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SNSが選挙を左右する ネット時代の政治家とは

ノルウェーの政党は、市民と交流を深めるために、SNSに依存している。

Facebookで市民の感情を煽るのが得意な政治家といえば、進歩党(右翼ポピュリスト政党)のリストハウグ国会議員。「ノルウェーのドナルド・トランプ」との異名ももつ。

その使い方を一歩間違えて、先月は法務大臣の座から退くことになってしまった。

「大臣のFacebook投稿が原因で、政権解体の一歩手前」という、信じられない事態を引き起こした国は、他にあまりないだろう。

※ちなみに、リストハウグ議員は騒動後、大臣の肩書は失ったが、支持者からの人気はさらにアップした。「ノルウェーのFacebook女王」のタイトルは、健在だ

SNSが使えない政党なんて、ありえない

政党でいうと、「保守党」と「緑の環境党」は、SNSを使うのが特に上手いと感じている。

保守党(写真下)は、金銭的に余裕があるお金持ち政党だ。SNSでの広告予算がある政党にとって、見本となりそうなことをたくさんしている。

緑の環境党(写真下)は、金銭的に余裕はない小政党。

それでも、10~20代の若い党員が多いため、お金をあまり使わずに、SNSでメッセージを伝えるのが上手い。

国会にいる政党で、SNSをあえてあまり使用しないのは、伝統的な道徳や価値観を大事とする「キリスト教民主党」。

「中央党」は、左翼ポピュリスト政党に位置するが、支持者に地方在住者・農家が多い。この党においては、支持者層が「ネット市民」とは限らない。そのため、SNSよりも、各地を周り、対面で会話することにお金と時間を使っている。

写真:昨年の国政選挙。「農家の味方だ」ということを示すために、大きな大木を選挙小屋の前に置いていた中央党

ノルウェーではFacebookとSnapchatが選挙を左右する

この国では、政党のインターネット使用法においては、特に規制はない。各党は、年中自由にSNSを使用している。

SNSにいない政治家は、ノルウェーでは「未来がない政治家」といっても過言ではない。

将来の有権者である若者に、今から親近感を持ってもらうことができるSNS。利用しない手はない。


Ipsosによると、ノルウェーでのSNSの使用者の割合は、下記の通り。

●Facebook 86%

●Snapchat 60%

●Instagram 54%

●YouTube 42%

●Twitter 29%


SNSを使わないよりは、使ったほうが、市民に親しみを持ってもらえる。ノルウェーでは明白だ。


SNSなら、まかせろ!デジタル化において、全く保守的ではない保守党

6~8日、与党・保守党の総会が開催されていた。

年に一度開催される総会では、これから1年の党の政策などが議論される。1年で、最も重要な集まりだ。

各党の個性が発揮されるのが、この総会、そして選挙とSNSともいえる。

会場のあちらこちらで、政治家たちはスマホで写真を撮っていた。自身のSNSで、会場の様子をフォロワーにアピールする。

ノルウェーの首相もいる「保守党」だが、SNSの使い方においては、全く保守的ではないのが保守党だ。

Facebook、Twitter、Snapchat、Instagramと、主要4チャンネルで、際立って目立っている。

トルビョルン・ルーエ・イーサクセン貿易・教育大臣(写真左の男性)は、Instagramで「キラリと光る王子様的」な存在。

真面目な顔で、ノルウェー的な冗談を連発し、印象に残る投稿をする。

「この女性(青年部の代表)は、『若者』と呼ばれているものらしい。若者という、国の未来、だそうだ。では、私は、『若者』には、優しくいるようにしよう」と会場から投稿している様子。

「ネット時代の政党」でいるためには、PR会社と「青年部」からのアドバイスが必要不可欠となる。

SNSが大好きすぎるノルウェー首相

保守党の党首であるアーナ・ソールバルグ首相は、SNS依存症ではないかと思っている。

彼女は、仕事で、「仕方なく」SNSを使っているわけではない。

首相が、SNSを、ただただ純粋に好きなことを、国民は知っている。

首相は、国会の審議中にポケモンGOをしていて、世界中で話題にもなった。

保守党の総会2日目、コーヒーのおかわりをするために、会場の廊下にいた筆者。

首相と大臣らが、たまたまフォトブース前にいた。

「もしや!」と思って、急いでカメラをもって、駆け付けた。

党員たちが記念撮影をしていたフォトブース。党の政策やスローガンが書かれたプラカードもある。写真はメールに送信し、SNSで拡散できる。

首相の顔と一緒に撮影も可能

この上の写真。右側で青いカツラをかぶっているのは、ヤン・トーレ・サンネル教育・社会統合大臣、保守党の副党首だ。

冗談ではない。普段は、真面目な政治家だ。

後ろ左側にいるのが、首相。

Text&Photo: Asaki Abumi

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