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Your everything made me like this.


痛いこと、苦痛を味わうことが昔から大嫌い
自ら進んで痛みを味わいたい、と思う人はそもそも少数と思う
たまにそういった性癖の方をお見かけすることはあるが
私自身は到底理解ができなかった

でも、彼は違った
まず私と痛みを共有したい、と言った
痛みと愛情は似ている、とも
その考え方は私の理解を超えていた……
はずだったのに。

ある逢瀬の日
彼があまりに希うので彼の軟骨にニードルを刺すことになった
身体に一生残る傷をつけてほしいと
いつどんな時にも君を思い出せるように、と…

かつてなら一目散に逃げ出すほどのこの重量の愛を
その時の私は快く受け入れた
…いや、受け入れたというのはおこがましい
私自らが望んだ、のだ、きっと
そして彼は私の存在全てが、僕をこうさせた、と言った

とはいえ恋人の耳にピアスの穴を開けるなんて
まるで恋愛を知ったばかりで独占欲剥き出しの10代カップルがやる行為のようで、本気なの?と、最初は少し笑ってしまった

それでも軟骨へといざ針を刺す瞬間は、
なんとも言えない気持ちになった
痛みを極力感じないよう、キスをしながら刺そうかという私の提案に
彼は心底嬉しそうに頷き、私を強く抱きしめた
失敗しないだろうかと、微かに震える私の指先をよそに
彼は私の唇を優しく求めてくる
初めてのキスのように胸を少しざわつかせながら
私は彼の耳に触れ、針を刺す部分を撫でて確認する
一瞬の出来事がまるで、スローモーションのようだった…
針が進めば、彼は少し眉を寄せながらより一層私の唇を貪る

痛いんだ………
その表情に計り知れない色気を感じて、私もまた、気持ちが高まる

思わず唇を離し、痛い?と聞くと
彼は小さく笑って首を振る

プツッと、針が完全に貫通すると、
指先に少量の血液が付いた
彼の血だ……
無意識に舐め取りそうになるのを静かに彼が静止する
確かに、血液はやばい
私も相当に頭がいかれていることにその時初めて気付いたのだった

彼の躰に穴を開けた、私が…
一生残り得る傷を私自らの手で付けた、という行為を、自覚するにつけて
ゾクゾクとしてきて
最高に興奮した
同時にそれを赦してくれた彼への愛情が増幅した

依存…いや、共依存…?
愛に溺れるようなこの感覚は本当に生まれて初めてで
私が私でなくなるような
眩暈がするような恍惚の中
私と彼は暫しの間、抱き合っていた
まるで眩しすぎる光の中にいるようだった…

次回は彼が私にピアスを開ける話(R18)

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