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子どもとのコミュニケーションの基本は『ゆるす』

ウサギ仙人(ウ仙)から子育てで大事なことを学んでいた亀子であったが、

亀子「うちの子どもが3歳になって、なかなか言うことを聞かなくなってきたんですけど、どうすればいいんでしょうか?」

ウ仙「それはコミュニケーションの問題じゃな」

亀子「コミュニケーション?」

ウ仙「そうじゃ。コミュニケーションって、日本語では何という?」

亀子「コミュニケーション・日本語でググったら、意思疎通って言葉が出てきますね」

ウ仙「日本語訳としては、そうなんじゃがな。"Communication"という言葉の語源はラテン語の"Communis"なんじゃ」

亀子「それって、国際的な悪の組織みたいな意味じゃ」

ウ仙「それはコミンテルンじゃな。"Communis"は『共有する』という意味の単語じゃ」

亀子「びっくりしました」

ウ仙「だから

コミュニケーションとは、『情報共有する』こと

なんじゃよ」

亀子「それは知りませんでした」

ウ仙「

『子どもが言うことを聞かない』と感じるのは、『子どもが何を考えているか』の情報共有が足りていない

んじゃよ」

亀子「なるほど。情報共有するにはどうすればいいんですか?」

ウ仙「コミュニケーションの基本はまず相手の話を聴くということじゃ」

亀子「聴く?聞くとは違うんですか?」

ウ仙「聞くは英語では言えば”hear”という単語で、どちらかと言えば聞こえてくるというニュアンスじゃな。聴くは英語で"listen to"じゃ。自らの意志で耳に入れるということじゃから、聴くということが必要なんじゃ」

亀子「そんな違いが、あるんですね」

ウ仙「ちなみに『聴す』と書けば、なんと読むかわかるか?」

亀子「えー!『さとす』ですか?」

ウ仙「それは『諭す』じゃな。どちらかというと、言うほうじゃから、反対じゃぞ。小学生なんかに聞けば、『きす』と答えてくれるぞ」

亀子「正解を教えてくださいよ」

ウ仙「正解は『ゆるす』と読むんじゃ。『ゆるす』は他にも『許す』や『赦す』という書き方もあるが、すべて同じ意味でな。

『心をゆるめて、相手を受け入れる』

ということなんじゃよ」

亀子「つながりました」

ウ仙「コミュニケーションの基本である、『話を聴く』ができない人は相手を受け入れるということができていないということじゃな」

亀子「私もそうなんでしょうか?」

ウ仙「まぁこれもやり方がわかれば、簡単じゃから今できていないことは気にすることはないぞ」

亀子「やり方を教えてほしいです」

ウ仙「まぁそう焦るではない。『聴』という漢字は、『耳+直+心』で成り立っているんじゃ」

亀子「耳と心はわかるんですが、直?」

ウ仙「そうじゃ。直の目の部分が90度回転しているんじゃ。だから

『聴く』とは『素直な心で相手の話に耳を傾ける』

ということなんじゃ」

亀子「素直な心でって難しいですね」

ウ仙「親はついつい子どもの話を自分の価値観でとらえがちじゃのう」

亀子「そうですね」

ウ仙「とくにまずいのは先入観を持つことじゃな。次の文章を読んでほしいんじゃ。なんか違和感を感じないか?」

【外科医の内藤さん】
外科医の内藤さんはメスさばきに定評のある優秀な外科医でした。
ある時、内藤さんが宿直をしていると、緊急オペの連絡が入りました。
峠で親子が事故に遭い、父親は即死、息子が重体ということで、その息子をオペすることになりました。
救急車が病院に着き、重体の息子が手術室に運ばれてきました。
内藤さんはその息子の顔を見て、ビックリしました!
なんと内藤さんの息子さんだったんです。

亀子「意味が分かりません」

ウ仙「何がわからないんじゃ?」

亀子「父親は即死で、内藤さんの息子だった??どうしてですか?」

ウ仙「内藤さんと、その息子の関係はわかるか?」

亀子「だって父親は即死だから・・・えっ?まさか隠し子だったとか・・・」

ウ仙「実は内藤さんは女医さんなんじゃ」

亀子「!!お母さんと息子ってことですか?」

ウ仙「そうじゃ。父親が即死じゃから、旦那は即死で息子が重体という、内藤さんにとっては悲劇の話なんじゃがな」

亀子「衝撃です」

ウ仙「おぬしは『内藤さんはメスさばきに定評のある優秀な外科医でした』と聞いて、勝手に男性だと思っておったじゃろ?」

亀子「ドラマ『白い巨塔』みたいな世界を想像していました」

ウ仙「わしは一言も『内藤さんは男性です』と言っておらんのに、先入観で判断してしまっておるんじゃな」

亀子「いやー面目ない」

ウ仙「このように

人間は先入観や自分の価値観で相手の話をとらえがち

になってしまうんじゃ」

亀子「実際に引っかかってしまいましたよ」

ウ仙「

素直な心で相手を受け入れるというのは、先入観や自分の価値観を度外視して、全面的に言うことを受け入れないとダメ

なんじゃ」

亀子「やっぱり難しいですね」

ウ仙「たとえば子どもが『将来、プロ野球選手になりたい』と言い出した。親的には『あんたじゃ無理よ』とか『厳しい世界だからね』と思っても、それは親側の価値観じゃから、『あなたならできるよ』のほうがいいんじゃよ」

亀子「そういうことですか。でも私は口出してしまいそう・・・」

ウ仙「そこを一旦受け入れることが、子どもとのコミュニケーションの基本である情報共有なんじゃ」

亀子「わかりました」

ウ仙「コミュニケーションの技術的な話はまた次の機会にしよう」

亀子「お願いします」

こうして亀子はレベルが上がった。
「ゆるす」の呪文を覚えた。(つづく)


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