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エッセイ 現状

トイレで、久々に見る飛びグモが現れた日の翌日は、「この日から気温が暖かくなる」と予報されていた日で、川沿いを歩けば急に虫たちが飛びだした。

人間がテクノロジーを駆使して知ることを、虫たちはその感覚で知っているのだから、人間の知性のなんたるかを考えてしまう。

この頃は少し忙しかったためか、心身ともに変化があって。
テレビやスマホの画面から出てくる言葉の私の体内への透過性が低くなっている。
胸の細胞膜が言葉の侵入を嫌がっている。

虫たちがじっと春を待っていたように、私もまたその時が来るのをじっと待つことにしよう。
きっと時が来ればまた、春の小川の様にさらさらと私の胸を言葉たちが通り抜けるだろう。