【小説】眠りと目覚め 第二話
※こちらは第二話となっております。
よろしければ、【小説】眠りと目覚め から、お読みください。
「たらちゃん?」
「…。」
「たらちゃん、…眠れないのね…。あーたが
眠っていないことは、すぐ分かりますよ。」
私は、仕方なく、もそもそと布団から起き上がった。
「私…。」
私は一体どうしてしまったのだろう。いつもなら、布団に入ってすぐに寝てしまうのに…。
「…分かりました。…出雲さん、申し訳ございません。娘の体調…、気分…、なんと申しますか、ちょっといつもと違うようでして…。出雲さんは、私のつぼ押しやマッサージでは効かないようですし…。」
出雲さんは起き上がり、
「…私は構わないですが…、なんだか申し訳ないです…。」
「あら、申し訳ないのは、こちらです…。本当にすみませんねぇ…。」
「も、申し訳ございません、私、なんだか調子が良くないみたいで…、なぜか眠れなくて。」
私は慌てて、出雲さんに頭を下げてお詫びした。
「いえ!大丈夫です。どうぞお気になさらずに…。」
「…本当にすみません、ありがとうござ…」
顔をあげると、出雲さんと、目が、合って、
「…!」
何?!私、ほ、本当に体調が良くないのかもしれない。ちょっと、頭が混乱して、動悸がするみたい。顔も熱いかもしれない…。
あとは、今日は父にお願いしよう…。
「出雲さん、お疲れではないですか?このままこちらで休まれますか?
それとも、まだ午前中ですし、ラ ぶーらぶらでもされますか?」
「え?…はい?」
「ラ ぶーらぶら、です。安眠のためには、
心と身体のリラックスがよろしいでしょう。自然の中で、愛と恵みを感じながら、ぶーらぶらしますと、心身がほぐれ、程よく疲れます。この辺りを気ままにラ ぶーらぶら、されるのもお勧めですよ。」
「…なるほど、ラ ぶーらぶら…、ふっ。
…いいですね。行ってみます。」
「たらちゃん、あーた、ご案内して差し上げてね。すぐに、あたし、お弁当作るから。」
「え!?」
「…出雲さん、すみませんね、この子はこんな山奥に暮らしていて、ずっとあたしと二人きりでして、…良かったら、話し相手にでもなってやっていただけませんか?ついていかせてよろしいですか…?」
「はい、それは…、もちろんです。」
「良かったわ!なんだか色々すみませんねぇ。良かったわね、たらちゃん。あーたも、少し外で深呼吸していらっしゃいよ。
ラ ぶーらぶらよ!」
「え、あ、あ、…あの、では…。」
私はなんとなく出雲さんと目を合わさないように俯いて頭を下げた。
「よろしくお願いします…。」
「よろしくお願いします。」
出雲さんと私は、山を歩く。
それと。なるべく、出雲さんとは目を合わさずにいた方が良さそうだ。気をつけて歩こう…。
「…いい天気ですね。こんなに山の中に来たことはあまりなくて…、車で来ましたが、途中で、少し心配になりました。…鳥の声が、よく聴こえてきますね。」
「は、はい。あの、…そうです…。」
「…空が、…空なんてあまり見ていないです、
普段は。風が、気持ちいいですね。」
「…そう、ですよね。私は、ずっとここにいますから…、逆にあまり意識していないかも…、当たり前に見ているから…。あ、あの雲、きれい、ですね…。」
空には秋らしい薄い雲が広がっている。
私にとっては、いつもの景色。今は、なんだかあまり落ち着いて見えない気がする。
「本当だ。きれいですね。」
「ね。…はは。」
「草がすごいですね!こんな舗装されていない道を歩くこともあまりないです。」
「そうですか、私はこんな道ばかりで…。
…なんだか、違うことばかりですね。」
「そう言われると、確かに。眠りを提供されているおうちですしね、うちは起きていることを研究していますから…。
僕は、どちらかというと、のんびりとしたいんですが…。
実は、ここへ伺ったのは、眠れないからってこともありますが、なんだか、一度ゆっくり考えてみたくて…。
ここにいると、時間の感覚も違うみたいに感じます。」
「そうなんですね…。私は、研究というより、性質というか体質というか、そのままなので…。父がいつも、あらま、ぐうたらね!なんて言って…。
漢字が新しい真の宮で、あらま、ぐうになるので…。」
「ははは!お父さん、優しそうな方ですよね。ラ ぶーらぶら、もお父さんが?」
「はい…。駄洒落さえ言えばオッケーみたいなところがあって…。つまらないのに。」
「ふふ、面白いです…。まさか、グウグウもかかっているんですか?ははは。
あらまみや たらねさんで、たらちゃん、なんて…、…かわいい名前ですね…。」
「か、かわいくないですよ!名前まで駄洒落で、もう。ただ、それが言いたいだけなんですよ。」
「僕も、起きて照らすで、おきてる、ですから。しかも、いずもって。ははは。
父は出雲 全開(いずも ぜんかい)という名前ですし。」
「…ははは!それは、…すごいですね!でも、素敵なお名前ですよね。おきてるさん、も…。…ぜんかいさんも。」
「ありがとうございます。」
「あ、あそこの大きな木、あの辺で、お弁当にしましょう。」
「…大きな木ですねー。森の木の下でお弁当なんて、なんだかすごいです。」
創り話です。
お読みいただきありがとうございます😊
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?