賀茂美則

賀茂美則。アメリカの田舎、ルイジアナの大学のせんせ。在米36年だけど、まだ日本人やって…

賀茂美則

賀茂美則。アメリカの田舎、ルイジアナの大学のせんせ。在米36年だけど、まだ日本人やってます。専攻は家族社会学。Noteではアメリカの大学で教えることやアメリカ生活を中心に書いていく予定。

最近の記事

西日本豪雨に際して(寄付について考える)

東日本大震災、熊本地震、九州豪雨に続いて今年は西日本豪雨災害です。何か支援したいと考える人は多いと思います。 でも、どういう形で支援をすれば災害にあった方々の助けになるのかってのは案外難しいです。具体的には「何を」「どこに」支援するかですね。 「何を」はまずお金、ついで品物、あるいは労働です。難しいのは「どこに」です。 以下、具体的に僕が今までどうやって支援してきたか書いてみます。 まず、2005年のハリケーンカトリナ。アメリカ在住の日本人被災者の支援をしたいっていう

    • アメリカの大学で教えてみないか(15):仕事と家庭の両立について

      仕事をしすぎると家庭生活がおろそかになります。今回はこの辺をどうやって両立させるかについて書いてみます。 ってのは、前々回書いた「変な院生」、もとい、「行動力のある」カナさんからのリクエストがあったし、家族社会学者としてはこの問題は書かない訳には行きませんよね。 大学院にいる間、そして教職についてからも、留学生もしくは海外出身の教員で、独身ならば(自分の拡大家族が身近にいないので)、「両立」問題はほぼ発生しません。ただし、結婚、あるいは子どもができるとこの問題は大きくのし

      • アメリカの大学で教えてみないか(14):娯楽について

        仕事の話もいいけど、今回は娯楽について書いてみます。自由な時間(結構いっぱいあるw)に何をしてるかって話ですね。 ご存知の方も多いと思いますが、アメリカでは車のライセンスプレートが州ごとに管理されてて、デザインや色も違います。ルイジアナのそれには「Sportsman's Paradise(スポーツマンのパラダイス)」って印刷してあります。ここからどんな「スポーツ」を連想します? テニスやゴルフやサッカーだと思ったら大間違い。ここで言うSportsman(男性名詞で申し訳な

        • アメリカの大学で教えてみないか(13):印象に残った同僚や学生の話

          今回は、これまでアメリカの大学で30年近く教えて来て、印象に残っている学生、院生、同僚たちについて書いてみます。 まずは二人の大学院生ですね。今は二人とも偉くなってます。どちらも僕の大学で博士号を取り、2年連続して隣の州のそこそこいい大学に助教授として赴任していきました。そこでどちらも優れた業績をあげたので、僕の大学に戻ってきました。 そのうちの一人、マークは大学院1年目に、統計のクラスで落第しました。これは教えてた教員も悪くて、クラスの半数以上が落第したほどです。大学院

        西日本豪雨に際して(寄付について考える)

        • アメリカの大学で教えてみないか(15):仕事と家庭の両立について

        • アメリカの大学で教えてみないか(14):娯楽について

        • アメリカの大学で教えてみないか(13):印象に残った同僚や学生の話

          アメリカの大学で教えてみないか(12):文系・理系、勝ち負けってなに?

          大学院留学、文系と理系ではどう違うの?学界における勝ち負けってなんだろう、というあたりの話を書いてみます。 ちゃらんぽらんな気持ちで半分以上辞めるつもりで入った総合商社をやっぱり13ヶ月で辞めて、シアトルの大学院に入学した話は以前しました。商社には13ヶ月しかいませんでしたが、朝から晩までしゃかりきに働きました。 サービス残業なんて馬鹿らしいので、最初の頃は残業を全部つけてたんですが、部長に「この本部で残業代を請求してるのは君だけだよ」って言われたので、それ以来、残業はし

          アメリカの大学で教えてみないか(12):文系・理系、勝ち負けってなに?

