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挑戦❗️読書。3冊の本

    突然ですが、皆さんは「挑戦」していますか?挑戦というと、なにか凄いことや難しいことに挑むイメージがあります。しかし、私はもっと身近な日常にも「挑戦」があると思います。例えば帰宅途中に少し寄り道をして新しい発見を求めるのも「挑戦」ですし、大学の授業を受けることも新しい学びを得ようとする意味では「挑戦」です。このように「挑戦」は身近にあふれており、毎日が「挑戦」の連続だといえます。そこで今回、私はもっとも身近に挑戦できる「読書」について述べたいと思います。


読書に挑戦1冊目『スタンド・バイ・ミー』


新潮文庫『スタンド・バイ・ミー』スティーヴン・キング 著 山田順子 訳 1987年出版

  まず始めに読んだ本は、『スタンド・バイ・ミー』です。この本は自分が中学1年生の時に買った本で、中学から高校、高校から大学と、人生の節目節目に改めて読み、それぞれ新しい感動を与えてくれました。
 さて、 スティーヴン・キング著『スタンド・バイ・ミー』は元々『恐怖の四季』という春夏秋冬を背景にした4つの中編の中の「秋」として書かれました。『恐怖の四季』というタイトルをみてびっくりした方もいるかもしれません。実は、作者のスティーヴン・キングはホラー小説家です。代表作に『IT』『シャイニング』『ミザリー』『ペット・セメタリー』など、映画にもなった有名な怖い作品を多く発表してきました。しかし、そんな彼がふつうの作品として書いたのが『恐怖の四季』です。
  この作品は大人になった小説家の主人公が過去を回想する形式をとります。回想の舞台は12歳の9月、アメリカでは小学校高学年(日本の中学校にあたる)が始まる時期です。主人公たち4人組は、町の噂となっている行方不明の少年が、列車にはねられたという噂を聞き、発見者として有名になるため少年を探しに線路をたどる旅に出ます。ちょうど子供と大人の中間である少年達は1泊2日という短いながら濃密な時間の中で、様々な出来事を経験していきます。またこの少年達4人は、それぞれ悩みを抱えています。優秀な兄を亡くし、両親から関心をしめされないという状況から自分が死ねばよかったと想像してしまう主人公のゴードン、不良一家というレッテルを貼られ、盗みの疑いをかけられたり才能を認めてもらえないリーダーのクリス、虐待されても戦争経験者の父親を尊敬し続けているテディ、周りからバカにされているバーン、この様々な悩みを抱えた4人が冒険を通して成長していきます。
   この小説のリアルなところは後に4人がそれぞれ疎遠になってしまうところです。ゴードンとクリスはカレッジ・コースに進み、テディとバーンとはあいさつを交わすだけの仲になります。そしてゴードンとクリスもそれぞれ小説家と弁護士という別々の道を進みます。この作品は映画にもなり、青春映画の傑作として高く評価されています。映画で一番印象に残ったセリフは「私はあの12歳の時に持った友人に勝る友人を、その後二度と持ったことはない。誰でもそうなのではないだろうか。」というものです。中学・高校・大学と進学するにつれ、それぞれ離ればなれになった友人を思いだし、改めてこの作品への共感が深まりました。男女・時代を問わずにきっと多くの人が同じような友人との別れを成長するにつれ経験していくからこそ、この作品はいつまでも素晴らしい体験を与えてくれ、まだ別れを経験していない子供の時の感想と、多くの別れを経験してきた大人になってから見た時の感想が異なるのだと私は考えます。

映画『スタンド・バイ・ミー』1986年公開
原作 スティーヴン・キング      監督 ロブ・ライナー

読書に挑戦2冊目『飛行士たちのはなし』

『飛行士たちのはなし』ロアルド・ダール著
田口俊樹 訳 早川書房 2016年出版

  皆さんはジブリ映画で繰り返し描かれる「飛行機の墓場」のイメージを知っていますか?
『紅の豚』や『風立ちぬ』に出てくるイメージで、戦争で亡くなった飛行機乗りたちが敵味方関係なく愛機と共に空高く隊列を組んで飛んでいくというものです。

