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熊本の小劇場でミュージカルをロングラン上演するということ

熊本にstudio in.K.という小劇場があります。転回社という団体が制作をやっていて、内部にin.K. Musical Studioという団体もあり、年間を通して様々な作品を上演しています。

このstudio in.K.というのは、元劇団四季の小松野希海と、熊本でずっと演劇活動を続けてきた第七インターチェンジの亀井純太郎の二人が企画し、誕生したものです。

僕もそのstudio in.K.で制作面のお手伝いをしています。大学卒業からはずっとin.K.での活動ばかりやってきたのであまり他の団体のことを知らなかったのですが、最近色々な団体の稽古見学にお邪魔したり制作事情をお聞きしたりする上で、in.K.もなかなか面白いことをやっているんだなあという思いを強くしました。

熊本の小劇場ミュージカルスタジオstudio in.K.ではどのような活動をしているのか。ここでちょっと紹介しますね。

熊本でミュージカルのロングラン公演

この記事を書いているまさに今、哲学ミュージカル『饗宴』を上演しています。プラトンの対話篇『饗宴』をミュージカライズしたもので、来ていただいたお客様にはなかなかに好評です。

内容も去ることながら、公演回数が他の団体よりもちょっと多いかもしれません。地方の演劇では、土日に3〜4回公演するのが普通だと思います。もちろんin.K.でもそういう日程の公演は数多く行なっています。しかし昨年に上演したシェイクスピアミュージカル『ジョン王』からちょっと話が変わってきました。


『ジョン王』は、2017年末から2018年3月まで、4ヶ月で20回以上の上演を行いました。役者も学校に行ったり別の仕事があったりする人が多いので、すべての公演に出るというわけにはいきません。そのため、複数の人が複数の役を覚え、出れない人がいる回は別の人が出演したり、役をスイッチしたりといったことを行いました。

しかし『ジョン王』の公演はなかなか順調にいきませんでした。

studio in.K.は、およそ40人ほどを収容することができます。しかし『ジョン王』の平日に上演した回などでは、観客数が3人ということもありました。

出演している人よりも、お客さんの方がはるかに少ない現実。本当はもっともっとお客さんを呼びたい。けれど、そのときは目の前のお客さんに最高の作品を届けることに集中しました。

『饗宴』のスタート

それからおよそ1年の時を経て、2019年の1月から上演しているのが先に紹介した哲学ミュージカル『饗宴』です。

哲学書をミュージカルに! という構想を聞いた時は、正直この人たちどうにかしちゃったんじゃないかと思いましたが、実際に稽古を見てみると疑念は氷解。めっちゃ面白い!

しかもこの作品を読んだ後に原書の『饗宴』を読むと、驚くほど内容がするすると入ってくるのです。しかも、原書を読むことでミュージカルに対する理解も深まります。

in.K.の面白さは、僕は「祭り」感にあると思っています。たぶんストーリーなんて分からなくても、きっとどうでも良くて。普通のミュージカルとは違ってずっとビート刻んでずっと歌ってるし、照明はちっかんちっかん光って役者は踊り狂う。気がつけば、僕たちもその祭りの一部に取り込まれているような気持ちになります。祭り感をより楽しみたい人は、絶対に一番前の席で見てほしい。触れてしまいそうな位置まで役者がやってきます。

1月、2月と合計9回の上演が終了しました。いずれもたくさんのお客様に来ていただいており、メンバー一同大変喜んでおります。少なくとも、『ジョン王』の一番少なかったときよりは来ているので良し!

ロングランミュージカルを成功させるために

熊本という地方で、しかも収容客数がおよそ40人の小劇場でロングランのミュージカルをやる。これは普通の仕組みでは決して辿りつけなかったと思います。

仕事をしながら、あるいは学校に行きながら、皆で何度も集まって稽古をしました。そうするうちに、稽古はどんどん日常の中に組み込まれていきます。そしてロングランが始まってしまうと、本番すらも日常になってしまいました。

平日公演の場合は、それぞれが学校や仕事が終わった後に駆けつけて上演を行います。そして終演後は、少しの反省会をしてそれぞれの家に帰っていく…。土日にお仕事がある人は、午前中に仕事をして帰るその足でスタジオに来てミュージカルに出演することだってあります。そういった各人の努力が、ロングランミュージカルを成功させているのです。

しかし苦しんでいるところもあります。それは、やっぱりどうしたってまだまだお客さんが足りないということです。

もちろん『ジョン王』のときに比べれば格段にお客さんは来ていただけるようになりました。しかしロングラン公演に耐えうるくらいの演劇ファンが熊本にいるかというと、そんなことはありません。脚本や演出は稽古の度に変わってしまうので、一度として同じ公演はありません。実際、上演時間は初演のときに比べて20分も伸びています。その面白さに気づいて、何度も足を運んでいただけるお客様も増えています。

ロングラン公演をするにあたって、そしてstudio in.K.を維持していくにあたって、たくさんのお客様に来ていただくことは必須条件です。どうやったら演劇を見たことのない熊本の方に届くのだろう、そしてどうやったら熊本県外の人にも届くのだろう、と頭を抱える毎日です。

僕たちはこれからも、どんどん面白いミュージカルを作っていきたいと考えています。そしてこの面白さを知ってもらいたい。熊本にこんな演劇をやっている集団があるんだ、ということを知ってもらいたい。

もしこの記事を読んで少しでも気になったという方は、ぜひ熊本までお越しください。

観光する場所としては、今は復興中ですがやはり熊本城は良いところです。レンタカーを借りて、天草や阿蘇に行くのもおすすめです。

studio in.k.は、熊本の市街地から市電で1本、およそ10分くらいのところにあります。上演時間も夜は20:00から1時半程度なので、ホテルにチェックインしてからゆっくりお越しいただくことができます。終演後はまた市街地に戻って、馬刺しや辛子蓮根をはじめとした美味しいご飯や、美味しい焼酎をお楽しみいただけます。

熊本観光の際は、ぜひstudio in.K.をよろしくお願いいたしますね!

Twitter→@inkMusical
Instagram→@studio_in.k.
Facebook→in.K. Musical Studio

チケットのご購入はこちらから!→https://tenkai.peatix.com/


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あとーす

pixiv inc. ◀︎ 印刷営業 ◀︎ 熊大文学部卒 / インターネットで文芸をもっとおもしろくするために、文芸系メディア「蓼食う本の虫」、魔法世界のニュースメディア「Maho ONLINE」などを運営しています。小劇場ミュージカルの制作として広報や写真・動画撮影なども。

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コメント2件

ロングラン。しかも集客を得にくい地方の小劇場で…。
他にされているところがあるのか、…。
物凄い試みですね、改めて考えると…!
地方から大都市へ観劇に行くだけでなく、大都市から地方へ観光も兼ねて観劇しに行くみたいな機会が増えたらいいですね!
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