          アメリカの大学で教えてみないか(11):研究について

          大学院大学で教えてる以上、研究は必須。じゃあ、一体何をしてるかについて書いてみます。 これまで色々と書いてきましたが、僕の仕事、「大学のせんせ」につきものの「学術研究」については何も触れてません。さすがにこの辺で書いておかないとw。 所属は「社会学部」ですが、専門は「家族社会学」「比較社会学」「社会階層論」「老年学」「幸福論」くらいになります。 学部での卒業論文は「文化とパーソナリティ研究序説:家族における社会化を中心として」とかいう題でした。実は、すっかり忘れてた卒論

          アメリカの大学で教えてみないか(11):研究について

          アメリカの大学で教えてみないか(10):大学スポーツについて

          アメリカの大学ってスポーツが盛んです。これも友人からのリクエストで、今回は大学スポーツの位置づけや、選手の様子などを。 まずは見出し画像をご覧ください。大学フットボールの試合でのハーフタイムショウの様子です。LSUスタジアムの収容人員はなんと10万人。日本全国探しても、これだけ大きなスタジアムはありません。なのに、アメリカには10万人収容の大学スタジアムなんて掃いて捨てるほどあります。 フットボールが一番人気ですが、バスケット、野球、北の方ではアイスホッケーも人気がありま

          アメリカの大学で教えてみないか(10):大学スポーツについて

          アメリカの大学で教えてみないか(9):ハラスメントはあるの?

          アメリカの大学にアカハラ、パワハラ、モラハラ、セクハラはないの?これを読んでくれた友人からのリクエストにお答えして。 結論から言うと、セクハラ以外は案外少ないです。ビミョーな問題なので、表沙汰にはなりにくく、ゴシップにはあんまり興味がない僕が知らないだけかもですけど。 何よりも、周囲の監視が厳しいので、ハラスメントが起きた場合、すぐにバレるし、それ以前に抑止効果が大きいです。僕は学部長になる以前、学部の大学院ディレクターというのを9年に渡ってやってたんですが、そこで徹底し

          アメリカの大学で教えてみないか(9):ハラスメントはあるの?

          アメリカの大学で教えてみないか(8):劣等感について

          もともと海外に出ようって思ったのは「劣等感」が原因、っていうあたりの話をもう少し詳しく書いて見ます。 以前、僕が留学して大学の先生になるきっかけをくれた3人の先生の話を書きましたが、どうも何か、書き落してる気がします。3人の先生以前の話ですね。 前にも書きましたが、高校では英語なんて全く興味ありませんでした。「質実剛健」を売りにした高校にもイマイチ馴染めず、「麻雀部」。何が不満ってわけじゃないんですが、「何か違うぞ」っていう違和感。 その頃はわかってなかったんですが、あ

          アメリカの大学で教えてみないか(8):劣等感について

          アメリカの大学で教えてみないか(7):教え方やエピソード

          前回に続いて、380人の主に新入生向け、「社会学概論」の教え方や数あるエピソードからいくつか書いてみます。 まず、僕はシニアの教官なので、1年生向けの授業を担当する「必要」はありません。実際、来学期はこのクラスが時間を変えて9つ開講されますが、テニュアラインの教官(助教授、准教授、教授)は僕だけです。でも、ここ15年ほどは自分から進んでこのクラスを教えてます。 理由はいくつかあります。まず、高校を出てすぐの学生に大学に馴染んでもらえるように、できればベテランの教官が教えた

          アメリカの大学で教えてみないか(7):教え方やエピソード

          アメリカの大学で教えてみないか(6):授業について

          授業って一体なにをどうやってやるの?面白い逸話や日米の違いを表す出来事はあった?今日はこの辺について書いてみます。 ちょうど次男とそのGF、昔わが家にいた次男のわんこに会いにデンバーに来てます。見出し画像みたいな単純な光景の繰り返し。2日で20時間のドライブはさすがに疲れたので、投稿が遅れました。 僕の場合、授業は前に書いた通り、1学期に1つ、年間2つです。ここ何年かは秋学期に新入生向けの「社会学概論」、春学期に大学院初年度の必修講義、「重回帰分析」というレパートリーです

