デンゼル・ワシントンが出ているだけで、ちょっと映画を信用してしまう。この映画を観る前に「イコライザー」という映画の①と②を観ていた。「イコライザー３」が今年観れるとかいう情報がネットにあった。
　「イコライザー」の綴りは「equalizer」。 この言葉は、均衡を保つ人や装置、システムといった意味。 また「equalizer」は、刃物や銃器など致命的なダメージを与える武器を指す俗語として使われることもあるとのこと。

　つまり、デンゼル・ワシントンは、「イコライザー」という名の、ひっそりと、世界を正す正義の味方なのだ。普通の人を装っているけれど、めっちゃ、手際が良く、強い。虐げられ、搾取されている人々を、救っていく。
　胸のすくヒーローなのである。
　つい、続きは無いのか？と見たくなる映画だ。

　私のデンゼル・ワシントンの印象は直近に観た「イコライザー」という映画なので、映画によって役柄は変わるとは思うのだが、デンゼルへの信頼は妙に厚いw。
　この「アメリカン・ギャングスター」では、彼は悪役なのだが、そのシンプルで無駄のない佇まい、好感が持てる。

　でも、アル・パシーノの「ゴッド・ファーザー」シリーズを観ていたので、マフィアは、どんな大金持ちになっても、血で血を洗う世界からは足を洗えないという虚しさを感じていた。だから、この映画にも、全く期待していない。どんなにうまくやっても、悪は悪。血で血を洗って終わり。
　しかし、この映画はちょっとだけ、違う結末に行く。

　映画で描かれているのは、マフィアと、マフィアと癒着する警官の汚職であった。観ていると、金につられて、平気で罪を犯す警官があまりに多く、普通に法律を守って、マフィアの不正な金を警察署に届けると、その警官は他の警官から干される。ハブられる。
　自分が、犯人を捕まえるために他の警官たちに出動要請をしても、人が居ないと無視される。露骨である。
　そんな腐りきった警官連中の中で、筋を通そうとする警官がラッセル・クロウ。「3時10分、決断のとき」で、悪役ながら魅力的な男を演じた俳優。

　デンゼルとラッセル出てたら、この映画、大丈夫じゃない？っていう気がしてくる。

　実際その汚職警官のボスのような人は、ほぼ、マフィアにしか見えない。マフィアだと思って見ていたら、警官だった。

　デンゼルは、派手な格好をする弟に、
「その格好は何だ？薬の売人だとアピールするつもりか？」
と、注意する。慎重な男なのだ。ラッセルの捜査線上に出てこない。それが、あることがきっかけで、彼の存在がばれる。
　皮肉にも、派手な服装をしたことがきっかけだった。

　次第に、ラッセルがデンゼルの存在に気付いて、彼を追い詰めていく。

　「ゴッドファーザー」のような虚しさとは違う結末がどうやってくるのかは、観てのお楽しみです。

　イタリア系の人も差別に会っているのかもしれないが、デンゼルの黒人系マフィアというのは、ある意味、もっと、虐げられている立場の人々が掴んだ地位なわけだから、ちょっと、アメリカン・ドリーム的なものを感じる。
　実に、アメリカらしいギャングスターで、このタイトルがピッタリだと思
った。

　正義の味方であるはずの警官たちの憎たらしいこと！

　「3時10分～」の映画でも、悪と正義の混濁という様相を呈していたけれど、まさにこの映画でも同じことが起きていたのである。

　この映画は実話だというのも衝撃的だった。

　お金が楽に手に入れば人間はなんでもするものなのかもしれない。
　私も自分が黙っていれば一億円手に入るっていう瞬間がきたら、どうするのか？

　警官たちは、目の前に、いつもギャングからの賄賂がぶら下がっていた。ちょっと目をつぶったら、100万、200万と手に入る。しかも、署のほとんどが手を染めている。
　そんな状況にあったら、ラッセル・クロウが演じた警官のようにできたんだろうかと、思わないでもない。

　周りの空気を読むか、読まずに、正義を貫くか。

　そんな状況になったことが無いから、勝手に感想を好きなように述べているけれど、周りが全員、不正をしている状況で、自分を貫いて正義を貫くということが、果たして自分で出来るのかどうか、自信が無いと感じる。

　悪魔と天使の陣取り合戦の中で正義を選べるだろうか？