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ポーク・リエットとセーグル・フィグ



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(これはセルフ祝いに飲んだビールです)


 恋人が30歳になったこの春、結婚した。お付き合い約3年半、同棲約2年という、同年代の中ではのんびりしたお付き合いで、この間にどんどん周りの友人達は結婚していった。

 とはいえ、そんなに焦りがあった訳でもなく、彼と出会った27歳の頃、立て続けの結婚第2ラッシュを終え、完全に私は燃え尽きていた。社会人になって、出会いがなかった訳ではない。合コンとか、街コンとかも参加したり企画したりしていたし、友人の結婚式もいくつか参加した。

 けれど、「適当」に付き合ったりできるほどに恋愛経験もなく、特にモテる訳でもなく、何が何でも30までに結婚したい!!みたいな欲もなかった私は、20代の花の数年間を趣味と仕事に奔走し、山でもおじさま達に可愛がられ、(24、5歳の頃なんて、同年代で山登りをしている人との出会いはなかった。。。)いつの間にかアラサーになった。

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 そんな時、ひょんなことから知り合った彼と最初に出会った店は、コアな国内外のクラフトビールを扱う店で、食べ物はナッツとポテチくらいしかなく、その日の2階席はシーンと静かで、1杯800円とかする名前も聞いたことがないビールを前に、私は完全にびびっていた。


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 けれど、その日はとても楽しくて、次のデートも、その次のデートも山盛りのよく知らないビールを飲むデートだったけれど、適度に酔っ払い、適度に心地いい時間を過ごし、そして、私達は恋人になった。
 当時は、自分でも27歳とは思えない浮かれっぷりだったと思うし、結局今でも、夫となった彼のことを、恋人としてすごく好きだなあと思っている。


 付き合って1年ほどたったころ、とあることから彼のネガティブ発言にイライラして喧嘩をしたことがある。

 鬱憤が溜まって既婚の友人に相談した私は、

「自分の父親になら、『そんなグズグズせんといてよ!』って言えるねんけどなあ!」

 とついこぼしたのだが、
 友人からは

「まあそれは言えないよな」
「相手が夫になっても、まあまあ言い方考えるわ」

と返ってきたのだ。
 その時の私には、結婚するほどに深い付き合いになって、なぜそれが言えないのか、ピンとこなかったことをよく覚えている。


 けれど、さらにその半年後、恋人と共に暮らすようになり、私はじんわりと友人の返信の意味を実感するようになった。

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 恋人と一緒に暮らすようになって、やっぱり喧嘩も増えたし、しんどいことももちろんあったと言えばあった。けれどそれ以上に、恋人が、できるだけ笑顔で元気に毎日過ごしてほしいし、ふたりで、できるだけ平穏で、健康的な毎日を過ごせるかということが、いつしか生活で一番大事だと思うようになった。それは、自分の無理な我慢でもなく、相手に無理に合わさせることでもなかった。

 思えば、恋人はいつも、そんな気持ちで私のことを大事にしようとしてくれていたように思うが、私は相変わらず恋人として彼が好きな浮かれポンチで、それ以上の気持ちをなかなか持てていなかったのかもしれないなぁ、なんて思ったりもした。

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 そうやって過ごすうち、恋人は時々恋人であり、でも時々は友人であり、時々は家族になる、そんな存在になっていった。
 恋人らしく過ごすだけじゃなく、生活を楽しみ、趣味にわくわくし、何気ないだらっとした生活を送り、そうやって2人で過ごしていく毎日が、1人よりもずっとずっと楽しいと思うようになっていった。


 そして、共に楽しく暮らしていこう、ということは変わらないけれど、法的に一番の親戚になりたい(相手の緊急連絡先になりたい)と言う気持ちがめでたく成就したので、私達は夫婦になることとなった。


 情勢もよくなく、婚約を記念して特別なディナーに行ったり、指輪を買いに行ったりすることもできなかったので、実感が沸かないままだったけど、入籍日当日は、SNSやLINEでたくさんの人が祝福の言葉をかけてくれて、とっても嬉しかった。
 お堅い仕事をしているくせに、公的書類の申請でさっそく名字を間違え、免許の書換えでは、名字を意識するあまり夫の名前を間違えて書くなどだいぶ混乱をきたした。



 そしてその日は、彼の誕生日でもあったので、カードに今の気持ちをしたためた。

私は相変わらずあなたのことが大好きですが
大好きなあなたの人生のパートナーになれたことを嬉しく思っています 

 夫は何でも一緒に考えてくれるし、KING of 優柔不断な私に合わせて、決断も一緒にしてくれる。2人分の荷物を2人で一緒に持っている感じ。1人じゃないことが、こんなにも心強いことなのかと思う。「関係が形になる」って、嬉しいことだなぁ。

 夫の名字で届く自分あての郵便物や、家族カードの申請などを行ううちに、じわじわと実感が沸いているのを、今は楽しんでいるところ。 



 この記事でも書いたが、芦原妃名子先生の「Bread & Butter」は結婚に関わって、多くのヒントをくれたし、人生のバイブルともなった。

いくつか引用で紹介したいけれど、一番響いたのはこれ。

「彼がいないと生きていけない」は依存だけど
「二人なら世界がどんどん広がるから一緒にいたい」なら、
それはーー 素敵な「ペアリング」で「マリアージュ」
結婚も それが理想よね

 五十嵐さんっ…!
 五十嵐さん夫婦の馴れ初めや関係、「私は頑固で融通が利かないけど、あなたといると自由になれた」っていうお話とかぶわってなった。
 パートナーと向き合ってる柚木ちゃんや五十嵐さんに日々ぐっとくる。
 タイトルの由来もここ。塩気のあるポークリエットとセーグルフィグ(イチジクパン)、最高だよね。


別に僕は ご飯を作って欲しくて 君といるんじゃないし
君だって 僕にご飯を作る為に 僕といるんじゃないだろう?
また 一人で勝手に孤独になるところだった
私がずっと欲しかったものは
“食卓”じゃなくて “信頼感” 

この話も良かった…泣いた…
純ちゃん、きっと洋一さんの気持ちも今ならちょっとわかったりするのかなあ。


“あなたの為に”っていうのは 一見美しいけれど
互いの重荷になることも多いから
本当に“あなたの為に”と思うなら 正直に 素直に 幸せでいてください

大人になると“正直”と“素直”が一番難しい
“誰か”と“何か”を言い訳に皆上手に嘘をつくからねえ
“何をしたいか” “誰といたいか” “どう在りたいか”
ごまかしても いずれ必ず ボロが出る

森さん夫婦の本当に素敵な言葉。
“何をしたいか” “誰といたいか” “どう在りたいか”
素直に考えて、今の自分があるんだなあって、そして今の自分が幸せだなあって、思えていたらいいなと思う。

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