          アメリカの大学で教えてみないか(6):授業について

          アメリカの大学で教えてみないか(5):お金の話

          大学の先生ってお金なさそう... もっと豊かなでセレブな生活がしたい... そう思ってる人にこの仕事はやっぱり向いてないかも。今日はお金の話。 ズバリ、僕の子どもは二人とも「学者なんて絶対嫌だ」って思ってます。一人は医者になり、一人は外食産業で一発当てようとしてます。僕の家にお金がないのを見て育ったからねえw。 長男も次男も最初から州外の大学に行くなんてのは学費の問題で想定外。僕が教えてるLSUに州内生として行ったので、学費は無料。その後で医学部に行った長男は、僕が学費を

          アメリカの大学で教えてみないか(5):お金の話

          アメリカの大学で教えてみないか(4):英語ってどうやって習うの?

          そうは言っても留学するには英語が必要じゃない? そんな簡単に喋れるようになるわけじゃないでしょ? 今回は「英会話」に絞ってそんな疑問にお答えします。 まず最初に書いておきたいこと。 *中学生になってから英語を話し始めてもネイティブの発音にはなりません。 *ネイティブの発音かどうかなんて内容があれば誰も気にしません。 *会話も書いたものも内容が肝心。 例えば僕はアメリカに住んで36年ですが、未だに英語には訛りがあります。あとの回で詳しく書く予定の、学生による「教員評価」で

          アメリカの大学で教えてみないか(4):英語ってどうやって習うの?

          アメリカの大学で教えてみないか(3):競争について

          アメリカの教授職ってそんなにラクなの?って改めて聞かれると、まあ、競争もしっかりあります。大学院入学、博士号やらテニュア(終身雇用)やら、今回はそういった「関門」について書いてみます。 大学を卒業して最初から辞めるつもりの「確信犯」で総合商社に入って(当時は就職、簡単でした)、13ヶ月でやめてワシントン大学の社会学大学院に入学しました。 9月前後に新学期が始まる大学院に留学するには約1年前の9月くらいから準備を始める必要があります。大学卒業前にTOEFLは受け直してあった

          アメリカの大学で教えてみないか(3):競争について

          アメリカの大学で教えてみないか(2):影響を受けた3人の先生について

          今日は、一体全体どうしてアメリカの大学で教えてみようと思うようになったか、指針をくれた3人の「先生」について書いてみます。 僕の両親はともに高卒で、父方には僕より先に大学を出た親戚は多分いないし、母方には何歳か上のいとこが大卒でしたが、多分僕の世代が最初だったと思います。なので、まさか大学で教えるなんて発想は出なかったし、ましてや外国で、なんてもっての他です。大学もなんとなく入って、なんとなく就職する予定でしたが、3人の「先生」に会ったことで、コースが大きく変わりました。

          アメリカの大学で教えてみないか(2):影響を受けた3人の先生について

          アメリカの大学で教えてみないか(1):日常生活について

          ノート3日目。ここでがらっと内容が変わります。題して「アメリカの大学で教えてみないか」。 もともと大学で教えることになんて全然興味のなかった僕が、どういう経緯で今の仕事をしているのか、学問の「王道」から外れてても結構面白いよ、今はそんなこと考えてなくても何年かたったら全然予想外の仕事についてるなんてこともある、そんなこんなを何回かに分けて書いてみます。 読んでくれる人がいなかったらしょうがないです。枚数がまとまったら本になるかも知れないし。自分の今とこれまでと将来について

          アメリカの大学で教えてみないか(1):日常生活について