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堕天使の涙

不思議と淋しくはなかった。このままどこか運ばれるまま運ばれて気ままに生きたいと思ったあの夏。想い出は私の心のドアを叩いて想いはもう居るはずもないアナタの元へ向かっていた。

何もかもが嫌になって仕事も、同棲中の彼氏も、今の生活も全て放棄してしまいたくなって私はこの地から離れようと埼玉から池袋へと向かった。このドロドロとした人間関係をどうしても一掃したかったのだ。池袋駅で下車して馴染の居酒屋でホッピーを注文した。ついでに焼き鶏のタレと塩、軟骨、砂肝と注文し濃いめの焼酎に黒ホッピーをドバーっと注ぎ込み一人勢いよく飲み干した。お決まりの如く隣で飲んで居た一人の客から声がかかった。

「そんなに一気に飲んでどうしたの?」

素面じゃ苦手だがほろ酔いの勢いでする男性との会話はなんだか面白い。

「ふふ。今日、東京を出て旅するんですよ。」

私は男の少し戸惑ったような表情を楽しみながら、私は店主に次のアルコールをオーダーした。

「ホッピー同じのと、こちらの方にもビール生でお願いします。」

男は少し申し訳なさそうな顔をしながらも馴れ馴れしく話をしてきた。

「実は俺も旅に出るんだよ。」

「え!そうなんですか?どちらへ?」

「名古屋へ向かう予定なんだ。」

旅行という共通点を見つけた私達はその後意気投合して何回かも乾杯を繰り返し共に居酒屋を出た頃にはすっかりベロンベロンになっていた。日も暮れて辺りは夜のギラギラとした店の灯りと酔っぱらった人盛りで街の雰囲気は昼間とはガラッとかわってしまっていた。私は酔っていたせいか名前も知らない見ず知らずのその男の胸に身を任せていた。こんなのはだらしないと思いながらも急にどうしようもない淋しさが込み上げて来てしまい気が付いた時には男の胸の中で泣いていた。

男はびっくりした様子で咄嗟に私の肩をギュッとだ掴んだ。

見上げると男は優しくこう言った。

「辛い事なんかこれで忘れてしまったらいいんだよ。絶対にいい事もあるから。旅したら忘れるよ。」

男はニヤッと笑ってから胸ポケットから煙草を2本取り出して私にも1本火をつけてくれた。男のくしゃくしゃになった煙草の箱を見ながら何故か虚しくなって私は思いっきり煙草を吸った。普段はふかしているだけでポーズや間がもたなくなった時だけ煙草を吸っていたのだがこの時ばかりは一気に肺に煙を送り込んでみた。

頭がくらくらする。しばらくしてから体がふわふわとして不思議と落ち着いてくるような錯覚に襲われた。煙草の魔法が体中を駆け巡っている時ふと一曲の歌が私の頭の中をぐるぐると駆け廻った。

その時煙草とアルコールまみれになったボロボロの思考の中で唯一その歌だけが私の心を希望の光へと導いてくれるもののように思えた。


迷う現代人への歌!Wild wood live/paul weller 日本語訳&歌詞

都会の日常に揉まれて
嫌なことが起こる。
悪いやつもいる。
行き場のない感情
疲れ
誰もが感じることですが
この歌を聞いていると
はげまされます。
それぞれが抱え込む
鬱蒼とした森からの出口を
それぞれの方法で
見つけなくてはいけません。
諦めずに頑張りましょう。
(和訳)

