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読書まとめ『超圧縮 地球生物全史』→生命が紡ぐ、絶滅と再生のストーリー

『超圧縮 地球生物全史』ヘンリー・ジー 著、竹内 薫 訳


一言で言うと

生命が紡ぐ、絶滅と再生のストーリー



概要

古生物にハマっていたときに見つけた本です。

1年近く前に図書館で予約して、
ようやく手元に届きました。

『リアルサイズ古生物図鑑』3冊を
読んでいた時期ですね。


38億年前の生命誕生から
ホモ・サピエンスが絶滅する未来まで、

圧倒的なスケール感で生命史が語られます。

この巨大なスケール感をたった1冊に
「超圧縮」しているところが本書の特徴です。


「超圧縮」した結果、
地球規模での環境変化や、
進化の大きな流れの説明がメイン

個々の生物の説明は少なめで、
消化不良に感じるところもありました。

本書で生命史の全体像を掴んで、
気になる時代・生物を見つけたら、
他の本やWebなどで深掘りする
のがよさそうです。


また、説明は淡々としており、
図版は生物の全身イメージ※だけ

生物学だけでなく、
地学・気候・化学の用語もバンバン出てきます。

理系全般の幅広い知識があれば、
より楽しめる
と思います。
(私は適度に読み飛ばした)

※翻訳者の提案で追加した
 日本版限定のオマケとのこと。
 これは神アプデ。


本稿では、本書からの気づきを3点共有します。



① ペルム紀末、リストロサウルスの大繁栄

ペルム紀末の大量絶滅のあとに
大繁栄したのが、リストロサウルス
です。

サウルスとつきますが、
恐竜ではなく、単弓類(哺乳類型爬虫類)です。

おかげで恐竜図鑑に載せてもらえないので、
一般的な知名度は低そうですね。


数百万年の間、陸上動物の9割をリストロサウルスが占めた
と言われています。

彼らは、穴を掘る習性と、
どこへでも行き何でも食べる姿勢で、
大量絶滅を生き延びて繁栄しました。


しかし、三畳紀初期の終わりには
あっさりと姿を消してしまう
ことに。

大量絶滅後の厳しい環境で、
捕食者となる肉食動物・競合する草食動物が
いなかったからこそ繁栄できた生物だった、
ということですね。


厳しい環境を生き残るには、
好き嫌いなくなんでもやる姿勢
が必要になります。

一方で、環境が落ち着いてきたら、
何か特化した能力
を持たなければ、
繁栄し続けるのは難しいと言えそうです。


② 「飛ばない鳥」は、珍しくない

「飛ばない鳥」といえば、
ペンギン、ダチョウ、ニワトリなどが思い浮かびますね。

わざわざ「飛ばない」と書いているとおり、
鳥は空を飛ぶことが当たり前だ
という文脈があります。


ところが、地球の生物史において、
「飛ばない鳥」は数多く存在したようです。


たしかに鳥類は空を飛ぶのに
適した身体構造を持っています。

それでも飛行には多大なエネルギーが必要なので、
飛ばなくていいなら飛びたくない、
というのが本音のようです。

https://twitter.com/gudetama_sanrio/status/1062082619976773632

そのため、地上に捕食者がいない孤島などでは、
飛ぶことをやめた鳥
が現れます。


そして、飛行能力を失った彼らは、
環境の変化に適応できずに絶滅しがち

たとえば、絶滅種ではドードーやオオウミガラス、
現生の絶滅危惧種では
ガラパゴスコバネウ、フクロウオウムなど。

一方、ペンギンは泳ぎを、ダチョウは走りを強化し、
ニワトリは家畜化されて人間と共生
することで、
「飛ばない鳥」として生き延びています。


外敵がいないからといって、
ぬくぬくしてたら滅びるぞ
ってことですね。

現代で「飛ばない鳥」が珍しいのは、
「飛ばない鳥」は滅びやすいからなのかもしれません。


③ 社会性超生物としての人間社会

アリやハチなどの社会性昆虫がつくるコロニーを、
本書では超生物と称していました。

コロニーの中の個体は、
警備・採餌・繁殖などの
特定の仕事に特化しています。

そして、個体が集まってできたコロニーは、
ひとつの生物のように振る舞うことがあります。

たとえば、赤収穫アリのコロニーは、
干ばつ時にはエサを集めるアリを
あまり外に出さないようにするなどの判断をして、
生存の可能性を高めているそうです。


これは、多細胞生物の細胞がそれぞれ決まった
役割を持っている
様子に似ています。

特定の器官に依存せずに分散処理を行っている、
植物のつくりとも共通点を感じますね。


人間社会でも、国際的な分業が進んでいます。

地球全域に広がる人間社会が、ひとつの超生物
なのだと考えることができますね。


超生物としての視点から見ると、
他の個体を攻撃したり、自個体の利益だけを追求したり、
社会の多様性を排除しようとしたりするのは、
自己破壊的な行動だとすら思えてきます。

社会が大きくなって分業が進めば進むほど、
個体は社会に依存し、
社会は個体に依存しなくなります。

個体の自己破壊的な行動が顕在化するのは、
個体の行動が社会に大きな影響を及ぼさないレベルにまで、
社会が大きくなったことの裏返しなのかもしれません。



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