見出し画像

ベンヤミンのがらくた市。掘り出し物を探そう!

『パサージュ論(三)』 ヴァルター・ベンヤミン、今村仁司、三島憲一(岩波文庫)

夢と覚角の弁証転換に、ベンヤミンは都市の現象をする、根源の歴史にあり、性見をする。 [M]、認識方法論のマニフェスト[N]前、思想的方法論や都市の諸断章を取ります。

第三巻は、k~pまでのキーワードについて、ベンヤミンのメモ書きと書物からの引用で成り立っています。パーサジュというのは、アーケードの中の遊歩道でその両脇に出店が並んでいる感じです。正式なブランド品じゃなく、バッタモンのカラフルさ。それはベンヤミンの引用が名著によるものではなく、ただベンヤミンの関心をよぶものを揃えているからです。

ただ陳列する。しかし、その配置にはベンヤミンの意図があるのかもしれないし、ないのかもしれない。夢の現れと同じなんですね。意図を辿れば辿れるかもしれない。しかし、読者は精神分析医でもなければベンヤミンでもない。引用もマルクスのような哲学からボードレールのような文学、あるいは資料的なパンフレットや専門書のたぐいまで。

例えばボードレールの引用は、パリの街路についてです。それも臭気臭い夜の怪しい場所、そんな場所でも昼には別の表情をしている。それはプルーストの『失われた時を求めて』の遊歩道とつながっているかもしれない。ポーの探偵小説とはつながっていました。そういうのが面白い。

全てが面白いわけでもないのです。断片が時にひっかかることもある。それは自分の場合は文学者名ですけど、哲学ということもあるでしょう。あるいは、娼婦論をナンパに役立てるとか。

またベンヤミンが書物から写筆するのは、図書館本ということもあるのですが、筆写することで自分自身に痕跡を残す言葉になるというユダヤ教(秘教)的な思考があったようです。

私が読んだのは単行本で何故か三巻から出版されたのだと思います。それはどこから呼んでも語彙集のような感じなので、読めるし三巻が一番「パサージュ」に関連深いキーワードがあるとしたからだと思います。「遊歩者」とか「パリの街路」とか。ただ文庫本では出ているのに、単行本ではない項目もありました。文庫本と収録されているインデックスが違うのかもしれない。

おもしろく読めたのは、T:「さまざまな証明」。街灯が灯油からガスに成り変わるので、街灯による変化。ガスの火はゆらゆら揺れるので幽霊が出やすいとか、ガスの危険性(爆発するとか)が悪い噂と幽霊話を連れてくる。そして、それもすたれてなんでも照らす電気になるのです。

ガス燈までは点灯人という職業があって一斉に短時間で街灯をつけなければならなかったとか、それで娼婦が増えたとか、労働時間が伸びたとか様々な変化をもたらしたわけです。

K:「夢の街と夢の家,未来の夢,人間学的ニヒリズム,ユング」.
追悼的想起という認識の実践者である遊歩者とその都市の経験の仕方を述べる
L:「夢の家、博物館、噴水のあるホール」
「下水道。「ありとあらゆる幽霊たちがこの長くて寂しい回廊に出没する。いたるところに腐乱と瘴気が満ちている、ところどころ通気孔があって、中にいるヴィジョンが外のラブレーと話し合うのだ。」(ヴュクトル・ユゴー『レ・ミゼラブル』》

M:「遊歩者」.
  「われわれの関わっている分野では,認識は稲妻の閃光のようなものでしかない.テクストは稲妻の後に続く雷鳴である」という断章で始まる,ベンヤミンの方法叙説ともいえる。
「都市と農村という対立は、......個人が分業に従属せしめられ、また個人が強要されているある特定の仕事に服せしめられていることの、もっとも露骨な表現である。このような服従は、都市の人間を狭量な都市動物にし、農村の人間を狭量な農村動物にしてしまう」(カール・マルクス)

ボードレールにおける大衆。それは遊歩者の前にヴェールとなってかかっている。それは孤立している者の最新の麻酔薬である。──それは次に個人のすべての痕跡を消し去る。それは追放された者の最新の隠れ家である。それは、ついに、都市の迷宮の中で、最新で、もっとも究めがたい迷宮となる。大衆によって、これまで知られていなかった冥界の相貌が都市像の中に刻み込まれる。

痕跡とアウラ。痕跡は、痕跡を残したものがたとえどんなに遠くに離れていようとも、近くにあることの現れである。アウラは、それを呼び起こすものがたとえどんなに近くにあろうとも、遠くにあることの現れである。痕跡の中にわれわれは事柄を捉えるが、アウラにおいては事柄がわれわれを取り押さえる。

N:「認識論,進歩の理論について」.
  賭けるということを売春と重ね合わせ,貨幣と近代の行為を論じる

O:「売春,賭博」.
  パリの街路名から都市のコスモロジーを探索する試み

P:「パリの街路」.
  街路という戸外を屋内に映し出して取り込み,室内に広さと錯覚を与える鏡についての興味深い考察

R:「鏡」.
  絵画や出来事,ユーゲントシュティールという様式における新しさを考察することから現代性(モデルネ)を解き明かそうとする

Q:「パノラマ」

S:「絵画,ユーゲントシュティール,新しさ」

T:「さまざまな証明」

V:「陰謀、同業職人組合」

Z:「人形、からくり」

k:「コミューン」
実のところランボーのすばらしいところは、彼が沈黙してしまったことではなく、むしろ彼が何かを語ったことがあるというこということだ。彼が沈黙してしまったのは明らかに、真の聴衆が存在しないためであった。(アラゴン)

m:「無為」

p:「人間的唯物論、宗教の歴史」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?