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自分の考えの不徹底は、必ず表現に出ます

吉岡友治『シカゴ・スタイルに学ぶ論理的に考え、書く技術』草思社、2015年。

どのようにして文、文章を書くのか。どのようにして主張あるいは反論を構成していくのか。そして、どうすれば批判が行えるのか。こうした点を本書は説明していく。

本書を一読して、その内容には「なるほど」と納得した。しかし、納得できたからといってそれを実践することは容易なことではない。実践するためには、本書で述べられていた内容を常に意識して、文章と向き合うことが求められるのではないか。その結果、時間をかけた末に、成果として結実していくような事柄であるように思われる。きっと、忘れないことが大事なのだろう。

興味を持った点を2つ述べておこう。

一つは列挙型よりも深掘り型にすべきということである。これはチャプター2で述べられていた。列挙型というのは「第一に〜、第二に〜」というように、箇条書きのように文を連ねていくことである。それに対して深掘り型は、一つの事柄について、丁寧に深く切り込んでいくやり方である。本書では、このような深掘り型は、その問題をよく考えているということであるとして、深掘り型での文章執筆を進めている。私の文章は列挙型に留まるところが多いように感じているため、私自身の思考スタイルも再考していく必要があるのではないかと思った。

もう一つは、ある議論において第三の視点を提供することである。ある論争について、賛成と反対という二項対立から逃れることはまず不可能である。しかし、二項対立では、自分と異なる意見の人たちにも自分たちの主張を聞いてもらうことが難しい場合がある。そのため、二項対立を脱却する必要があり、それにはその議論で(暗黙に)共有されている前提を利用することを挙げている。前提を批判すれば、批判できれば、第三の視点を提供して、影響力を持ちうるというわけだ。しばしば「前提を疑え」と言われる。ここでの本書による説明は、この言葉の意味がよくわかるような内容になっていると感じた。


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