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『ハサミ男』

毎週日曜日なると、うちのドアポストにハサミを入れる男がいる。静まり返ったベッドタウンの深夜、午前零時から始めて1時間ごとに1挺ずつ。

アパートの二階から見下ろせる電信柱の裏にその男が今も佇んでいる。いつもそこから一時間ごとにポストに通ってくるのだ。

夏だというのにトレンチコートで身を固め、両ポケットにじゃらじゃらとたくさんのハサミを入れている。

顔は目深にかぶったキャップで見えないが恐らく人ではない。それだけはわかる。

カチャン。

午前三時、また1挺追加されたようだ。

朝日が昇るまでこれが続き、陽が射し込む直前にはいつのまにやら電信柱の裏から姿を消している。

いやがらせか。それとも何らかの深刻なメッセージか。いまだ解明はできてはいないが焦る必要もない。私は私でやることがある。そう、メガネだ。たくさんのメガネをポストに投函しなければならない。月曜日の深夜零時からは私の時間。

そう、この『メガネ女』の。

水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。