見出し画像

アメリカの大学で教えてみないか(1):日常生活について

ノート3日目。ここでがらっと内容が変わります。題して「アメリカの大学で教えてみないか」。

もともと大学で教えることになんて全然興味のなかった僕が、どういう経緯で今の仕事をしているのか、学問の「王道」から外れてても結構面白いよ、今はそんなこと考えてなくても何年かたったら全然予想外の仕事についてるなんてこともある、そんなこんなを何回かに分けて書いてみます。

読んでくれる人がいなかったらしょうがないです。枚数がまとまったら本になるかも知れないし。自分の今とこれまでと将来について書いておくのも悪くないし。でも本音を言えば、「そんなの興味ねーし」って思ってる若い人に読んで欲しいかも。もしこれ読んで興味が湧いたら、若い人に「こんなのあったよ」って教えてもらえると嬉しいです。

さて、初回は今の僕の「状況」から。

現在、僕は「ルイジアナ州立大学社会学部教授、学部長」です。なんだか偉そうです。実際は未だにちゃらんぽらんでいい加減なんですが、まずはどんな日常を送ってるか、簡単に書いておきます。

授業は火曜と木曜に1時間20分ずつ、つまり週に3時間弱です。それだけ。学部の秘書さんや同僚、院生、カレッジ(日本の学部に相当します)の人たちに会うのに月水金は1、2回、大学に行きますが、平均すると週に3、4日しか「出勤」しません。ちなみに日本でお馴染み、あの悪名高い「教授会」は1学期に2回、年に4回しかやりません。僕が自分で会議嫌いなので、学部長になった時に「会議あんまりやらないけど、いいよね〜」って宣言しました。もっともその前から会議は少なかったですけど。

もちろん、家にいるからと言っても遊んでいるわけではなく、犬の散歩や、料理や、ネットゲームや…、もとい、研究したり、論文を書いたり、メールを常時チェックしたりしてます。とはいえ、そんなのは全部自分の都合でどうにでもなるので、日本の大学の先生と比べるとはるかに「ラク」だとは思います。そう、キーワードは「ラク」です。申し訳ない。

ってのも僕の場合、「勉強が好き」で大学院に入ったわけではなく、「ラクな生活がしたい」と思って大学院に入ったからなんです。この辺は後から詳しく書こうと思ってます。別に大学の先生になるのは勉強や研究が好きなガリ勉タイプじゃなくてもいいやん、っていうのがこの連載のキモなもので。

さて、アメリカで研究を主にやっている大学の文系の先生の「授業のノルマ」は大体2クラス、1時間20分2回か50分3回のクラスを2つです(日本でいう4コマ)。これには確たる理由があって、100%「教育」に専念する先生は1学期に4クラス、つまり8コマ、あるいは年間8クラス、16コマ、というノルマになります。

ほとんどの大きな大学(なんとかカレッジじゃなくて、なんとかユニバーシティ)の場合、契約内容は研究50%、教育50%なので、1学期にクラスを2つ(4コマ)教えればいいことになります。2学期制なので、「2 and 2」って言うことがあります。週を40時間とすれば20時間は研究、20時間は教育、です。で、僕の場合、学部長なので、管理に必要な時間が10時間とされているので、20時間の教育ノルマの半分が免除されて1学期に教えるのは1クラス、ということになります。

さて、週に3、4日しか出勤しないだけでも「申し訳ない」んですが、大学の先生はお休みが長いのは日米共通。授業は試験期間を入れると16週間って決まってるので、2学期で32週間、ちょうど20週間、5ヶ月弱はお休みです。夏休みは3ヶ月半以上、冬休みが1ヶ月あります。まあこれは日本の大学の先生も同じらしいですが、休みの間に入試があったり教授会があったりで休みなのかそうじゃないのかわからないみたいですね。

アメリカの大学の先生ってのは研究費(グラント)を取っていたり、学部長などの役職についていない限り、休みの間は自由行動です。というのは教員の給与は年俸制、それも厳密に言うと9ヶ月間の労働に対して給料が支払われるから。なので、普通の教授は5月21日に春学期最後の給料が出てから9月21日まで4ヶ月間無給となります。僕も大学院を卒業して今の大学に就職して最初の給料が出るまでの間、本当にお金がなくなって、銀行の残高が確か30ドル(3000円)になりましたw。

逆に言うと、給料もらってないんだから夏の3ヶ月間は何をしてもいいことになります。一流の研究者はグラントを取る際に、秋学期、春学期の授業を買い取り、さらには自分の夏の間の給料を盛り込みます。夏の間は授業がないので、研究一筋に打ち込めるわけです。ただし、僕のような「ヘタレ研究者」は夏の間遊ぶ訳ですねw。

アメリカの大学の多くはSemester(2学期)制で、秋学期と春学期に分かれます。ただし、夏の間も授業が全くないわけではありません。Summer Termと呼ばれる「夏学期」もあり、毎年夏も大学に通えば3年で卒業することも不可能ではありません。クラスに需要があれば教えたい人が教え、その給与は年俸とは別に支払われます。ちなみに僕は「忙しいより貧乏な方がいい」ってんで夏学期に教えたことは一度もありません。2016年の秋学期、推薦されて学部長になった時も、「夏は仕事しないけど、それでもいい?」っていう条件つきでした。

だから本来なら給料が出ている5月から世界一周クルーズに乗ったりして「遊んでる」訳です。これはあとで書きますが、6月から8月までの1ヶ月半は毎年東京にいるので、「夏の間は働かない」というのは絶対条件だった訳です。

なんか長くなっちゃいました。初回としてはこんなものかな。

こんな話に付き合ってくれてどうもありがとう。よかったら続きも読んでね。

Coming up next: アメリカの大学で教えてみないか 2

人とは違う視点からの景色を提供できたら、って思ってます。