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採用コストと離職コストはどれくらいか?

今回は、コロナショックによっていよいよ日本の雇用モデルの見直しが叫ばれている中で、具体的な数値で「採用時にかかるコスト」と「離職時のコスト」を認識することで、各社にとっての人事戦略の参考になればと思っています。

既に把握されている方もそうでない方にも以下内容が何かしらの参考になれば嬉しいです。それではいきましょう!

|採用コストとは

採用コストは以下のような式で求められます。

採用コスト=「外部コスト」+「内部コスト」

内部コスト
● 人事・採用計画の策定
● 採用マニュアル作成
● 求人広告や人材紹介担当者との打ち合わせ
● 合同説明会や会社説明会の準備および運営
● 人事・採用に関する社内会議
● 選考活動(面談・面接、オファー面談、電話対応など)

外部コスト
● 求人広告の掲載費
● 人材紹介サービスの紹介費
● 採用説明会出展料
● Webサイトの制作費
● チラシやパンフレットの制作費、印刷費
● 採用管理ツールの使用料

内部コストについては、各企業の給与や採用に関わる人数や時間などによっても変わるため変動要素が多いので参考程度に、それを踏まえてご覧いただけますと幸いです。

|結論

◆採用コスト
・中途採用コスト:約698万円(総額)

・新卒採用コスト:約642万円(総額)

◆離職コスト
・中途離職コスト:240万円(赤字社員)、600万円(黒字社員)
・新卒離職コスト:265万円(赤字社員)、600万円(黒字社員)

※様々な要因によって数値は変動しますので、あくまで参考値程度にお考えください。

上記結論になったプロセスについて、以下、できるだけ信頼できる根拠数値をもとにお伝えしていきます。

|採用コスト(中途)

リクルートの「就職白書2019」(2019年5月)によると、中途採用の2018年度1人あたり平均採用コストは以下の図の通りで、300人未満規模の会社では84.8万円となっております。

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総額としてはHRreviewの記事によると以下の図の通りで、およそ350万〜412万円となっております。

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直近はコロナの影響もあり、多少有効求人倍率が下がってきているようですが、これまでは右肩上がりになっており、ご存知のように労働人口は減少していく一方ですので、

求職者よりも求人企業数が多い状態になり、求職者の取り合いになることで、求人広告や求人のために利用するサービスが増えてしまい、中途採用のコストがより高くなる傾向にあるとのことです。

|採用コスト(新卒)

engageの記事によると新卒一人当たり採用コストは以下の図の通りで、300人未満規模の会社では、65.2万円となっております。

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採用人数は企業規模によって当然異なってくると思いますので、今回は中小企業を想定して、300人未満規模の会社(今回は100名)で、以下「日経「スマートワーク経営」調査解説(15)」での、正社員人数に対する新入社員の比率が平均3.8%ということで、約4名の採用を想定した場合に、採用金額の総額は約260万円(=65.2万×4名)となります。

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ここまでは外部コストについての内容でしたが、ここから少し内部コストについても触れたいと思います。

|内部コスト

内部コストについては、中小企業における中途採用の場合、これも規模感によりますが、先ほどと同様に100名規模の会社を想定した場合には、恐らく1名〜2名程度ではないでしょうか。

また、JobQの記事によると中小企業の平均年収は382万円とされています。

時間は年間半分の業務を採用活動に充てるとして、人数を平均値とすると、1.5人×0.5×382万円=286.5万円くらいでしょうか。

これが新卒採用の場合はもう少しコストが高くなるかと思います。
マイナビが出している以下の図によると、2021年卒マイナビ企業新卒内定状況調査では、人事以外の社員の協力人数は全体平均で14.7名とのことです。

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もちろん、こちらは平均値ですので企業規模、目標採用人数などによって数値は変わると考えております。

ただ、新卒採用と中途採用のフローをイメージしてみても、新卒採用の方が、全体に向けたイベントや新卒向けにプレゼンをする先輩社員の参加や内定者フォローなど、専属の方以外の社員の協力は必要になっていると思います。

ただ専属ではないため時間単位での稼働と考えた場合に、ここでは一旦仮の数値として、新卒採用における内部コストをプラス0.5として382万円(2名×0.5×382万円)と考えました。

