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『ウィリアムテル』 (中高生たちの超短編小説 004)

探究学習塾エイスクールの中高クラス「探究ラボ」に通う16名の中高生たちと4名のメンター・ファシリテーターが書いたオリジナルの『超短編小説(インスタント・フィクション)』を掲載しています。誰が書いたかわからない、ちょっと不思議な約400字の世界をお楽しみ下さい。感想(コメント)もお待ちしております。

起きたくもないのに早く起こされてしまう。

自分の下にいるこの少年もまた恐怖しているんだろう。

気がついたら木の下にいる。また例の人間が弓を構える。

そしていつものように矢が射られる。

体の奥で何かが壊れて、溢れる。

どよめきがおこる。また英雄の小道具で終わりたくない。

私は精一杯身をよじった。つもりでいた。

このまま悲劇でも何でも起こってしまえばいい。少年の命なんか知ったことか。

だがそんな無駄あがきは伝説には不要だった。

リンゴは壊れてつぶれて捨てられた。

少年の上にリンゴを乗せて射るなんてのが間違っていたんだ。

体の痛みが鈍くなって、きえた。彼の伝説は後世に残るだろう。

私を、哀れなリンゴを、少年は忘れずにいてくれるだろうか...

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