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【年間レポ】ひっそりと楽しむ美術館巡り Vo.1- 2023/12/23 -

普段生活を送っているなかで芸術作品にふれる機会はどのくらいあるのか、ふと考えることがあります。芸術作品は街中のいたるところに溶け込んでいますが、よく目立つものからひっそりと佇んで景観の一部になっているものまでさまざまです。

例えば、駅前によくあるオブジェ。一般には文化的な意義をもって作られたものだと思いますが、それはいつの間にか待ち合わせの目印になったりと駅の象徴になってくれています。オブジェのような大々的な作品が人に与えるインパクトは大きく、はじめて駅に訪れた人にとっては特に印象に残りやすいですよね。
私は初めて降りた駅のホームでアート作品を見かけると、いつも真っ先に写真を撮ってしまいます。そのあと、どんなタイトルなのかを知り、どんな人が作ったのかを知り、そしていろんな角度から眺めてみたりします。作品を見てすぐに体がカメラを構えてしまう、そうさせてしまうのが芸術のすごいところだと思っています。

広島駅 新幹線口ひろば 「朝の像」

街の広告塔になるようなスケールの大きい作品もあれば、反対に存在感の薄い、しかし何かシンパシーを感じさせる作品もたくさんあります。個人的には街で見かけて嬉しいのがこちらのタイプです。ふと見かけたときに、得をしたような気持ちにさせてくれる作品。こういったものの多くは作成者が不明のままな場合がほとんどですが、見かけた人を元気にしてくれていることに違いはありません。日常にささいな彩りを添えてくれる芸術家たちに感謝したいですね。

東京観光の際に千代田区で見かけたビル壁画

作品を通して新しい気づきが芽生え、色々な物事について考えさせられるのは芸術の魅力の一つ。この記事ではわたしがひっそりと楽しむ”美術館”巡りを、2023年に訪れたものを中心に年間レポートとしてまとめてみたいと思います。

1.福岡市立美術館


5月14日に訪れたのは福岡市立美術館です。もうひとつ見るつもりでいた福岡県立美術館はこの日は閉館でした。

大濠公園



大きな池を囲うようにして広がる大濠公園をのなかから、急に美術館の入り口が見えてきたので驚きました。大濠公園は天気のいい日にまったりくつろげそうな、ゆったりとした時の流れを感じられる雰囲気が素敵です。

まず2F 屋外のスペースには草間彌生さんの代表的なデザインのひとつでもある南瓜のオブジェがポツンと展示されていました。
あいにく修繕中とのことで近寄って見ることはできませんでしたが、とても異彩な存在感を放っているのが写真からでも伝わると思います。

草間彌生「南瓜」



草間さんは日本人なら誰でも見聞きしたことのあるような世界的にも名のしれた芸術家です。一目見て誰の作品なのかが分かる特徴的なデザインは、これぞ「芸術」という気がします。

まだら模様とビビットな色相は見ると私は少しゾッとしてしまうんよね。ですがそこに奥深さを感じられて、より親しみを抱きやすい作品になっています。多くの人を魅了している秘訣はそういった“おぞましさ”が作品に共存しているからではないかとも思いました。

屋外スペースの隅に、今度は池を背にして女体のブロンズ像が見られました。木内海さんの「エーゲ海へ捧ぐ」。

木内海「エーゲ海へ捧ぐ」


エーゲ海は地中海の一部であるギリシャ近辺の海域です。神話の女神のような風貌に、ところどころ具象を欠いた表現が見る人の想像力を掻き立ててくれます。調べると木内さんはヨーロッパに由来のある彫刻家とのことで、日本の各所に彫刻として残すことで西洋の神秘さを伝えてくれているようです。

館内では3つほど個別展示があり、思っているよりも展示作品が多くて純粋に美術館としての高い充実度が感じられました。

なかでも私が注目したのが市内在住のクリエーターによる作品のみを展示しているブースです。福岡市内にアトリエを持つようなプロフェッショナルな方から学生絵描きまで。地域ならではの文化や繋がり合いが感じられてとても良かったです。

以下、写真撮影が可能だった2枚を紹介します。

鎌田友介《Japanese house (Taiwan/Brazil/Korea/U.S/Japan)》

こちらの作品は

鎌田友介さん /《Japanese house (Taiwan/Brazil/Korea/U.S/Japan)》

鎌田さんは海外にある日本家屋の調査を行っているそうで、第二次世界大戦を景気に点々と建設された日本家屋の歴史を美術作品として表しているようです。切り取った図面や写真、実際の木材が継ぎ接ぎしてあり今までに見たことのない雰囲気の作品でした。


そのとなりには背丈の2倍ほどのキャンバスが展示してありました。

チュン・ユジュン《Let's all go to the celebration square of victory》


チュン・ユジュンさん / 《Let's all go to the celebration square of victory》

この絵にはダイナミックさがありつつも、かなり緻密なデザインが施されていました。絵を遠くから薄めで見ると分かりやすいですが、ドットの切れ目を輪郭として目で追うと人が浮かび上がってきます。

