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読書まとめ『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』→頭が重くならない、心が軽くなる哲学

『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』原田まりる


一言でいうと

頭が重くならない、心が軽くなる哲学


概要

ニーチェを始めとした近代哲学者が、現代の京都に降臨して哲学を教えてくれるストーリーです。ニーチェの哲学に興味を持ち、『ツァラトゥストラ』に挫折し、またソフトな本に戻ってきました。

私は17歳でも女子高生でも京都人でもないですが、哲学の本として十分楽しめました。ニーチェをメインとして、19~20世紀の大陸哲学に触れることができます。ガールズバー経営者に憑依したサルトルなど、現代的な脚色はあるものの、哲学者の人となりをイメージしやすくはなりました。

ニーチェの思想は別の本でも学習・まとめているので、ニーチェ以外の哲学者の思想から、自分に響いたものを3つ紹介します。


① 後ろを向いて人生を理解し、前に進むのみ

キルケゴールの思想です。本書では「人生は後ろを向くことでしか理解できないが、前にしか進めない」と表現されています。

キルケゴールは「自由のめまい」を人生の苦悩のひとつとして説きました。人生には選択の自由があるが、自分が選ばなかった選択肢の方がよりよいかもしれない、という恐怖感も生み出します。また、到底手が届かないようなことではなく、自分の手が届きそうなことにこそ、手が届かなかったらどうしよう、と不安になるとも説いています。

不安が解消したら、また次の不安がやってきます。ショーペンハウアーは、「人生は苦悩と退屈の間を行ったり来たりする振り子のようなもの」と表現しました。不安=苦悩を取り去っても、人はその快適な環境に慣れて退屈し、いま手に入っていないものへの新たな欲求が芽生えます。そうしてまた苦悩し、不安になるのです。

こうした不安を乗り越えるには、不安と誠実に向き合うしかありません。過去や現在の不安を直視しないと、自分が本当にやりたいことを見失って、未来への行動もできなくなります。

ニーチェの「超人」の思想と重なるところもありますね。運命を恨んだり、他人を羨んだり、自分は不幸だと嘆いたりすることは、逃げの考え。不幸に依存して臆病になるのではなく、運命を受け容れて乗り越えていくのが「超人」です。


② 他人には到達しえない。愛しながら闘争する

前半はサルトル、後半はヤスパースの思想です。

サルトルは、他人と完全にわかりあうことはできない、と説きました。他人の気持ちになったつもりで考えよう、とよく言いますが、実際には我々は他人を対象化してモノとして見ているに過ぎません。逆に、自分が他人から見られると、自分がモノになります(他有化)。そして、社会で生活する以上、他人から見た自分像も、自分の一部として引き受ける必要があります。他人から見た自分像と、自分から見た自分像は、完全一致することはありませんよね。そのギャップがあるので他人と完全にわかりあうことはできず、サルトルは「他人は地獄」とまで言っています。

では他人を避けて生きればよいかというと、そんなことはありません。

後半に登場するヤスパースは、「愛しながらの闘争」が必要だと説きました。わかりあえない他人を避けるのではなく、自己開示をして他人とわかりあおうとする姿勢です。完全にはわかりあえない他人と、腹を割って本音をぶつけあう「実存的な交わり」を持つことが、人を孤独から救う道になります。


③ 先駆けて死を見据え、本来的に生きる

「死の哲学者」ハイデガーの思想です。

ハイデガーは、死をもって生を見つめることを説きました。死は誰にでも訪れることでありながら、普段はどこか他人事のように感じられるものです。死を自分事として直視しないと、自分の人生が他人事になってしまうおそれがあります。死を先駆けて見据える「先駆的決意」を持ち、本来的な時間の使い方・生き方をすることが重要です。

物事の終わりを意識する感覚の重要性は、直近の金融系の学習からも強く感じていました。ファイナンシャルプランナーでは生命保険や相続(人が死ぬ)、簿記では減価償却(モノが使えなくなる)や貸倒引当金(会社が倒産する)など、どんな物事にも終わりがあり、それに対処する方法を学びました。

もっと時間軸を縮めて考えると、今日は必ず終わるし、今月も必ず終わります。そのことを忘れず、後悔のないような本来的な時間の使い方を心がけたいと思いました。


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