アメリカで過ごす最後の9/11に思うこと
はじめまして!私はアメリカで心理学を勉強している大学4年生です。
ニューヨークの同時多発テロから18年が経ちました。大学入学と同時にアメリカに来て、現在4年生である私にとって、今日はアメリカで迎える4度目の9/11です。卒業後はアメリカに残らないので、アメリカで迎える最後の9/11でもあります。そんな日に思うことを、徒然なるままに書きたいと思います。(特に"有益"なことは書いていません!笑)
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テロ発生当時私は4歳で、正直全く記憶がありません。年を重ねても、ニューヨークで起きた同時多発テロはどこか遠い存在のままでした。大人が当時を振り返って「あの世界貿易センタービルが崩れていく様子をニュースで見て信じられなかった」とか「いつもどおりの朝に突然起きたことだったからすごく怖いと思った」と言うのを聞いて、「世界の中心のニューヨークでそんなことがあったなんて驚きだなぁ」「今のニューヨークの姿からは信じられないなぁ」「私の身にもいつ何が起きるかわからないから怖いなぁ」と思う程度でした。事件の重大さは理解しつつも、あくまで「遠くで起きた事件」であり、9/11をあまり身近に感じられないままでした。
初めて9/11をより身近に感じることができたのは、3年前の大学1年生のときです。1年生の必修であるライティング基礎のクラスで出された課題が、9/11についての感想文でした。一般的にアメリカの大学は9月始まりなので、入学してすぐ、英語もわからないし大学生活にも慣れていない頃だったのを覚えています。
私のライティングの先生は、ニューヨークが大好きなおじさん先生でした。ニューヨークで大学に行き、その後仕事もして、”青春”をニューヨークで過ごした人でした。別の州で教鞭をとっている今でも、ニューヨークが大好きで第二の故郷と思っている事がいつも伝わってきました。その先生の口が語る9/11は、今まで聞いた9/11に関するどの話よりもリアルで、私に訴えかけるものがありました。
クラスメイトの中には、親族にテロの被害者になった人もいました。中には、お父さんが負傷して今も被害に苦しんでいるという人もいました。クラス全体で各々の経験談と意見を交わし、事件の悲惨さを再確認し、慰め合いました。そんな彼らを前にして、はじめて9/11を少し身近な事として感じたことと、自分がその空間の中でアウトサイダーな気がしたことを覚えています。
アメリカの人たちにとって9/11は、自国のシンボルでもあるニューヨークに大きな被害を受けた事に対する怒りと悲しみに包まれる日。そんなテロを思い出しながら、一致団結する事と愛国心の重要さを改めて胸に刻む日。クラスを後にしながら、そんなふうに感じていたように思います。9/11を「初めて身近に感じた」とは言いながらも、まだ「アメリカ人」である「彼ら」を外から観察しているような気分でした。
ワールドトレードセンターの跡地である”グラウンド・ゼロ”にある、水のモニュメント。水を囲む石碑には犠牲者の方の名前が。
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この3年間で、アメリカは私に本当に多くのことを教えてくれました。楽しい経験も辛い経験も含め、たくさんの経験を通して、他ではなし得ない成長ができたと思います。
アメリカはすごく愛国心の強い国です。その愛国心が、国民一人ひとりにしっかりと根付いているのもアメリカのすごいところだと思います。その強い愛国心は不思議なパワーがあり、留学生としてやってきた私も、たった3年のうちにすっかりアメリカ大好き人間になっていました。(好きになれないところもまだたくさんありますが!)
9/11は間違いなく、アメリカ国民の愛国心や国民のユニティをいっそう強めた決定的な出来事だったはずです。自国の絆をもって、悪に負けないように戦うのはきっと良いことです。ただその裏側で、強い愛国心が故に部外者をたくさん生成して、彼らの居場所を無くしていたのも事実でしょう。
自分がムスリムであることを堂々と言えなくなったり、ヒジャブを街で着れなくなったり。イスラム教の人に対するイメージや態度は悪くなり、その影響は今でもあります。たとえ彼らがアメリカで生まれたアメリカ国民であったとしても、部外者や悪者のように扱われ、ホームであるはずの場所で生き辛さを感じざるを得ない、そんな現状があります。
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私には大学で出会ったイスラム教の友達がいます。すごく信仰が厚くて、まっすぐにアッラーのことを思っている子です。礼拝の時間にアラームをセットしていて、夜中であろうが朝方であろうが起きて礼拝し、ラマダンは忠実に守り、フェイスブックやインスタグラムにはアッラーの教えを投稿していました。イスラム教の人とこんなに近くで生活することは初めてだったので、毎日のように新しい驚きと学びをもらっていたのを覚えています。
学生数がすごく少なく、留学生の割合も小さかったこともあってか、学内でヒジャブを着ていたのは彼女だけでした。キャンパスを歩いていてじろじろ見られるのが嫌だし、イスラム教ということで差別を受けるのが怖い。両親も心配している。と、彼女が話していたのを覚えています。また、都市にいけば差別はより顕著で、従姉妹の居るニューヨークではヒジャブを着た女性がハラスメントに遭うこともしょっちゅうだから怖い、彼女のことが毎日すごく心配、というのを聞いて、私も同じように怖くなりました。
今まで全く身近に感じられないどころか、どんな生活をしているかすら見当もつかなくて、遠い国に住む自分とは全然違う「誰か」だったムスリムの人たちのことを、すこし身近に感じられて、一緒になって「怖い」と思った瞬間でした。
