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20年前に逝去した父との想い出と、
おじいちゃんに会ったことない息子とを繋ぐ
「するめごはん」の話。

キッコーマンの「あなたの『おいしい記憶』をおしえてください」コンテストへ応募した作品だ。
あいにく入選ならず。

応募してから数か月の時間が経った今読み返してみた。
話を盛り込み過ぎて、まとまりがない。

大賞作品に目を通すと、文章力は問わず、
ドラマ性を重視していることがうかがえた。
しかも、かなりインパクトのあるエピソードでなければ入賞はきびしい。

さぁ、来年までにネタを仕入れねば(*^-^*)

せっかくなので、こちらにエッセイ掲載♪ ↓

「 スルメご飯 」

高校時代、毎朝の日課だったお弁当作り。
まず弁当箱に、白いご飯をうすくよそう。
そこへ、しょうゆに浸したスルメをびっしりと並べる。
さらに熱々の白いご飯を上からかぶせれば、
スルメご飯のでき上がり。

本当は、おかずさえいらないくらいだが、
白飯だけと思われるのも恥ずかしいので、
おかずもたっぷり詰めていく。

ランチタイムには、じんわりとやわらかくなっているスルメ。
噛むほどに味があるイカのよう。
ごはんにも、醬油とスルメの風味が滲みて旨い。
女子高生のお弁当とは思えないメニューだが、
これが毎日の楽しみだった。

もとを辿れば、大酒のみだった父の影響だ。
晩酌のとき、必ず出てきたのがスルメだった。
かるくあぶったものに、たっぷり醬油をかけて、
マヨネーズをつけて食べる。
これがもうたまらなく美味しくて、
毎晩テレビを見ながら晩酌中の父の隣に坐って一緒に味わった。

他にも、お味噌汁の具が豆腐の時は、
マヨネーズを入れ、溶いて一緒に飲む。
これが父の食べ方だった。
見た目がよくないため家族には不評だったが、
私は一度真似して美味しいと思ったのをいいことに、
このマヨネーズ味噌汁も父と恒例メニュー化した。

食わず嫌いをしない、好奇心が食にも及ぶのは幼い頃からだ。
そのおかげで美味しいものや、
幸せな想いをたくさん味わえたと思う。
 
強制できることではないが、小学生の息子が見た目で判断する、
典型的な食わず嫌いであることを、心底もったいないと思ってしまう。

「ひと口だけでいいから試してみて」とお願いしても
「食べたくない」「いらない」と言い張る。
そんなとき、カマンベールチーズの話をする。

当時大人気だったカマンベールを、
どうしても美味しいと思えなかった私。
これはもったいない!今度こそ、
このお店なら、この料理だったら・・・と、
いろいろなお店で試食に挑戦し続けてきた。

毎回期待を抱いては、裏切られ続けたが、
たった一度だけ、美味しいかもと思えたことがあった。
フライにしたものだったと思う。
ジャムをつけたような記憶もある。

苦手なものを美味しいと思えるなんて。
それは奇跡に近いことかもしれないが、
これからもためらわず試し続けるつもりだ。

それほど食は自分にとって好奇心の源であり、
簡単に諦めたり、譲れないほど大事な営みのひとつなのだ。

今では親子で共通の好物スルメ。
北海道からいつも大量にお取り寄せしている無添加のものだ。

スルメを噛みしめるたび、
今ここに父、息子にとってはおじいちゃんがいてくれたら、
3人で食べたのに・・・・。
今となっては叶わないが、未来なら・・・。

いつか高校生になった頃、
息子はまだスルメご飯が好きだろうか。
時々スルメ弁当を作ろうと楽しみにしているが、
匂いが気になるから、お弁当には入れないで!と
懇願されそうな気もする。

いつか大人になってお嫁さんをもらったときに、
恥ずかしがらずに伝えてほしい。
この醬油が滲みたご飯とスルメの相性は最高だと。
いつかそう言って、笑える日がくるといい。

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