『知るべきは何処へ向かってゆくのか』

Kowing、just whare you are blowing

『行くべき場所へと辿り着け』

Kowing、just whare you are blowing

『きみが悪いよう仕向ける奴らの』

Don’t let them get you down 

『勝手にさせてはいけない』

Making you feel guilty about

『黄金の雨はきみに富をもたらすだろう』

Golden rain, will bring you riches

『今、きみがよいものを手にするべき時だから』

All the good things you deserve and now

『よじ登れ トライし続けろ』

Climbing, forever trying

『深い森からの出口を見つけ出せ』

Find your way out of the wild ,wildwood

『正義なんてもうどこにもないし』

Now there’s no justice

『自分自身を信じてゆくだけなんだ』

Only yourself that you can trust in

『昼下がりの真っ只中』

And I said high tide, Mid afternoon

『人々は往来を駆け抜ける』

People fry by, in the traffics boom

『どこに流されてゆくのか知ること』

Kowing、just whare you are blowing

『きみが辿り着くべく場所へと向かうんだ』

Kowing、just whare you are blowing

『ひがたつにつれて きみの居場所はなくなる』

Day by day your world fades away

『夢が語りかけてくるのを待っている』

Watching to feel  all the dreams that say

『黄金の雨がきみに富をもたらしてくれる』

Golden rain  will  bring  you  riches

『手にしてもいいんだよ。きみがそれに値するのだから。』

All  the  good  things  you  deserve  now

『よじ登るんだチャレンジしていけ!』

And  I  say,  climbing,  forever  trying

『スかくて位森から抜け出して見せろ!』

Find  your  way  out  of  the  wild,  wild  wood

『深くて暗い森からきっと抜け出せるはずだから』

Said  you  are  gonna  find  you  way  out  of  the  wild,  wild wood Wild  wild  wood.

Rock歌心伝えます チャンネル


こうして見ず知らずの男の胸の中で泣いてすがっていても何の解決もしないんだ。

急に酒が抜けてきたのか少しだけ理性が戻りつつあった。この男性も淋しいのかも知れない。この人もこの世の偽りの毎日の中できっと藻掻いてきたのかもしれない。私はもうこのいまの生活にピリオドを打ちたかった。それはもうずっと何年も前から思っていたことなのだ。

汚れた河で泳ぐ魚

濁った眼をして餌を探す

来る日も来る日も

同じ事の繰り返し

こんな所に居てはダメになってしまうって単純な事くらい

知ってるのに

濁った雨が泥水を運んでくる

来る日も来る日も

同じ事の繰り返し

手を差し出せば何かが変わるの?

見えるのは嘘とののしり

人間なんて信用できないって知ってるのに

誰かに甘えてドツボにハマる

自分の意志の弱さを呪う


居酒屋を出て池袋駅まで向かう途中足がふらついてしまいどこかわからない路地裏のレジャービルの薄汚れた階段に座り込んでしまった。

その時思わず笑いが込み上げてきた。

私はこめかみが熱くなった。しばしの沈黙の後、むくっと立ち上がりまた駅へと向かった。

混沌とした世界の中で一人漂流者になってしまったような気持ちだった。

再び涙が頬をつたって落ちる。

次の瞬間私は繁華街の片隅で叫んでいた。

「綺麗なものを見ていたかったの!!!こんな汚い世界にいたくないの!!!私は絶対ここを抜けてみせる!!!」

周りの人の視線なんか全く気になんてならなかった。自分はきっとおかしいいんだろう。そんな事はわかっている。この世界に足を踏み入れてしまったあの日の屈辱を私は絶対に忘れなていないからだ。

