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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:風響の守護者と見習い賢者の妹 第三十三話 心配性のレオポルトと毒される仲間達

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前話

「うー。おいしいー。生の魚食べたのはじめてー」
 リリアーナがそう反応する。セイレンはいつも食べてました、という具合に普通に食べている。
「セイレンは食べ慣れているな」
 レオポルトはそう見る。
「刺身はお祝い事に食べていましたから」
「へぇー。坊ちゃん。名前はなんと言うんだ?」
 ニコの知り合いだと言う、宿主で船長のセイロン・ストームライダーが言う。流石ニコの知り合いらしい情報通だった。当然、レオポルトの身分もバレている。名前がそのまんまで来ているのだから当たり前だ。そしてセイレンの事も聞きかじっているらしい。恐ろしい船長に出会った物だ。
「お兄ちゃん。手が止まっているよ。リリアーナが食べちゃうよ?」
「そ、そうか。どうも生というのは……」
 言い訳がましく聞こえるだろうが、レオポルトの頭の中ではこれからの段取りの事で一杯だった。食事所ではない。
「レオ。食事の時ぐらい考え事やめたら?」
「まぁ。そうなんだが……」
 苦労性の性格のレオポルトである。だからこそ、ニコもカールもレオポルトを支えてきた。構ってしまいたくなるような王なのだ。資質は十分にあるのにさらに上を行こうとああだこうだと泥沼にはまっている。そんなレオポルトを見るとユレーネも胸がきゅっと痛む。
 
 そんなに頑張らなくても良いのよ。そう言って抱きしめたい。だが、今回は重大な任務の旅。軽々しく甘い世界に浸ってるわけにはいかない。
「ありがとな」
 レオポルトの手がユレーネの手に重ねられていた。
「ユレーネにまで心配させたな。よし、ここからここまでの魚は俺が食う!」
「おにーちゃん。ずるい! こっからここまでは私の魚よ!」
「兄妹でとりあってれば、ひとまず安心だな」
 ニコが言ってローレライも肯く。
「そう?」
「そうよ。一番近い場所にいるあなたが気づけないなら相当やっかいな王様ね」
「あ。それは言えてるわ。やっかいったらありゃしないんだから」
「なんか俺の噂話か?」
「ううん。三人で話してただけよ。ほら。あの最後の一切れリリアーナが持っていったわよ」
「リリアーナ! それは兄ちゃんの魚だー」
「いつまでも食べないからダメなのよ」
 パクリ、とリリアーナの口に入る。
「ああ……」
 また雨に濡れた子犬状態だ。
「兄さん。僕のをあげるよ。この刺身は最後まで取っておくとすぐなくなるからね」
「そうなのか?」
「はい。この港町は美味しい魚で一杯なんですね。新鮮なまま運べれば多くの人が喜ぶだろうなー」
「それは言えてるな」
 ふむ、と考え始めたレオポルトにセイレンが正気に戻す。
「取られますよ!」
「あ。いけね。ふふん、このセイレンからの貢ぎ物は俺様の物だ」
 大きな口を開けて食べるレオポルトである。ユレーネはそんな夫が恥ずかしい。
「そんな子供っぽいことして……」
「いいんじゃない?」
 ローレライが言う。
「え?」
 ユレーネはローレライを見る。
「ニコから聞いた話だと、相当大変だったらしいから」
「そうね。それもそうね」
 はじめて出会ったレオポルトは青年らしい青年だった。だが、その青年の国は腐敗していた。それを無くそうとしたのが、ユレーネとレオポルトだった。あの頃は何も知らないままだった。
「ユレーネ?」
 ローレライが名を呼ぶ。
「大丈夫。夫の癖が移ったのよ」
「それなら良いけれど……」
「ちょっと! それおねーちゃんの範囲よ。ここからここまでは私の!」
 刺身争奪杯に参加するユレーネを見てニコが憂慮する。
「苦労性は夫婦間にもあるのか?」
「少なくともあなたと私の間にはないわね」
「それが救いだ」
 心配性の親友をセイロンが背中を叩く。大きな音に皆びっくりして見る。
「なんでもない。刺身争奪杯を続けてくれ。セイロンー痛すぎるだろうが」
「あの王様よりはいたかねーよ」
 セイロンの首に腕を掛けて遊んでいたニコが腕を外してすとん、と椅子に座る。
「ちょっと! ニコまで巻き込まれたの?」
「え?」
 ぼんやりとニコが婚約者を見る。
「もう! みんなして心配性なんだから」
 憮然としてニコの皿の料理を食べるローレライである。
「ローレライ! ローレライが壊れた。おのれ。レオ。刺身は全部俺のもんだー」
 苦節何年この人脈を作ったと思うのか。苦労性の王のためにすでにとっくに苦労性になっているニコである。レオは影響力が大きい。だからこそ、王なのだ。遠い国ではカリスマとか言うらしい。そんな事を思いながらセイロンが持ってくる皿ごと確保して四人に恨まれたニコだった。すでに出立はしているが、港町の活気に影響されて重要な旅というのは忘れ去っていた一行だった。
 
 飲めや歌えの宴会は夜遅くまで続いたのだった。


あとがき
今日はこれが限界でした。あと一時間は漢検のために取ってあるので。一話書くのに時間がかかりました。二千字近くになってしまい、今日もぎりぎりの戦いです。星彩はこれから書ければ朝に更新しますが、昼間か夕方に更新かもしれません。漢検もしないといけないので。来週には願書受付なので。時間が無いのです。両方するほうが間違いなんですけどね。それでも趣味は趣味。外せません。これでもITパスポート捨てたほどですし。今年版の本は買ってあってマーキングなどしてあるのに一週読めないでいます。って、今日の伝統の一戦。グールグルにキャストして見てるんですが、ホームランが。すげーや。あと一点差。阪神やばい。さて。予約配信して模擬試験しよう。少しでも頭に残っていればいいんだけど。ここまで読んで下さってありがとうございました。

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