大学の図書館の前にある国旗も、今日はおりていました。
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イスラムの友人を例にイスラム教の人たちのことについて書きましたが、同じことが他の集団にも言えます。メキシコや韓国など、親世代が各国から移民としてアメリカに来た仲良しの友達のおかげで、彼らと同じように移民としてアメリカに来た人たちのことをもっと身近に感じられるようになりました。
彼ら自身が移民の子どもとしてアメリカで生活することについて思うこと、彼らの移民問題/アメリカ政治についての考え、彼らの親世代が移民として来たときに越えてきた試練について知り、考えることで、今までよりも自分ごととしてそれらの問題をとらえられるようになりました。
アフリカン・アメリカンやLGBTQなど、他にもあります。アメリカで出会った多くの人々を通して、今までは「他人」「遠くの誰か」だった人たちを、より身近に、自分ごととして感じることができるようになったと感じます。彼らの視点を、自分の中にも少し取り込むことができたような気がします。
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心理学で、"perspective-taking"という言葉があります。噛み砕いて言うと「自分自身の視点に留まらず、他人の視点から物事・世界を見ること」です。日本でも「共感」や「エンパシー」は最近よく聞く言葉ですが、これらに近いコンセプトです。そしてperspective-takingは、debiasing(バイアスを外すこと)のための有効な手段の1つであることが発見されています。そうすることで、属性によって無条件につけられるレッテル(ポジティブな場合もネガティブな場合もある)を減らし、その人を個人として見ることができます。
人種のるつぼであるアメリカでいろいろな人に出会った3年間は、まさに私にperspective-takingの機会をたくさんくれたと思います。「わかったつもり」にならないように気をつけないといけませんが、自分と「違う」としか思っていなかった人たちをより良く知ることで、自分ごととして捉えられる世界の幅が広がることは、とても良いことだと思うし、アメリカ留学が与えてくれた財産だと思います。
9/11はhostility(敵意)が引き起こした事件であり、結果としてさらなるhostilityを双方に生んだ事件です。各々が自分と違う人達のことを少しでも自分ごととして捉えられるようになったら、このような事件は起きないのだろうな、と思います。綺麗事かもしれませんが(簡単に言って片付けられないくらいの問題の根深さを感じられた事も、この3年間の学びです)、そんなことを考えた、アメリカで過ごす最後の9/11でした。
ニューヨークシティの夜景。ニューヨークはバスで気軽に行けるので結構よく行きます。(約5時間、安い時で片道$10以下!)
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9/11に、3年前の自分を思い返しながら、つらつらと日記に書くように書きました。(9/11に書き始めたのに投稿するのが9/12になってしまいました、しかも日本ではもう9/13…)色んなことを詰め込んでしまったため、たくさんの「???」を残してしまっていたらすみません。最後まで読んで頂きありがとうございました。
今日は、アウトサイダーな気がしていた3年前の自分とは違って、たくさんの素敵な人との出会いとかけがえのない経験をくれた大切なアメリカのことを想いながら、18年前にこの国で起きた事件を振り返ることができたように思います。
アメリカで生活する/学問と向き合う中での気付きや考えたことについて、これから少しずつ書いていきたいなぁと思っているので、これからもどうぞよろしくお願いします!!
[ おわり ]
** 余談 **
当日、トランプ大統領はペンタゴンで追悼式典に出席していました。(実はこのペンタゴン私の大学からメトロで10分くらいのところにあります!)各ニュースサイトには、テロに関する記事ももちろんありましたが、やっぱりトランプがそこで行ったスピーチの揚げ足取りのような記事が目立つなあと思いました笑
ここでも結局自分の事/選挙の事ばっかやないか!とか、事件当日の自分の経験談の内容が矛盾しとる!とか。トランプはスピーチで愛国心や国民が団結することについて話したそうですが、アンチ・トランプがトランプをめぐって結束を強めているのは間違いないですよね(今に始まったことではないですが笑)。その意味でも、トランプはアメリカの”愛国心”や”ユニティ”を高める事に圧倒的に貢献している存在ですね。笑
** おまけ **
私は大学2年生の途中でアメリカの小規模な大学から現在の総合大学に編入しているので、話に出てきたイスラム教の子とは今は別々の大学に通っています。本当に優しくておもしろくてスマートで大好きな友達で、たくさんの良い思い出があるのですが、中でも忘れられないおもしろい話があります。
授業の帰り道に2人で話していたら突然彼女が黙りこんで、あれ?と思ったら急に彼女の目つきが変わって、その目からはなんと涙が出てきたので、「え!!!どうしたの!!!」と聞いたら、「え!あくび!!!!」と返ってきたのがすっごくおもしろくて、2人で5分間くらい笑い続けました。笑(ヒジャブでこちらからは彼女の目しか見えないので笑)
あと、アメリカでは結構知らない人でもすれちがったら"Hi"と言って会釈するのですが、ヒジャブのせいでニコッとしても表情を伝えられないので、かわりに目と手と声のトーンをフルに使って表現するのが大変なんだよね〜と言ってたのもおもしろかったです笑
長いのに最後までありがとうございました!
みなさん良い1日を!
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