作者のチュンさんは在日朝鮮人の方で、日本で生きることに関しての生命をアートとして表現しているそうです。見る視点によって見方の変わる作品の仕掛けは、かなり精巧な技術を感じられて心を奪われました。

あらゆる作品が結集していて時間を忘れて楽しむことができました。福岡市立美術館は来年も是非訪れたいです。

2.山口県立美術館

 さて次は山口県立美術館で開催された展示会も紹介したいと思います。私の居住地でもあるので、今年は計5回見に行くことができました。今年の展示会も見ごたえのあるものばかりで早速来年が楽しみとなっています。

今年の大本命だったはなんといってもジブリパークとジブリ展です。世界中から愛されているジブリ作品の展示に加えて、去年開園して話題となったジブリパークの関連作品を見ることができました。

「ジブリパークとジブリ展」
https://ghiblipark-exhibition.jp/yamaguchi/

開催次期の7~9月は連日多くの来場者がジブリ展をめあてに訪れていました。いつもはまばらで閑散としている美術館ですが、期間中は入場列がきちんと整理され、スタッフの数の多さには少し戸惑ってしまうほどでした。

展示品の多くは作品の誕生した背景から設定資料の数々、実際に起こしたラフなどもあって、ジブリファンにとってはたまらない内容となっていました。

私がジブリのアニメーションのなかで特に好きなのは建物です。ジブリの幻想的な世界にはいろんな建造物が出てきますが、どれも本当に現実の世界にあったならな、と思ってしまうほどに魅力的です。設定資料にはこの建物のデザインについてのアイデアがあちらこちらメモ書きされている様子でした。クリエーターの一人ひとりが搾り出した知恵と努力の結晶があのような世界観を生み出していることがよく理解できました。

そして隣のブースにはジブリパークの展示。メイとサツキの引越し先のお家、湯婆婆のお部屋やカオナシと相乗りできる電車などジブリの名シーンが立体となって現れたときのは、子供の頃の無邪気さが蘇ってきました。ジブリ作品には好奇心を揺さぶるものがありますよね。

撮影可能だったものは以下に載せておきます。

となりのトトロではおなじみの家屋
父の書斎
細部まで精巧に再現されたミニチュア
湯婆婆との契約です。緊張//

他にもハウルの城の装甲に包まれた足の展示などはインパクトが大きかったです。足だけで背丈の1.5倍くらいあるのでやっぱり原寸大にするととてつもなく大きい・・・。

加えて、ジブリ作品のなかでは目新しい3DCG作品を用いたアニメーション映画「アーヤと魔女」はアニメーションができるまでの実際の工程や、各キャラクターのコンセプトビジュアルまでが詳細に網羅された特集も組まれていました。これまでのジブリらしさとまた違った映像美が素敵で、ピクサー映画のような雰囲気を感じさせる作品です。日本アニメは実にバリエーションが豊富ですよね。

県立美術館ではジブリ展の他にも、山口にゆかりのある歴史的な作家や詩人、随筆家から水墨画家まで本当に幅広いジャンルの作品を見ることができます。

特に今年印象的だったのは宇部市出身の西洋画家・松田正平の生誕110年を記念した「松田正平展」や平安時代の長編小説源氏物語の絵巻に登場する日本画を解説した「源氏物語絵巻展」。国宝や重要文化財に指定された作品を見ることは日本の歴史をより深く知るいいきっかけになると思います。期間限定の展示は欠かさずに見ておきたいところです。

3.YCAM (山口情報芸術センター)

夏頃に訪れたYCAM。ここでは一味違った芸術の知見が得られます。

下の写真はスタジオ上映イベント「浪のしたにも都のさぶらふぞ」で使用された瑠璃人形。台湾のアーティストによって演出される人形浄瑠璃は門司の発展や戦争の記憶、平家物語などの歴史を表現しているようでした。

私は一度見ただけでは理解が追いつかないほどに、カオティックなアート表現がなされている舞台でした。本編ではVRゴーグルを装着した舞妓が舞台に上り、両脇のスクリーンから当時の歴史背景が紹介され、人形浄瑠璃が展開されていきます。

目まぐるしいVRの映像と古風な人形劇、先端技術と融合した新しい芸術のあり方を示した趣深い作品でした。

「浪のしたにも都のさぶらふぞ」で用いられた瑠璃人形
https://www.ycam.jp/events/2023/there-is-another-capital-beneath-the-waves/


Ex. いい感じの写真


電飾があしらわれた東京タワーの模型

もうすぐ年明けということで、今回は年間を通して訪れた美術館についてまとめてみました。来年度はどんな展覧会が開かれるのか楽しみです。

今後も定期的に幅広いジャンルの芸術を見て、聞いて、感じたことをひっそりとこのnoteにまとめていければと思います。。

それでは、、良いお年をお過ごしください~






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