自分の価値は自分で決めるのだ。この状況をどう突破したらいいのかまず考えないとならない。

もう私は誰にも頼ったりしたくなかった。人は知らず知らずのうちに自分にとって恐ろしい存在になってしまうからだ。自分の命の安全は自分自身で守っていくしかないのだ。

それから何時間経過したことだろう。

「起きてください!あなた、朝ですよ。大丈夫ですか?」

「ここは?」

目を開けるとそこは池袋の駅近くにあるパブの横にある小さな裏道で、お店の従業員の人が親切にもコップにお水をいれて持って来てくれた。

「飲んで!」

「ありがとうございます・・・。」

「ここにいられると店の邪魔になるんですよ。早くどいてくれませんか?」

そういうとその従業員はコップを持って奥の厨房へと戻っていった。

私はその従業員に会釈をしてからゆっくりと立ち上がり路地裏から大通りに出た。ふらふらしながらビルとビルの間に広がる青い空を見上げた。

空はもう秋の気配がした。そして私のここでの生活も秋へと向かっているような気がした。その時スマホの着信音がした。お店のママからだった。

「ゆいちゃん、今日は高橋さん連れて来てよね!昨日どうだったの?ちゃんと報酬はもらってるの?ママの取り分忘れないでよ!」

私はママとの約束などすっかり忘れていた。

少し深呼吸してからママに言った。

「ママ、突然なんですが、私お店辞めさせて頂きます。いままでお世話になりました。」

私はそう言ってすぐに電話を切った。サヨナラだ。

私の代わりなんて誰でも出来るよ。そう心の中で思いながらこの空虚な街の片隅で一人決意した。もうここには絶対に戻らない。私は絶対に辞めると決めたら辞めるんだから!

ビルの谷間に見える青空だけが輝いて見える。真実はドロ沼の中に咲いている一本の蓮の花のようなものだ。


『蓮華の上に宝珠あり』


そうして私はこのダークな自分物語に幕を下ろした。


Prefab Sprout - Streets of Laredo

Muzikef チャンネル


『美しいバラの道をいく』

Going the way of the beautfull roses

そして、私は東京を去った。

なにもかもが過去になってしまう時がくるまでひっそりとどこかこの街のどこかで一人暮らしていこう。

そう胸に誓って。

2004年行先も決めずに乗った新幹線で初めて耳に飛び込んできた音楽、

この歌はその後のわたしの進路を決定ずける歌となった。

涙がとめどなく溢れ出した。音楽を何度も何度も聴きながら空っぽになった気持ちを修復しようと思った。そしてもう後戻りしたくないと固く固く誓った。

もう孤独なんかじゃない。私は私を受け止めてあげる事が出来るのだから。自分の心に寄り添い、今までずっと一緒に生きて来てくれた自分という存在に感謝しなくては。自分を失う事は何よりも辛いんだと思った。

このまま何処へ行ってもこの気持ちだけは忘れないようにしようと思った。

小さい頃ひたすら美しいものだけを見ていたかった。そしてそれは私の両親の願いでもあった。今はもうこの世にいないけど、私が私自身で自分を慈しみ生きていくことこそが亡き両親への親孝行なんだと思いながら。


THE END


【平原綾香】「Jupiter」MVフルVer.

dreamusic チャンネル

Jupiter/平原綾香 作詞/吉元由美 作曲/G.Holst

Everyday I Listen to my heart

ひとりじゃない 

胸の奥でつながっている

果てしない時を超えて輝く星が

出会えたた奇跡 教えてくれる

Everyday I Listen to my heart

ひとりじゃない

このそら(宇宙)御胸(みむね)に抱かれて

私のこの両手で 何ができるの?

痛みに触れさせて そっと目を閉じて

夢を失うよりも 悲しいことは

自分を信じてあげられないこと

愛を学ぶために孤独があるなら

意味のないことなど 起りはしない

心の静寂(しじま)に 耳を澄まして

私を呼んだなら どこへでも行くわ

あなたのその涙 わたしのものに

今は自分を抱きしめて

命のぬくもり 感じて

私達は誰も ひとりじゃない

ありのままでずっと 愛されてる

望ように生きて 輝く未来を

いつまでも歌うわ あなたのために


■■あとがき■■

ここまでご覧くださってどうもありがとうございました🥰

音楽と詩のような文を混ざり合わせて書いてみました。音楽を聴くと溢れる感情を大切にしながら書きました。詩みたいな作文みたいなものですが、こうして書くと気持ちの整理も出来てスッキリすることが出来ました。

読んで何かを感じて頂ければ幸いです👍✨

asa_Sante


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