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兄やんとネコととうもろこしごはん

先日アップした『兄やんとネコと魚』について、本人に記事化して良いか確認するために連絡を取ったところ、どうぞどうぞという返事とともに、話の流れで今度は兄やんおすすめのお店に食べに行こうという事になりました。


「ネコちゃんちょっとこれヤバない?」

土鍋で炊かれたとうもろこしごはんを食べながら、トロンとした目で兄やんが言うのです。

「うんやばい、これ100合食べれる」

私はあまりのおいしさにそう答えます。


その者 青き衣をまといて 金色の野に降り立つべし


正直この会話、とうもろこしごはんが提供されてから4回以上繰り返してる。

シラフの私は兄やんが少し酔い始めているのをいい事に、100杯食べられるとか、100回食べられるとか、100粒食べられるとか(少ないな)そのぐらい適当に回答を変えていました。

鱧そうめんから始まり、ここまで散々素晴らしい野菜や魚や肉が提供されたコース料理の終盤に出されたとうもろこしごはんは、花火でいうところのフィナーレにも該当する華々しさで、私たちを感動の渦へと放り投げました。

1杯目はそのまま、2杯目はバターを混ぜた後お好みで牡蠣醤油を垂らして食べてくださいとお店の方が言う。

「ネコちゃんこれはヤバいわ」

「うん、100杯いける」

同じ会話の渦からも抜け出せぬおいしさよ。
その渦、鳴門にも勝る。

こんなにおいしいとうもろこしごはんを炊ける人は前世でどんな徳を積んだのだろうか、いや今世で修行を積んだのか、とにかく私も何かを積んで炊けるようになりたい。

「ネコちゃん作ってみたら」

「私土鍋でごはん炊いた事ないし。土鍋持ってないし」

「炊飯器でさ」

「炊飯器でこの味は無理じゃない?」

「せやな無理やな。でもさネコちゃんこれほんまヤバない?」

「ヤバすぎやろ。100回食べれる」

私は帰りの電車の中で、ひたすら「土鍋」「土鍋 とうもろこしごはん」「とうもろこしごはん 土鍋 シャキシャキ」などと検索し続け、危うく下車駅を乗り過ごしそうになりながらかわいくて小さな鍋『STAUB/ラ ココットde GOHAN』にたどり着き、Amazonの“タイムセール30%OFF”と“12時間8分以内にご注文の場合明日着”という後押しにまんまと後押しされて鍋をポチっと購入しました。

こういう時だけ行動早い。
逃げ足も早いけど。


そしてポチっとしてから気づきました。
これ土鍋じゃなくて鋳物ホーローやねって。


気づくのはいつも遅い。



私は鍋が到着するのにあわせて生のとうもろこしを購入しました。
この季節ならではのおいしいメニューがさまざま作れるのでしょうが、手間がかかりそうで記憶の限りですと1度コーンスープに使った以外はありません。


翌日予定通り鍋が我が家に届きました。
2合炊きのコンパクトなホーロー鍋です。

このリボン一生外したくないぐらいかわいい


噂には聞いていましたが重みがすごい。絶対に足の上に落とさないよう慎重に取り扱いたいと思います。

私はSTAUB鍋を使ったとうもろこしごはんのレシピに沿って、調理を進めました。

ごはんは30分浸水させた後に、15分ザルで水を切ります。


そしてとうもろこし。

暴風に吹かれた後のようなヘアスタイルと傷だらけのまな板が哀愁を演出しています


ぎっしりと詰まった粒を、包丁と手を使って落としていきます。

欲張って芯からこそげ落としすぎた


2合に対して1本のとうもろこしと記載されていますが、本当にこの量を使うのかと不安に思うほど、大量の粒が取れたので驚きました。

米に、水と塩と酒を入れて軽く混ぜたら、粒と旨みをとるための芯を入れて炊飯します。

米粒ととうもろこしの体積はほぼ同等


鍋の蓋を少しずらし、火にかけて中の水が完全に沸騰したらきっちりと蓋を閉め、最弱火で12分、蒸らし12分で完成です。

沸騰確認


タイマーが蒸らしの12分経過をお知らせしてくれました。

恐る恐る蓋を開けると、驚くほど甘い香りが漂います。

その者 青き衣をまといて 金色…



この下に埋蔵されている埋蔵米はきちんと炊けているのだろうか。


ごはんを混ぜて器に盛り、お味噌汁、まだ続いているマイブームのいぶりがっこのポテトサラダ、密かにハマつつあるめかぶをあわせました。

神がかってはいないが緑がかってはいる


いただきます。

シャキシャキシャキ。

なんという事でしょう、この食感はあの店で食べたとうもろこしと同じではありませんか。さらに米粒は1つ1つがしっかりと立って、最適な硬さに炊き上がっています。

それぞれの歯応え、とうもろこしの甘み、ごはんの甘み、少し感じる塩味といったとてもシンプルなものがおいしさを構成しているようです。

2杯目はバターを乗せて、牡蠣醤油を垂らす。
私はここで冷蔵庫にお菓子用の無塩バターしかない事に気がつきました。

ふだん有塩バターとは無塩なのです。うんちょっと違和感あるね。

これがかの有名な
カフェオレコーデ



ああおいしい。
1杯目も、2杯目もおいしい。
十分においしい。

でも、あの店の味とは全然ちがうのです。


天の河と淀川ぐらいちがう。

エンパイア・ステート・ビルディングと第二ビルぐらいちがう。

無塩と無縁ぐらいちがう。



あのおいしさは、一体何だったのかと食べながら考えていました。
どうしてあのおいしさにならないのかと考えていました。

今のところ、私はまだ前世でも今世でも積み木ぐらいしか積んでいないから、という結論に至っています。

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