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「ショパンー200年の肖像」展練馬区立美術館

「ショパンー200年の肖像」展
練馬区立美術館



ショパン展ってどういうことや?音楽の何を展示するんや?ショパンにまつわる物を展示したはるんかな?と安易に思っていましたが、行ってびっくり!なるほどこういう切り口!!これはおもしろぃいぃってなりました。


具体的に何が展示されてたかというと、まず1セクション目はショパンの曲からイメージした版画作品の連作や、様々な現代のアーティストたちが描いたショパンの肖像画(いろんな人がショパンってこういう人では?っていう解釈を読みとくのがめちゃくちゃおもしろかったです)、ショパンの人生をモチーフにした絵画作品、ショパンコンクールなどショパンにまつわるコンテストのポスター(これがもう超ド級のセンスのものばかりで最高だった)など、ショパン自身から、またはショパンの生み出したすばらしい音楽からインスピレーションされて作られた作品が展示されていました。


版画作品では題材になった楽曲を聴きながら作品を見ると、目で絵を見ただけの感情の100倍ぐらい心を打たれました。そもそもショパンが曲を作られる際にイメージされた題材や出来事がもちろんあるんですよね…!日頃ショパンの曲を聴いてて頭に自分が想像した世界が広がるだけで終了してましたが、アートと同じで音楽にも背景があるということに改めて気付かされて、確かに!この曲はこういう情景やったんや!わかる!めっちゃわかる〜〜〜!ってなりました。目で見て耳で聴くと圧倒的な物語性を全身で感じることができたので、これは至極の体験でした。


2セクション目はショパンの生まれたポーランドのワルシャワの当時の時代背景がわかるような資料展示、ウィーンやパリ、イギリスに移ってからの人間関係、そしてもちろんショパンといえば”男装の令嬢“と呼ばれた文筆家のジョルジュ・サンドとの恋、その2人をドラクロワが描いた絵(レプリカ展示)について。そしてシェフェールが描いたショパンの中で一番有名な肖像画がありました。


ショパンとサンドとの恋の話をしだすと止まらなくなるので割愛しますが(ドラマチックというか悲劇的というかもやもやするやつ)、2人を描いたドラクロワの作品が全てを物語っているんです。実はこの作品は今日に至るまでにどこかの誰かが半分に切断してしまうという「は?なにしてくれてんねん」な状態で、ショパンが描かれた方の絵はルーヴル美術館に、サンドが描かれた方はコペンハーゲンのオードルップゴー美術館にあって、今離れ離れになってしまっています。すれ違いで別れることになってしまった2人を表してるようでまじで泣ける。なんなん。ううううう。

ちなみにサンドが描いたショパンの横顔の落書き程度の絵(挿絵として展示)もあって、胸が!胸がしめつけられる!!てなりました。好きな人の顔描く時の眼差したるや、凄まじい破壊力〜!!



あと、シェフェールのことをつい最近知ったところだったので、あ!これショパンの肖像画ってシェフェールやったんや!といろいろ繋がって大興奮しました。シェフェールの描くショパンは確かに繊細なイケメンだしモテそう。タッチも荒くなく静謐な肖像画でうっとりでした。いい香りがしそうな絵。



3セクション目には有名なショパンのデスマスク、左手の実寸の模型。そしてこんな機会めったにないというショパンの直筆の手紙と直筆の楽譜が展示されていました。



ショパンの左手は指がすら〜〜〜って長くてこれは男性の手?って思うくらい骨張ってませんでした。ずっと病弱だったショパンですが、大きな音が出す力がないとはいえ、繊細な強弱のある音は確かにこの手だから生まれたんだろうなとしみじみ感じました。すごく美しい手。にしても「革命のエチュード」をこの手でひいてたと思うと恐ろしい。すごすぎる。


そして直筆の手紙についてのキャプションがとってもおもしろかったのですが、ショパンって一般的なイメージだと「繊細、病弱、品がある」とよく言われますが手紙に書かれた文面を見るとユーモアに溢れた言葉遣い、そしてちょっと強引な感じだったり、え、こんな言葉をショパンが使うの?!っていう驚きや、文字自体に感情が溢れているみたいな感じで、イメージとは違った彼の本質的な部分が見えるという紹介の仕方で、実際に彼の字や手紙の訳を見て、わ〜〜!確かにショパンのイメージとちょっと違う!ってなりました。

そしてまだそのショパンの典型的なイメージからは少し離れたショパンのほんとの性格のことを研究してまとめている方は少ないそうで、残っている手紙の解釈も結構ねじ曲げて伝えられてるんだなとおもいました。みんなショパンに幻想を抱いていたいのかな。画家だとあまりこういう崇拝的な研究の仕方って見られない気がするんだけど(真実を追求したがる気がするw)、音楽の世界ってまた違うんやろうなぁ。ショパンコンクールの威厳だったり、彼自身が神格化されてるんだなろなとおもいました。



そして直筆の楽譜がもうめちゃくちゃに最高でした!わたしとの距離約15cmぐらい!って感じでショパンの温度を間近に感じれて凄く嬉しかったです。ちっちゃ〜〜〜い楽譜にちっちゃ〜〜〜い音符が流れるように書かれてるのですが、そこから音はもちろん、紡がれる世界さえも見えてきて、これもうまさに絵!楽譜って絵だったんだって初めて気づかされました。



今回の展示を見て、なにがおもしろかったかって、音楽とアートの連動性の深さ、親和性の高さです。ショパンの魅力的な人物像はもちろん、彼が生み出した美しい楽曲はわたしたちに様々なインスピレーションを与え、創造する力をも沸き立たせてくれるということを今回の展示で感じることができました。むちゃくちゃ学びがあって行って本当によかったです。わたしも音楽家や音楽をテーマに何かを作ってみたいとおもいました。「荒ぶる音楽愛」とかやりだすとえらいことになりそうやけど…!

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