見出し画像

「古典×現代2020-時空を超える日本のアート」展

「古典×現代2020-時空を超える日本のアート」展
国立新美術館


この企画展は8人の現代アーティストさんたちと、江戸時代以前の名作とをそれぞれ同じ空間で展示したらどういった化学変化が起きるかというとても興味深いテーマの展示です。


BS「ぶらぶら美術館・博物館」の番組を見てた時に、北斎の浮世絵をしりあがり寿さんがおもしろおかしくパロった作品をご紹介されてたのがとても楽しく、ぜひ他にもいろいろ見たいな〜と思ったので行ってきました。(ちょっと前に行ったのですが感想を書いてなかった)


「葛飾北斎×しりあがり寿さん」、「曾我蕭白×横尾忠則さん」、「花鳥画×川内倫子さん」、「刀剣×鴻池朋子さん」、「乾山×皆川明さん」、「仙崖×菅木志雄さん」「円空×棚田康司さん」、「仏像×多根剛さん」というバラエティ豊かなラインナップ。

8組ともどれも全部むちゃくちゃおもしろかったです。


0から何かを生み出すってもうよっぽどのことがない限り無理だと、誰かの何かを「真似る」を繰り返したりミックスしたりすることでしか新たなものは生み出せないとわたしは思っていて、そんな中で作家さんが意図的に過去の名品をオマージュされた作品はもちろん、日本に生まれたことで潜在的に刷り込まれていた感覚が過去と偶然に重なりあった作品もあって、こういうこともあるんや…!と驚いたし、とても興奮しました。


とくにミナペルホネンのテキスタイルと尾形乾山の陶芸のシンクロ率100%にはびっくりしました。これほんまに意図してなかったんか皆川さん!!と思わずにはいられないほど相互の図柄のデフォルメ具合や、1つとして同じものがない個の美しさなど目指してる方向性までぴったりで、江戸時代と現代が全く垣根なく共存していることにロマンを感じずにはいられませんでした。

ちなみに乾山は尾形光琳の弟で、光琳が絵付けした乾山焼もあり、その温かく華々しい魅力は最近琳派に目覚めたばかりのわたしにとって超お宝作品でした。これが見れただけで超満足。


衝撃的だったのは鴻池朋子さんの作品。何が衝撃かって、行けばみんな「うおぉ。。」ってなると思うのですが、刃のような素材でできた生首がずっと振り子の原理で皮緞帳の間の空間を切っています。何を言ってるかわからないと思うが、とにかく生首に尾びれみたいなのがついてひゅん!ひゅん!ってしている。わたしはこれを見て、「切る」ということが「繋がる」ことにもなるのか…と今までそんな視点に気づいたこともなかったのでドキッとしました。鴻池さんの作品の近くに刀剣があると、ただでさえ劇的な作品なのに緊張感が増しに増されてて、日常プロップスタイリストとしてモノと会話をしモノと共存している私にとっても、改めてモノとモノの響き合いっていうのは本当におもしろいなぁと感じました。


あとむちゃくちゃ好きだったのは滋賀県の西明寺にある「月光菩薩」と「日光菩薩」の対になる2体を建築家の多根剛さんが光だけを使って真っ暗な暗闇に浮かび上がらせる演出をされた部屋です。複数の小さな灯が消えたり点灯したり上下するインスタレーションで、まさに昼も夜も世界を優しく照らしてくれる様子を感じれるような神秘的な空間。

「祈りの対象」「信仰」にむちゃくちゃ興味がある遠藤ですが、時空を超えて鎌倉時代、電気も無くろうそくの光だけで灯されていただろうこの2体に向かって様々な苦しみから逃れるために祈りを捧げていた人たちの気持ちに自分もなれた気がして、「この仏様たちなら救ってくれる」と思わない人はいないんじゃないだろうかと思うぐらい神々しく輝く2体を見て、こういうの…!こういう鑑賞の仕方で気づけることがたくさんある…!と嬉しくなりました。



今回「乾山」も「仙崖」も「円空」もはじめて知ったのですがそれぞれにめちゃくちゃ興味深くて、あぁ知らないことがありすぎる!!!楽しい!!!ってなりました。
しりあがりさんの映像作品もめっちゃ楽しかった(笑)



コロナのせいで会期がズレたのもあり、川内倫子さんの部屋に伊藤若冲があるはずだったのが無かったり(川内さんの写真作品ってプリントで見ると全然感じ方が違って、自分が蟻になったり鳥になったり草になったみたいな気持ちになったし、なにより映像作品が地球の神秘すぎて全遠藤が泣いた)、曾我蕭白の「寒山拾得」をオマージュした新作を今回のために大好きな横尾忠則さんが描かれたのですが、わたしが伺った時には蕭白の「寒山拾得」は残念ながら見れなかったりと(横尾さん、自分でも何を描いてるのかよくわからないってインタビューで話されててわろたw)、スケジュール調整がいろいろ大変だったのだろうなぁと美術館のご苦労を感じる点がいくつかありましたが、それでも充分な作品群で、それぞれの作家と名品が同じ空間にあることで放たれる新たなパワー、神秘さ、増す美の説得力はさることながら、これだけの系統の違う名品が1つの企画展に集まっているということ自体がすごい力を放っていて、8部屋見て終わった後、なんだか遠藤は強くなった気がしました!ムキムキっ!(は?)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?