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ニーズを突き詰めて新たなベネフィットを見い出す~どうやって新たな市場を開拓するか~

 日経電子版の記事【洗濯機が不登校を解決? データが発見した新市場】は、ニーズを突き詰めた結果、新たなベネフィットが見い出され、新たな市場の開拓へと繋がった稀有な事例です。



 さっそく、どのような経過で新たな市場が開拓されたのか、記事の内容を整理してみると――

▶新市場開拓に至る過程

【社会課題】・・・・・・不登校
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  研究・分析
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 【原因】・・・・・・・・原因の一つに、汚れた服で学校に行きたくない、
   ⇩       という子供の切実な思いがある。
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解決策の模索
  

  【ニーズ】・・・・・・・学校の洗濯機で洗う。
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 CSR活動・・・・・・・・・小学校に業務用洗濯乾燥機を寄贈。
   ⇩      児童は無償で使える。
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IoTでデータ収集・・・・利用時に学生証をかざすことでデータを集め、
   ⇩       利用データと出欠データを突き合わせて、不登校傾向
        ⇩                       にあった児童の出席状況の改善を確認。
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【ベネフィット】・・・児童が人間としての尊厳を取り戻す。
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 【新市場】・・・・・・・洗濯機は小学校にとって必要不可欠な備品である。


 このような経過から浮かび上がってくるのは――


(1)社会課題を深く掘り下げる

 何と言っても、「汚れた服で学校に行きたくない、 という子供の切実な思い」に気付いた事が大きいと思います。不登校という社会課題について、外部機関の研究を参照するにせよ、自社で調査するにせよ、個人的な体験から考察するにせよ、まずは、子どもの気持ちに寄り添うことからすべては始まっています。それなくして、不登校と洗濯機という全く脈絡のないように見えるものを結び付けることなど出来ないでしょう。

 社会課題をその一部でも解決しようとする時、その表層だけを見ていても何もヒントを得られない事は間違いありません。


(2)AIによるビッグデータ解析

 「不登校と洗濯機」のような何の脈絡もなく見えるものを繋ぐためには、人間が課題を徹底的に分析する他に、AIによるビッグデータ解析も大きな助けになりそうです。

 何の先入観も持たないAIが、膨大なビッグデータを解析して繋げた糸、『関連』は、どんなに突拍子もなく見えても、検討の価値があるかも知れません。


(3)IoTによる検証

 本当に学校にある洗濯機によって不登校が改善するのか、児童にストレスを与えることなく検証するには、洗濯機をIoTデバイスにすることが最も確実な方法です。

 IoTというツールを得たことで、新たな市場を見い出すためのデータが収集できるだけでなく、スピーディーでリアルタイムの検証⇨修正が可能となった、と言えそうです。


(4)CSR活動は、新たな市場へと繋がる

 そもそも、企業の存在意義が『社会課題のソリューションを提供する』ことにあるとするなら、付け焼き刃でない真摯なCSR活動が、やがて、新規事業、新市場へと繋がっていっても何ら不思議はありません。

 持続可能性という観点からも、企業は、CSR活動に本気で取り組む必要がありそうです。


(5)メリットとベネフィット

 このような新市場開拓のプロセスを『商品』の視点から定義するなら、その商品のメリットがもたらし得る新たなベネフィットを発見するプロセスである、と言えそうです。

▶商品のメリットとベネフィット

メリット=商品の機能=『効果』=衣類の清潔の維持

ベネフィット=商品のメリットがもたらすより本質的な利益
        =『体験』
=健康・衛生・人間の尊厳


 ユーザーのニーズとプロダクトのメリットが出会い、繋がった時、その商品は新たなベネフィットを得て、新市場が拓ける。ニーズとメリットを繋げる作業は、産業における永遠の課題と言えそうです。





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