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【第3回 第1編】イトバナシができるまで

【あらすじ】

日本にインドの刺繍ブランドがあるのを知っていますか?
その名はitobanashi。

itobanashiの服やストールには、
インドの伝統的な刺繍がたっぷりと施されています。

その魅力を知ってほしいという想いから、
itobanashiのお話を3回に分けてお届けします。

最終回となる第3回はイトバナシと伊達さんについて。
いちばん大切な部分でたくさんのお話があるため、読みやすく楽しめるように4部構成とさせていただきました。

第1編は、イトバナシ誕生につながる大学院時代の留学とビジネスコンテスト出場のお話。

第2編は、学部生の頃、高校生の頃と遡りながらなぜインドに行くようになったのかというお話。

第3編は、ブランドitobanashiのコンセプトや会社名「イトバナシ」に込められた思いについてのお話。

第4編は、実際に起業をしてみて感じたことととこれからの夢についてのお話。

インタビューを通しての物語もいよいよクライマックス。最後までお楽しみください。

伊達文香さん
●株式会社イトバナシ 代表兼デザイナー
●広島大学大学院教育学研究科修了
●大学院時代にインドへ留学し、現地でファッションショーを開催。ビジネスコンテストでの優勝を経て起業。

まずは第1編からどうぞ。

—itobanashiと伊達文香さん自身について聞いていきたいと思います。まず、itobanashiを始めたきっかけについてお聞かせください。

きっかけは大学院生のときでした。修士1年と2年の間で1年間休学し、半年インドに留学しました。文部科学省の「トビタテ留学JAPAN」を利用し、留学中に自分のプロジェクトができたんです。その当時、私がプロジェクトとしてやりたいと思っていたのはファッションショーで、学部生の頃の体験が元になっていました。

留学より前、学部生の間も半年間バイトしてお金を貯めてインドに行くということをずっとやっていたんです。そこからIDEC(広島大学国際協力研究科)の先輩たちとチームを組んでワークキャンプをするのにはまって、インドの女性を支援しているNGO団体を巡りました。

インドでは女性の人身売買が問題になっています。人身売買…Human Traffickingの被害に遭い、売り飛ばされ、そこから逃げてきた女の子たちは基礎教育を受けていないため、生活の保障がありません。その子たちの職業訓練の一環で、縫製の技術が身につくよう支援しているNGO団体がたくさんあります。その中でバッグやストールとしてすごく可愛い製品を作っている団体(現地NGO : Destiny) に出会いました。話を聞いてみると、「慢性的に人手不足で、販売プロモーションにもっと力を入れたいのにできていない」という悩みがありました。その悩みを聞いた時に、「私が面白いと思っていることで彼女たちと何かできないかな」と思ったんです。

私は大学でずっと「まーまー堂」というファッションサークルに所属していました。自分で服を作り友達に着てもらってファッションショーをするというのがすごく楽しいなーと思っていましたし、自分の自信につながるというのも大学祭などでの経験で感じていました。そこで、「インドでファッションショーをする」というプロジェクトで留学したんです。
私一人でファッションショーをやりきるのは難しいので、広大の中にインドの女性支援を目標にしたファッションショーを開催するサークルをつくりました。「サークルの代表として先にインド行ってます」という形にして留学したんですね(笑)

それで2015年9月、インドでのファッションショーを実際にやりました。他のサークルメンバーも夏休み中なのでインドに来てもらい、現地の人がお客さんとして200人くらい来てくださってとても盛り上がりました。
なるべく多くの人にファッションショーを見にきてもらうため、建て付けは「日本とインドの文化交流のイベント」という形にしました。そして、すごくかっこいいファッションショーを見ていただいたあとに「スタイリングしたバッグやストールをつくった人たちは実は人身売買という社会課題に関係のある女性たちだ」という話をしたんです。

作ってくれた女性たちは人身売買の被害を受けて顔出しができないので舞台には上がれなかったんですが、自分たちのつくったものが注目を浴びて盛り上がるというのは彼女たちにとって人生で初めての経験でありすごく楽しんでくれました。
開催までトラブル続きで大変でしたが、本当にやってよかったなぁと思いました。その反面、自分は奨学金で行っており、ファッションショーにかかったお金はクラウドファンディングで集めていたので寄付集めに奔走してしまい、「ものづくりやコミュニケーションのところにもっと入りたかったのにできなかった」という後悔がありました。

ファッションショーの準備をしながら、「活動を続けたいけど、どうしたらいいんだろう…」と悩んでいた時に、現地のある一人の女性がカンタ刺繍という刺し子の刺繍をしていたんです。「すごいかわいい刺繍だね」って言葉をかけたら「この刺繍は自分の地元で伝統的に続いているもので、この刺繍をすると故郷のことを思い返せるのよ」って話してくれました。その言葉を聞いて、すごいなと思ったんです。
彼女の生い立ちを”辛い過去”と決めつけるのはよくないんですが、「大変なバックグラウンドがあってもなお、故郷を慈しめる、愛おしいと思えるきっかけとして刺繍があるんだ」と思いました。そこは面白い表現技法だなと思って、刺繍に可能性を感じました。

ファッションショーが終わった後も留学期間が2ヶ月ほど残っていたので、刺繍の産地を旅してみたんです。インド各地を旅して話を聞いていくほど、それぞれの地域で有名な刺繍がその土地の歴史や文化と紐づいているのが面白いと感じました。そして、「自分がこうして感動したものを日本の人にも知ってもらいたいな」と思い、インドの伝統的な刺繍を自分が好きな「服」という形にしようと考えました。それまで服飾をちゃんと学んだこともビジネスをやったこともありませんでしたが、とにかくプランを考え、インドから日本のビジネスコンテスト(以下、ビジコン)に応募しました。「キャンパスベンチャーグランプリ」という学生向けのビジコンです。その最終審査会が留学最終日の次の日だったんですね。「昨日までインド行ってました〜」なんてネタを入れつつプレゼンをやりました(笑)
それで、優勝させてもらって賞金をいただき、そのいただいた賞金でお洋服のサンプルをつくることになりました。そこからがitobanashiのスタートですね。

留学をきっかけにして、ビジコンに優勝し、周りの大人たちがあれよあれよと「縫製工場紹介するよ!」とか「学生だったらこの人に相談したらいいよ」と声をかけてくださいました。広島はそういったアツい大人の人が多いんです。色々と紹介していただいて周りを固められる形でスタートしましたね(笑)

—ありがとうございます。話を聞いていると伊達さんの行動力がすごいです!イトバナシができるまでにたくさんの体験と感じたことがあったんですね。ビジネスコンテストに優勝された後のお話もお聞かせください。
(第2編へつづく)

(写真撮影:廣瀬佑太、インド留学中の様子の写真提供:伊達文香)

第1編では、イトバナシ誕生となる伊達さんの留学から起業にいたるまでのお話をお届けしました。
次は、ビジネスコンテスト優勝後のお話と、なぜインドとのつながりができたのか、伊達さんの学部生の頃、高校生の頃と遡る形で伊達さん自身についてさらに深く迫っていきます。

【第3回 第2編】インドとの出会い

【第2回 後編】あるものをよりよく活かして

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〈itobanashiのYouTube動画〉

【刺繍との出会いについて話します】
ブランドitobanashiが誕生するきっかけとなった伊達さんとインド刺繍との出会い。そのエピソードについて語られています。

itobanashiのHP: https://itobanashi.com/

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【魅力発掘家】として、様々な"魅力"を発掘中です。 コトバにすることで発掘したものに磨きをかけ、記事を通してより広く届けることでさらなる魅力へとつながってほしいなと思っています。