ここまで、採用コストについて書いてきましたが、意外と見過ごされがちではないかと個人的に考えているのは、「機会損失」という観点です。

機会損失=採用業務にかけた時間で生み出せたであろう売上利益

後程お伝えする離職コストに繋がる部分でもありますが、多くの会社において、採用は社長の重要な仕事の一つと考えている企業が多いかと思います。

もちろん、社長が全く採用業務に関わらないということは少ないかと思いますが、質・量ともに同じ程度の採用活動ができるのであれば、社長はじめ採用にか関わる社員の人数、時間はできるだけ減らす方向(=効率的)でなければ、そこには機会損失が発生するという内容です。

この算出こそ、企業のサービス内容、営業フロー、単価など変動要素が多いため、一旦ここでは数値ベースではなく、「多少の機会損失も発生しているかもしれない」程度の認識で良いのではないかと考えております。


|離職コストとは

次に離職コストについて、採用コストに比べて認識されることが少ないかと思いますが、ここではより具体的な数値で認識できるようまとめてみます。

離職コストについては、いくつか算出の方法がネットにも出ておりましたが、様々なものを参考にここでは私の考えも踏まえて以下の計算式で算出したいと思います。

離職コスト=「(利益貢献できなかった給与等分)」+「(機会損失分)」

ここでの給与等とは、入社をしてから累積給与分以上の粗利貢献をするまでの期間に会社が負担している「給与、社会保険料、教育費」を含んだものを示してます。※機会損失は前半でお伝えした内容と同意です。

また、ここで「()」としているのは、離職をされる人が退職時点で、黒字社員か赤字社員かによって場合分けされるためです。

▶︎①赤字社員の場合
離職という話で、その多くが早期離職(3年以内離職)を想定しているケースが多いですが、その場合、比率としては赤字社員の方が多いと思いますので、①はそのイメージで算出します。

赤字社員の場合は、全く0ではありませんが、機会損失はあまり期待できないと考えます。つまり、離職コスト=利益貢献できなかった給与等分ということになります。

個別事情が多いため、ここではひとまず次のように仮定し計算してみます。

退職者の年収:350万円
退職者の在籍期間:2年間
粗利貢献度合い:50%

労働分配率:30%
企業の粗利率:30%

いずれも無理なく平均的にイメージできる数値だと思います。
上記の場合に、350万円の給与を生み出すには、約1,166万円の売上を作る必要があります。(350万÷30% = 約1,166万円

ただし、コストは利益ベースだと思いますので、具体的な損失コストとしては、おおよそ以下の計算式になるかと思います。

350万円×0.5 + 社会保険料(給与の15%) + 教育費※ = 約240万円(中途社員版)

ミツカリ社の記事によると、教育にかかるコストは新卒38万円、中途12.7万円となっていました。

▶︎②黒字社員の場合
黒字社員の場合、かけた諸々の費用分は在籍期間でリターンしているということですので、かけた費用分のコストは離職段階では考慮しなくとも良いかと考えておりますが、

個人的に重要だと考えているのは、「その社員がもう数年在籍していれば生み出していたであろう利益(機会損失分)」です。

ここでは、仮に1年間在籍してもらえた場合を想定します。黒字社員であるため、給与分以上のパフォーマンスは当然見込めるため、どれだけのパフォーマンス具合かにもよりますが、最低ラインとして先程の労働分配率以上であることは間違いないため、今回は年間粗利貢献が少なくとも1,000万円あるとした場合に、以下の計算式になります。

1,000万円 − 350万円+(350万×15%) = 約600万円

恐らく実際には、黒字社員であれば1,000万以上の粗利貢献はしているのではないかと思いますので、気持ちも少しコストは高くなるかと考えております。


ここまでで、今回のタイトルに直接関係する内容は以上です。

今回の内容を書く際に、様々な人事関係の会社が出されているレポートなどに目を通しましたが、ほとんどの記事で上記のような赤字、黒字の区分けがされておらず、

そのため離職する社員へ払ってた給与や教育費をそのままコストとしていたり、逆に未来の機会損失分の内容がなかったですが、個人的には非常に重要な観点だと思いましたので、こちらでまとめてみました。

ただ今回はあくまでも直接的なコストを算出した形ですので、間接的な影響を与える部分については、一旦省略させていただきましたので、実際には離職コストはもう少しネガティブな要素が多いと考えても良いかと思います。


以上です!
上記内容について、皆様のご意見などあればコメントいただける幸いです。最後までご覧いただきましてありがとうございました。



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