スタジオジブリ公式サイト『紅の豚』作品静止画より

  このイメージの元となったのは、ロアルド・ダールの書いた『飛行士たちの話』の中の「彼らは年をとらない」という短編です。 筆者のダールは『チャーリーとチョコレート工場』の原作を書いたことで広く知られています。またミステリー作家として、アメリカ探偵作家クラブ賞も受賞しています。そんなダールは1916年にイギリスで生まれ、第二次世界大戦が始まるとイギリス空軍のパイロットとして従軍しました。そして戦後まもない1946年に、自身の体験や経験をベースとした『飛行士たちのはなし』を書きデビューしました。そんな『飛行士たちのはなし』は10編の短編集の作品です。今回はその中から特に印象に残った3編を紹介します。   
      まず1つ目は先述した「彼らは年をとらない」です。あるパイロットが偵察飛行の最中に雲の中に入ってしまい、そこから出ると明るくて清んだ青い世界を飛んでいました。そしてはるか上空を様々な種類の飛行機が一列に飛んでいて、パイロットはその列に加わり進んでいく内に、太陽より大きな輪郭の無い明るく白い光や、平原に着陸している途方もない数の飛行機を発見します。そして周りに合わせてパイロットも機体を着陸させようとするが高度が下がらず、次第にそこから離れていき、気が付くと雲の中にいたという話です。冒頭でも述べたようにこの話のイメージは『紅の豚』や『風立ちぬ』で映像化されています。死んだパイロットは飛行機と共に飛び続けるという死生観は、実際にパイロットだったダールならではの、とても興味深いイメージだといえます。   
  2つ目の作品は「猛犬に注意」です。戦闘で怪我を負い、パラシュートで脱出したパイロットはある病院で目を覚まします。しかし、いくつかの違和感を覚えたパイロットは窓から「猛犬に注意」の看板をみて真実を悟ります。この作品はミステリーの要素が入っており、後にミステリーの名手と呼ばれるダールの片鱗が存分に味わえる名作です。   
   そして3つ目の作品は「カティーナ」です。この作品は上の2作とは違い、飛行機乗りたちの日常がメインとなっています。ギリシャ戦線でのイギリス軍とドイツ軍の戦いを舞台に、主人公達イギリス軍パイロットと孤児となったギリシャ人の少女カティーナとの交流を描いています。部隊の仲間やカティーナとの交流といった日常の一方、淡々と戦闘による仲間の死が描写されることや、ドイツのパイロットの描写、そして衝撃のラストなど、より戦争文学としての側面が強い作品となっており、戦争の犠牲について考えさせられます。   
  このように『飛行士たちの話』は単なる戦争文学というだけでなく、ダールの得意なミステリー文学の要素や、ジブリに大きな影響を与えたパイロットならではの死生観など、多様な要素を含んだ短編集だといえます。また、今回紹介出来なかった作品においても、様々なメッセージを含んでおり、とても面白いです。戦争文学やミステリー文学、そして『紅の豚』や『風立ちぬ』で描写された「パイロットの墓場」に興味のある人は、ぜひ読んでみて欲しい小説です。

読書に挑戦3冊目『ペリー来航』

『ペリー来航』西川武臣 著  中公新書 2016年出版

   3冊目は少しジャンルを変えて歴史書に挑戦しました。日本史で誰もが習う「ペリー来航」ですが、来航から翌年の条約締結までの間、何が起こっていたのかは詳しく知られていません。また、当時の庶民はペリー来航をどのように捉えていたかについても同様です。この本は多くの資料と共に、改めて日本の近代化の原因となったペリー来航について捉え直すという本です。
  私が特に面白いと思ったのは、幕府が黒船の見物を規制したにも関わらず艦隊見物がなくならなず、庶民により黒船の詳細な絵が残されて現在に伝わっていることや、様々な伝達手段によってペリー来航が伝えられ、庶民から「慌てふためく幕府や武士の対応」への風刺が起こり、広がったということです。これらのエピソードから、庶民が正しい情報を知った上で、黒船を絵に残して後世に伝えようとしたことや、当時の状況の風刺を行ったという新たな事実を知ることが出来ました。
  教科書では学ばないペリー来航の詳細に加え、来航から170年以上が経過し、よりグローバル化する現在において、改めて西洋との遭遇時に何が起こったかを知り、捉え直すことは大切だと強く感じた一冊でした。

終わりに

  冒頭の繰り返しになりますが、「挑戦」と聞いて「難しい」や「出来ない」などと思って諦めるのではなく、まずは読書などの身近なことへの「挑戦」から始めてみることが大事です。また、それにより新しい考えや世界に触れることができ、次の「挑戦」に繋げていくことも出来ると私は思います。
  最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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