・落ち着かない」という子どもの感覚が理解できると思います。
それがどれほどの苦痛であるか、どれだけ避けたいことであるのかも、分かっていただけるんじゃないでしょうか。

「ごわごわするのが嫌なのは分かるけど・・・そこまでのこと?」

これは大半の先生方の反応でした。
それはそれで仕方のないこと、というか、感覚が違うので理解してくれというのが難しいのも分かっています。
お父さんお母さんの中にも、お子さんとの感覚の違いで苦労されている方、いらっしゃいますね。

敏感である、というのは、それだけで結構生きづらいものです。
一般的には「ごわごわする」と表現される生地が、敏感な子どもにとっては「びりびり」「ぞりぞり」するほど痛みを感じるものかもしれません。
チクッとするくらいのタグが、敏感な子どもにとっては針で刺されたような痛みに感じられることもあります。

ちなみに、私はそこまで服の素材に敏感な方ではありません。
でも、服がほつれたりしてちょろっと出ている糸。
あれを引っ張った感触がとにかく苦手で、鳥肌が立って全身ぞわぞわするくらい嫌です。
タオル地でも、ほつれてくるとありますよね。
意識して引っ張ったりしませんが、たまに爪や金具に引っかかって、そのまま引っ張ってしまうことがあって・・・声にならない悲鳴をあげることになります。

とてつもなく嫌いな感触がある、と理解できる

私自身がHSPで、いろいろ敏感なところがあるので、敏感な子どもの気持ちを察することができるようになりました。
やりたくなくて泣いているのか、他に着たい服があって泣いているのか、素材が嫌で泣いているのか。
ちょっとした違いのように見えるかもしれません。
でも、子どもの成長を支える保育士としては、子どもが自分で自分の気持ちに折り合いをつける手助けも仕事の1つ。
だから子どもの状態によって、手助けの仕方を変えていく必要があるんですね。

まず、子どもの気持ちを見極めること。

これ、HSP気質の得意とするところです。

それに、敏感な子どもは他の面でも敏感さを見せているので、一緒に生活していると「あ、この子結構敏感だな」というのが分かってきます。
そのあたりも判断材料ですね。

敏感さを我慢させるとどうなるか

残念なことに、どれだけ泣いて嫌がっても嫌いな素材の服を着るしかない、という状況もあります。
嫌いな素材の服を着ていると、子どもはどうなるか。

  • ずっと泣いている

  • ずっと機嫌が悪い

  • ずっと落ち着かない

嫌いなものを我慢しているんですから、当たり前ですよね・・・
さらに残念なことに、こういう姿が続くとまた怒られてしまうんですよね・・・
「いつまで泣いてるの!」
「いい加減にしなさい!」
「ワガママ言わないの!」
怒りたくなる大人の気持ちも、分からないではないんですよ。
だって、大人も子どもがなんでそんな態度を続けるか分からないんですもん。
きっと理由が分かればなんとかできることもあるのに、理由が分からないからどうにもできない。
それはもどかしいし、イライラする状況です。

そして、嫌いなものを我慢させられている上に、怒られてしまう子ども・・・

誰も幸せにならない、解決にも繋がらない、辛い状況です。

言葉にできないから、態度で戦い続けた子

以前受け持っていた2歳クラスに、敏感な男の子がいました。
言葉がゆっくりで、言われていることは理解できるけど、自分のことを言葉にするのが難しい、という状態。
気が強くて、自尊心が高くて、言葉でダメなら態度で伝えてこようとする子でした。

言葉が出ない分、表情や身振り手振りで表現していたんですが、一番よく出てくるのが「泣く」。
とにかくよく泣く。
あんまりよく泣くから、周りの先生からちょっと手がかかる子だと思われていました。

その子がよく泣く場面が、着替えだったんですね。
特にジーンズ生地が苦手で、着替えがジーンズ生地だと分かった瞬間から泣く。
しくしく・・・ではなく、ぎゃーん!!!という勢いで泣く。
全身で「それ、いやー!!!」と訴えていました。
言葉で説明できないから、もう、とにかく泣き叫ぶ、服を放り投げる、着替えさせようとする先生を押しのける・・・頑張って戦ってました、彼。

恐らく生地が嫌なんだろうな、と感じたので、着替えを手伝う機会があった時、彼が泣き出す前に聞いてみることにしました。
「この服、好きじゃないの?」
「(うなずく)」
「触るの、嫌?」
「(うなずく)」
「他のズボンがないか、見てみようか?」
「!(うなずく)」
幸い、着替えのストックに柔らかい生地のズボンがあったので、それを持っていくとさっと自分で着替えていました。
「このズボン嫌って、ママにお話ししようか?」
「(数回うなずく)」

このやりとりだけだと、この子が敏感なのか、ただそのズボンが嫌だったのか、判断が難しいところです。
その子は、ジャンバーを着るのも嫌がって泣き叫んでいました。
他の先生とその子のやりとりを何回か見ていて、これはジッパーの感触が嫌なんじゃないかな、と。
当時の先生、ジャンバーのボタンやジッパーは一番上まで上げさせてたんですね。
そうすると、顎の下にジッパーが来て動けば顎が擦れるんです。
これは嫌だろうと。

「(すでに泣いている)」
「着たくないの?」
「(うなずく)」
「チクチク、嫌?」
「(うなずく)」
「じゃあ、チクチクしないようにしてあげるよ。1回着てみて、それでも嫌だったら脱いでいいよ。」
「(泣きながら沈黙)」
「ね?やってみようよ。お外寒いよ?寒いの好きじゃないよね。チクチクさせないから、ね?」
「(泣きながら、小さく頷く)」

実際はこんな簡単な交渉ではありません、5分以上なだめすかして「とにかく試してみてよ~!」ってお願いしていました(笑)
なんとか着てくれることになったので、ジャンパーを着せて、ジッパーを胸の中程まで上げて止めてみました。

「チクチクしないでしょ?これならいい?」
「(うなずく)」
・・・というやりとりをひたすらひたすら繰り返し、この子に「チクチクさせない先生」認定してもらいました。
それ以降、私と着替えをする時は泣く回数が激減。
嫌な素材があると、顔をしかめて首を振る、という表現で伝えてくれるようになりました。

この子が一番大好きで、よく甘える先生は別にいたんですね。
それでも、着替えに関しては私を頼ってくれることが多かったのが嬉しかったです。

敏感さとワガママは別です

「この服を着たくない」
そう子どもが主張すると、それをワガママだと受け取る人がいます。
HSP気質から見ると、ワガママではなく切実な訴えだったりするのですが、感覚の違いというのは本当に難しい。

じゃあ、HSPでなければ子どもの敏感さを理解できないのか?

そんなことはありません。
観察していれば気づけます。

その子が「着たくない」と主張する服の種類、素材を観察してみてください。
固い素材、ちくちくした素材など、刺激を感じる素材ばかりを嫌がるのであれば、その子は敏感である可能性が高いです。
ワガママで「着たくない」と言っているわけではないので、違う素材の服に変えてあげてください。

さきほども少し書きましたが、行動が落ち着かない子がどうして落ち着かないのか。
理由を調べてみたら、敏感さが理由だった、ということもあるんです。
敏感である、ということは、当人にとってかなり負担がかかっているということを、ぜひ知っていただければと思います。

感覚の違いを理解するのは本当に難しいです。
私も、HSPではない人の感覚は想像するしかないので、理解はできないでしょう。
理解はできなくても、自分とは違う感覚の人がいるんだって知っているだけで変わると思うので、いろいろな場面で意識するようにしてはいます。
これも「多様性」ですよね。

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