見出し画像

無重力とは?

今、前澤友作さんが宇宙旅行中ですが、さぞ無重力を楽しまれているのではないかと思います。この無重力という状態は、とても非日常的で、なかなか普通に味わえるものではないですね。
しかし、宇宙に出ると、なぜ無重力になるのでしょうか?“宇宙は無重力に決まっている!”という常識で片付けている方も多いと思います。しかし、この常識は説明不足です。
今回は、この無重力とは何かについて触れてみたいと思います。

私たちが普段生活している地球には重力が働いています。重力を言い換えると、物を引きつける力であり、引力とも表現されます。そして、この重力は、重力加速度という数値で表されます。 
地球では、9.8m/s²の重力加速度(重力)が働いてます。

地面

私たちは、地球に引っ張り続けられていて、それを重さとして感じています。
重さを感じるのは、地面があるからで、地面がそれ以上落ちないよう押しとどめているためです。
もし、地面が無くなればどうでしょう?
身体は、地球が引っ張る力(重力)によって下に落ちていきますが、この落ちる時、身体はどんな感じになるでしょうか?
綱引きで、力を抜くと相手が引っ張る方向に軽く持って行かれますね。引っ張られる方向にそのまま身を任せると、身体が軽くなって引っ張られて行きます。綱引きは、横方向の力ですが、これを縦方向に置き換えた感覚が無重力を想像することに近づくでしょう。
つまり、無重力とは、地球が引っ張る力に任せて、そのまま引っ張られていく(落ちていく)ということなのです。
地球が引っ張る力は、前述のとおり9.8m/s²という重力加速度で表されました。そして、その力に任せて落ちていくと、この9.8m/s²という数値がゼロになってしまいます。
無重力とは、重力加速度がゼロになった状態のことなのです。

では、宇宙空間に出ると、なぜ無重力(重力加速度ゼロ)になるのでしょうか?
実は、宇宙空間に出たからと言って、必ず無重力になる訳ではありません。
普通、宇宙に出るときは、ロケットに乗ってエンジンの推力によって地球を離れます。もし、このロケットが地上から垂直に打ち上がり、現在、前澤さんが滞在している国際宇宙ステーションの高さ(地上から約200km)で推力を保ったまま制止したとしましょう。

制止

この状態では、ロケットには重力加速度が作用しており、ロケットの中は、地上とほぼ同じ重力が働いてるのです。

重力加速度均衡

これは、ロケットの推力が、地球の重力加速度と同じ力を反対方向に向けて発生させているので、地面が落下を引き留めるのと同じ役割を果たしていることになるのです。この状態では、いくら宇宙空間であっても、ロケットの中では、地上と同じような重力を感じることとなります。

しかし、実際のロケットでは、こんな無意味で危険な飛行をすることはありません。普通は、地球を周りながら移動する周回軌道に乗って動き続けます。

起動周回

ロケットは、このように軌道上を周回することで初めて無重力状態になるのです。つまり、宇宙空間で感じる無重力とは、この軌道上の周回運動と関係があるのです。

それでは、宇宙空間でロケットが重力加速度ゼロ(無重力)の状態になる理由を紐解いていきましょう。
ロケットを、9.8km/s²という地球の重力加速度を超える推力で上空に垂直に打ち上げたとしましょう。そして、上空(空気の無い宇宙空間)でエンジンを停止させ、そのまま垂直に落下すれば、ロケットは、重力加速度の作用をそのまま受けるため、9.8km/s²の加速度で落ちてくることになります。
この時、地球が引っ張ろうとする力(加速度)とロケットが落下する加速度が等しくなるので、重力加速度はゼロになります。

画像5

遊園地等でフリーフォールという遊具に乗ったことがある方は、落ちる際に身体が浮いた感じになるのを経験されているでしょう。また、ジェットコースターでも下り方向への滑走では浮いたような感覚になると思います。この現象もまた、重力加速度によるものなので、感覚的には分かりやすいと思います。

つまり、重力加速度がゼロ(無重力)というのは、重力の発生源に対して垂直に落下していることを指しているのです。(この現象を称して「自由落下」とも言います。)

端的に述べると、ロケットが無重力になっているのは、そのロケットが地球に対して自由落下しているということなのです。

あれ、本当に落下しているなら、直ぐに落ちてくるのでは??と思うのが普通でしょう・・・。
しかし、実際は落ちてきませんよね。なぜでしょう??

周回軌道上の移動について見てみましょう。
普通、打ち上げられたロケットは、上空で制止することもないし、垂直に打ち上げることもありません。必ず地球を回る周回軌道に乗るように打ち上げられます。周回軌道に乗っている時、ロケットは地球の地表に対して水平に動いています。

前進

地面に水平に動いていても、地球に重力がある限り、必ずそのロケットには重力加速度が作用しています。つまり、水平に移動しながら、地球に落ち続けていることになります。

前進落下

水平に移動しながら落ち続けているという状態について、ロケットにかかっている力を簡単に示すと、次の図のような状態になっています。

画像8

この図の赤色矢印は、ロケットが水平に移動しながら地球に落ちるという二方向の力を合算したものです。
つまり、斜め下方向に徐々に落下するような動きになります。
このままだと、いずれ地面に落ちてしまう??
しかし、実際は落ちません。なぜ?

ご存じのとおり、地球は球形ですよね。地面は水平ではなく丸いですよね。

画像9

地上から200kmの高度で、この水平方向の速度を7,800m/sにすると、この赤矢印方向の力は、永遠に地表に到達せず、地球の丸みに沿って動き続ける動きを生み出すのです。これが「軌道に乗る」ということなのです。

画像10

ところで、この時、ロケットの中の重力はどうでしょうか?

前進落下

この図のとおり、ロケットは水平に動いていますが、同時に地球の重力の影響を100%受けているので、落下し続けています。つまり、重力加速度がゼロ(無重力)だということです。
軌道上をある一定の速度で移動することで永遠に自由落下をしつづけることで、ロケットや宇宙船の中は無重力になるのです。

何となく分かって頂けたでしょうか。

宇宙空間で無重力を感じられるのは、重力の発生源に対して落ち続けている(自由落下している)からなのです。
では、地球の周回軌道では、地球に対して自由落下しているのですが、地球から遠く離れた宇宙空間で無重力なのは、何故でしょうか?
これは、その場の重力を支配している天体がカギを握ります。
つまり、無重力とは、何かに対して落ち続けていることだということです。

今後、近い将来、宇宙旅行も一般的に楽しめる時代が来るでしょう。
飛行機が宇宙空間まで飛び出すとなると、キャビンアテンダントの仕事の内容も大きく変わってくるのではないでしょうか。その時には、無重力が発生する理由を理解しておく必要があるかもしれませんね。
広く一般の人々が無重力を身近に楽しめる日が来るのが楽しみです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?